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February 03, 2006

「欲望の法則」

[DVD映画]★★★★☆

嫉妬に狂うバンデラスのあんな顔やこんな顔に、もうびっくり!
愛と野望ゆえの悲劇を描いたアルモドバルの初期の作品。
数々のタブーに挑戦しながら様々な愛と欲望について描くアルモドバル節は
最初から結末まですでにがっちり詰まっている。

監督・脚本はスペインの奇才ペドロ・アルモドバル
カルメン・マウラが女性っぽすぎるけど(笑)性転換した人物を好演。
映画のラストで予告しているとおり、
昨年公開された「バッド・エデュケーション」の原点ともいえる、
1987年スペイン制作の映画「欲望の法則」。
 

売れっ子映画監督パブロ(エウセビオ・ポンセーラ)は新作も大盛況!
パブロの姉(兄)のティナ(カルメン・マウラ)は男嫌いで、
友人の娘アダ(マヌエラ・ベラスコ)を引き取り一緒に暮らしていた。
このティナを主役にした次の映画を現在パブロは企画し脚本を書き進めている。
内容は明かしていないがパブロの意欲は満々だ。

だが、パブロは美青年の恋人ファン(ミゲル・モリーナ)とは
愛しあいつつもいまひとつ馴れ合いすぎて冷めた状態。
ファンが休暇で帰郷し、しばらく距離を置くことになって
はじめて彼への愛へ気づくき、彼のスクーターにキスをしたり、
あげくの果てには自分宛の手紙をファンに送って、
それを返信してもらい読んでいる始末…。

そんな寂しいパブロの前に、少し前から気になっていた
好みの黒髪の美青年アントニオ(アントニオ・バンデラス)が現われた。
積極的な彼とフラフラと一夜を過ごしてしまったのだが…
パブロの崇拝者であり俳優にも興味のあったアントニオは
女性が主人公だという次回作を意欲的に書くパブロの姿、
せっせとファンに手紙を送るパブロの行動、
色々身の回りにも尽くそうとする自分に冷たいパブロの態度、
そんなパブロの愛するファンに嫉妬の念が強まるばかりだった…。

* * * * * * * * * * * * * * * *

冒頭の映画のシーンからゲイ・ワールドが炸裂!
こちらの方がドロドロした問題作だろう。
全ては愛と欲望によって行われる人間関係と悲劇を描く。
様々な愛と禁断のテーマ、鮮明な赤い色、印象的な劇中劇と音楽、
熱い視線と好奇心…そして母性。
濃厚なアルモドバル色も既に出来上がっている。

そもそも罪なのは監督パブロ。
距離を置く事に決めたけれど、恋しさが募るならすぐ追いかけようよ!
忘れられない恋人がいるにも関わらず、
寂しいからと自分に憧れる未経験な青年と一夜を過ごしてしまうから…
そりゃ、逆恨みされるだろうと気づこうよ!!
そしてそんな相手とは綺麗に別れようよ!!!
しかも兄弟の秘密を暴露するような映画は、
書きはじめる前にちゃんと断ろうよ!!!!!
恋は盲目といえど彼の甘い考えで、
悲劇の傷が大きくなってしまった…。

厳格な家庭で育ったおぼっちゃまのアントニオは、
面子を保ちつつも自分の思い通りにしなければ気が済まない。
パブロの元恋人で今も愛されているファンにどんどん嫉妬が加熱。
パブロと同じ柄のシャツを求めてしまうアントニオ。
ファンのように手紙が欲しいアントニオ。
どうしても彼らと同じ事がしたいのだ。
そんな幼稚さがあるアントニオのために
可哀想なファンはこの三角関係の犠牲となった。
そして自分の犯した罪を隠すため、
追い詰められたアントニオの稚拙な行動は、
最後の最後まで欲望に忠実なのである。

ティナとバブロの兄弟、そして母親よりもティナになついているアダ、
この3人の関係には絶対的な思いやりが溢れていていい。
過去に愛した二人の男性については、怨みよりも愛のほうが深いのか、
ティナは彼らに対する陰口は決して言わない。
余計な詮索をあまりしない弟パブロの事も、肉親として最も信頼し愛している。
過去の経験から男嫌いのティナは複雑な心境だろうが、アダに対しては
自分の理想の母親像を憎まれ口をたたきながらも嬉しそうに演じている。
だからアダも素敵な大人の女性?ティナに憧れており、彼女の事がお気に入り。
もちろんティナの弟のパブロの事も父親になって欲しいくらい大好き!
この3人は、はたから見ても普通の“家族”。
ところが、交通事故でパブロが記憶喪失になっている間に、
その“家族”に入り込んだ男がまさかのあの男!!!
しかも目的はパブロの愛を得るため。
それを知った時のパブロのショックは尋常では無かったであろう。
極限状態でのベッドでパブロとアントニオは何を考えていたのだろうか。
アントニオはきっとそうするしか無かったのだろうけれど…。

誰もが愛によって人生を狂わせてゆくのかもしれない。
それは良い方にも悪い方にもちょっとしたきっかけで急転回する。
欲望に身を任せすぎてもいけないし、押し殺しすぎてもいけない。
そのタイミングと人物を見極めないと悲劇が起きかねないのだ。

ラストに同じようなテーマの作品が制作される事が予告されている。
きっと監督は各キャラクターについてまだまだ描き足りなかったのではと思う。
幼児体験の影響や恋に堕ちる瞬間、そして犯罪に手を染めてしまう過程…。
「バッド・エデュケーション」ではこのあたりを含めて
見事にサスペンス・タッチで描かれていたので、観比べてみても面白いかも!

ペドロ・アルモドバル・セレクション DVD-BOX
ペドロ・アルモドバル
B0007KT1EE

現在単品では入手出来ない「欲望の法則」(1987年)と
「ライブ・フレッシュ」(1997年)の2本セット。
特典映像は無いがそれぞれにモノクロの解説ブック付。

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