« 「SEX」 上條淳士 | Main | 「KOROSHI 殺し」 »

June 12, 2005

「フリック 完全版」

[DVD映画]★★★☆☆

また悩める作品を観てしまった…!!!
小林政広監督…どうしてくれます?

今年のカンヌ映画際でちょっと話題になった、
日本人監督としては初の3年連続カンヌ国際映画祭出品を成し遂げ、
今回新作の「バッシング」をコンペティション部門へ出品、
赤絨毯を歩いたが惜しくも受賞を逃した、あの小林政広監督の前作品だ。
今年のあたまに地味に公開していた不思議なサスペンス「フリック」。
案の定、やはり観そびれてしまっていた。
早くもDVDになっていたので、レンタルしようと探したが…やはり無い。
貧乏を売りにしている、監督の製作に貢献すべく?DVDを購入。
昨年「歩く、人」で、少し紹介したこの監督の奇妙な世界に、
またもや翻弄される事になってしまった。
香川照之の奥深い演技、大塚寧々の多彩ぶり、
そして、この春急逝した小林監督の音楽の師匠、高田渡のインパクトある怪演と
エンディングで弾き語る『ブラザー軒』が素晴しい!

最愛の妻(葉月螢)を殺害され、酒におぼれて自宅ひきこもっていた刑事、
村田(香川照之)をある日、同僚の滑川(田辺誠一)が訪れた。
円山町のラブ・ホテルでバラバラにされ殺された女子大生、
楠田美知子(安藤希)の身元確認のため、
彼女の兄(村上連)を東京に連れてくるという任務を説得され、
共に苫小牧に向かう事になった。
被害者美知子の自宅に着いた村田は、足の不自由な兄の様子が気になり、
越権行為知りつつも刑事の血が騒ぐ。
滑川の警察学校時代の先輩であり地元の市警である佐伯(田中隆三)と
及川(松田賢二)による歓迎会。
翌朝、湖のほとりで発見された被害者の兄の死体を自殺と決め込む地元市警。
彼等に不信感を覚えた村田は単独で捜査を開始した。

被害者美知子がよく来ていたというバー。
そこの雇われ店長の美しく謎めいた女性、伸子(大塚寧々)。
謎のヤクザ(本多菊次朗)に襲われる。
下宿の大将(高田渡)との妙な会話。
美知子の友人でアルバイトとしてバーで働く愛(安藤希・ニ役)の衝撃的な証言。
事件が解明出来るかと思えば、一瞬にして覆されるこの町の人間の言葉。
村田は夢と妄想と現実が交錯し、誰も信じられなくなってゆく。
そんな中で妻の事件の記憶すら曖昧に思えてくるのだった。
だが、刑事の本能が村田をつき動かす。
犯人は誰だ?真実とは??

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

冒頭の衝撃的なチェーンソーの音!
逃げまどう女の子の悲鳴!!
そこから、極めてゆる〜く、長〜い第I章が始まる。
バラバラにされた何千ピースものパズルを、
少〜しづつ、ゆっくりと記憶と勘と忍耐力を頼りに
真実に向かって1ピースずつ組み合わせてゆく感じ。
人物を小さく映すひきの画面、無言の会話の無い長回し、
のんびり淡々と、しかも謎が増えてゆく…これで約1.5時間!!!
だが、無口で無表情でぶっきらぼうな村田の
「生まれてから一度も映画を観た事がない」
「生まれてから一度もパンを食べた事がない」
「生まれてから一度も刑事になろうとしか考えた事が無い」
この言葉がとても印象的だった。

第II章、から少しずつテンポが加速し急展開!!!
やはり全てのささいな出来事や言葉にすら緻密に謎が隠されていたのだ。
妄想シーンの前後から浮かびあがる、あまりにも悲しい真実。
そしてまたそれとは違った新たな真実が次々と目の前で展開され、
妄想と現実、どれが本当の真実なのか解らなくなって来る。
リピートされる妻を殺された現場のシーン。
開いた窓から流れる風で鳴る風鈴。
村田の涙を指で拭いてあげる滑川の真意とは…。

そして、エピローグ。
やはり、どど〜んとどんでん返し。
さっきのは何?あの電話は??あの男はあれは誰だ???
やはり、これが真実だったのか????
生きているのか死んでいるのか…
ただ、村田は悲しるぎる現実の後に、
幸福を見つけた…これだけは真実に違い無い。

とはいえ、すっきりとまだ謎を解明出来ずにいる自分に苛立ちながら、
この長い道のりをまた(ちょっと早送りしつつ)観返す事になるんだろうな…。
これぞ緻密なサスペンス映画の醍醐味。

フリック 完全版
香川照之 小林政広 田辺誠一 大塚寧々
B0007MCJFA

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
[小林政広監督・フィルモグラフィー]

「CLOSING TIME」(1996)
「海賊版=BOOTLEG FILM」(1998)
「KOROSHI」(2000) 
「歩く、人」(2001) 
「女理髪師の恋」(2003) 
「フリック」(2004 ) 
「バッシング」(2005)

「フリック」オフィシャルサイト
モンキータウン・プロダクション
小林政広監督のブログ

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

■ 映画「歩く、人」レビュー
■ 映画「KOROSHI 殺し」レビュー
 

|

Comments

Post a comment