30 posts categorized "映画:フランス"

July 15, 2007

「変態村」

[DVD映画]★★★☆☆

予告編がかなり不気味で気になっており鑑賞。
たしかシネマライズでの単館上映だったかな。
人里離れた森の奥の僻地の村の不気味さと
“加速する孤独な人間の狂気”
愛するひとを想い独り占めしたいという感情が
個人的な妄想だけでなくエスカレートしてゆく異様さが
ただただ痛々しく不気味。

_________________

「変態村」
 原題:CALVAIRE

製作国:ベルギー/フランス/ルクセンブルグ(2004)

監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
脚本:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ/ロマン・プロタ
音楽:ヴァンサン・カエイ

出演:
マルク・ステヴァンス(ローラン・リュカ)
バルテル(ジャッキー・ベロワイエ)
ロベール・オルトン(フィリップ・ナオン)
ほか

_________________

タイトルにインパクトありますが
ちょっと内容とはズレていますな。
変態さんがわんさか登場するわけでもなく
孤独な狂気と純愛が描かれています。

地方を独りで旅するちょっと可愛いミュージシャン
(日本でいうほぼ演歌的な感じ)のマルクは
齢上のおばさま達にモテモテ。
南仏に向かうはずだったのに…車の故障で立ち往生。
とある村のはずれのペンションに泊めてもらうのだが
オーナーのバルテルの様子がどんどんおかしくなってくる…
そして、その村の住人の様子もあきらかに妙。
マルクはどんどんとんでもない状態へと追いつめられてゆく…
彼に未来はあるのだろうか???

最初はまったりと、どんどん加速する狂気とあっけないラストには
思わず『ええ…』(汗)
十字架へ張付けられてのお仕置きや
痛そうなシーンも多いけれど
それを上回る異常な愛情表現のほうが怖いですね。
バーでの村の男のダンスシーンがとにかく不気味。
不協和音のピアノで奏でられる音楽で
村の男達が踊るのはまるでゾンビか案山子のダンス。
目に焼き付いて離れません。

意外にも妙にクォリティが良い部分やこだわりもあったりで
ぐいぐい見せる所はあるけれど
ストーリー的にはいまひとつかな。
愛する女性を失った寂しさ
そして女性不在の村?から起因するのか
描かれているのは孤独な狂気。
村に入る前の町でも老婆や中年女性に迫られていた
親しみやすい中性的な魅力のある
美青年マルクは妙な色気と美声のせいで
こういった人を狂わせる才能を持っていたんでしょう。
僻地の村では、もはや女性として愛されていましたし…

それにしても救いの無い映画でした。
初の長編作との事で、盛り込み過ぎもある。
メイキングを見ると監督の暑苦しい思いが堪能できますね。
村人のドン的なロベールを演じるのは
これまた変態ものを演じるとピカイチのフィリップ・ナオン♪
リハする姿…やっぱり上手いわ…この人。
予告編のほうが本編よりは面白いタイプの作品。

ちなみに…
特典映像の短編『ワンダフル・ラヴ』がおすすめ。
こちらのほうが完成度高くて面白い。
20分という短時間ながら寂しい年増女の狂気を見事に描いています。
目新しさは特に無いけれど、とにかく主人公の女性の目がイッちゃってるし
ケーキ食べてても、肉買っていても、
牛タン料理してても、歩いていても怖い…
作品について楽しそうに熱〜く語るこの監督の
今後の作品にちょっと期待します。


B000H4W91M変態村
ローラン・リュカ ファブリス・ドゥ・ヴェルツ ジャッキー・ベロワイエ
キングレコード 2006-10-04

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June 28, 2007

「王と鳥」

[DVD映画]★★★★☆

思い切りブラックなダンタジー・アニメなのだが
何故か悪を憎みきれない…
ジブリの巨匠達に影響を思い切り与えたこの作品は観るべし!

_________________________

「王と鳥」
原題:LE ROI ET L'OISEAU

製作国:フランス(1980)
監督:ポール・グリモー
原作・脚本:アンデルセン『羊飼い娘と煙突掃除人』
脚本・台詞:ジャック・プレヴェール
音楽:ヴォイチェフ・キラール/ジョセフ・コズマ

声の出演
王(パスカル・マゾッティ)
鳥(ジャン・マルタン)
警官長(レイモン・ビュシェール)
羊飼い娘(アニエス・ヴィアラ)
煙突掃除人(ルノー・マルクス)
助言者(ユベール・デシャン)
盲人(ロジェ・ブラン)
エレベーター係/スピーカーの声(フィリップ・デレーズ)
猛獣使い(アルベール・メディナ)
宮殿の市長(クロード・ピエプリュ)

「王と鳥」オフィシャル・サイト

_________________________

原作のアンデルセンの『羊飼い娘と煙突掃除人』を元に
独特の構図とアイロニーいっぱいの
階級社会や独裁制への批判がテーマになっている
ちょっとブラックなおフランスのファンタジー・アニメーション。

面白い罠や仕掛けだらけのお城や大きなロボット兵
極端にデフィルメされた構図など
宮崎駿監督の作品にかなり影響を与えているのは一目瞭然。
デジタルリマスターしているとはいえ
1980年という微妙な時代の作品だけど
今観て新しい…というか色あせていないのが素晴らしい。

どこかマヌケな鳥さんやその子供達。
更にマヌケな城の家臣達。
地下に生活する人々や動物達。
そして暴君すら、皆幸せになりたいし、音楽が大好き♪

恐怖政治の支配下…絶望の中にあった地下の住人も
鳥達が迷い込んで来た事によって
何かが動き変化し始めた。
彼らが見た事の無い空を飛ぶ鳥の知識の広さ、力強さ
そして自由な言動に突き動かされる。
それにしても、子供達への絶対的な愛といい
IQ高い鳥さんってば、凄いすぎ!強過ぎ!!

ラストのシーンがしんみりと印象的。
独りよがりでワガママな王と頭の良い鳥との対決は
下層社会対支配階級だったのね。
もっと羊飼いの女の子と煙突掃除の男の子
クローズアップされるのかと思ったら
意外とサラッと流されていたのが少し残念。
鳥さんに助けられっぱなしだし
王と鳥のキャラの濃さに負けていましたもん。

寓話的に考えてみると
王は独裁者、鳥は自由な国からの使者
絵画の中の少女と少年は夢見るだけのティーンエイジャー
地下の人々は支配されつつも本当に国を支えている国民達といった所かな。


〈特典映像〉

[1]太田光(爆笑問題)×高畑勲 劇場初日対談

   コレがかなりブラックで面白い!

[2]ターニング・テーブル(ポール・グリモー短編アニメーション集)

   グリモー監督が過去の作品をキャラクターと一緒に紹介してくれる
   この約75分も必見♪

 ・こっくりさんの会(1931年)
 ・音符売り(1941年)
 ・大熊座号の乗客(1942年)
 ・かかし(1943年)
 ・避雷針泥棒(1945年)
 ・魔法のフルート(1946年)
 ・ダイアモンド(1970年)
 ・王様の道化(1988年)
 ・音楽狂の犬(1973年)
 ・小さな兵士(1947年)

[3]「王と鳥」劇場予告編 など

B000LPS3NK王と鳥 スタンダード版
ポール・グリモー ジャン・マルタン パスカル・マゾッティ
ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント 2007-04-04

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September 15, 2006

「ぼくを葬る」

[劇場映画]★★★★☆

前作でオゾンさんどこへゆくの?と思ったが、今度はこっちだったのね…。
ある日突然宣告され決定しなければならない自己の死に様。

どうしても今回は劇場で観たかったのでG.W.に鑑賞した。
終了後、無言状態の劇場が映画のテーマの深さを物語っており新鮮だった。
前作の「ふたりの5つの分かれ路」で何かが起きた?オゾン節。
しかも「まぼろし」の“最愛の人の死”に続き、…今回は“自分の死”を描く。
この重いテーマをオゾンがどう描くのかはいへん興味深かった。
 
監督は気になっているフランスの若手監督フランソワ・オゾン
2005年フランスで制作されたぼくを葬(おく)る」。
原題は「LE TEMPS QUI RESTE」。
  
31歳の売れっ子ファッション・カメラマンのロマン(メルヴィル・プポー)は、
ある日撮影中に倒れてしまう。
医者にかかったところ、末期癌で余命が役3ケ月と宣告された。
まだ若いロマンに、医者は放射線や点滴での治療をすすめるのだが、
ロマンは治療を拒絶する。

同性愛者のロマンの恋人サシャ(クリスチャン・センゲワルト)に
冷たい言葉を浴びせ別れを決意し、
家族に告白しようとするが、どうしても言う事が出来ず、
父(ダニエル・デュヴァル)母(マリー・リヴィエール)には心配かけないよう
更に姉(ルイーズ=アン・ヒッポー)とは仲違い。
仕事を辞め、唯一祖母のローラ(ジャンヌ・モロー)にだけは病気の事を打ち明けた。
なぜなら…
“おばあちゃんは、僕に似ているから…”

そんな時、たまたまカフェで出会った
ウエイトレスのジャニィ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)夫婦から
持ちかけられたのは“代理父”の依頼。
運命に怒り、周りに心配をかけないように己を孤独に追いやって、
どんどん弱ってゆくロマンに、姉からの手紙で転機が訪れる。
“子供”を意識している事に気付いたロマン。
幼い自分の記憶と幻に出会った時に何かが起きた。
自分と向き合い、今出来る事を遂行し、自分を葬る準備を始める…。
美しいと思ったシーンを切り取るカメラ。
ニコンの一眼レフからコンパクトカメラに変わってからの彼の撮る写真は、
きっと彼の宝物で天国へ持ってゆきたい写真に違いない…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ある日突然つきつけられる、限りなく近い将来に起きる人生の終焉。
その当事者は病と死への恐怖の中で、
残された人生で行うべき事を短時間で決定せねばならない。

全ての人は孤独に生まれ、孤独に逝く運命を持っている。
その間の限られた人生を如何に生きるか、そして死ぬのか…それが人生。
ロマンを通して自己の人生観が感情と共にえぐり出される気分になった。
リアルで普通な何という事の無いシーンに込められたロマンの想い。
ロマンを演じるメルヴィル・プポーの繊細に揺れ動く感情と
遠くを見つめるかのような美しい瞳、
そして衰えてゆく肉体の変化に、胸をしめつけられる。
祖母を演じるジャンヌ・モローの孫への言葉
“今夜お前と死にたい”。
唯一信頼している肉親の愛情がこもったその言葉には、
ロマンと共に目頭が熱くなった。
余談だが、子供時代のロマン役の少年(ウゴ・スーザン・トラベルシ)の
くりくり巻き毛と瞳がメルヴィル・プポーと似ていてこれにまたグッとくる。

偶然に出あった人に自分の生きた証を委ね、
愛した人から愛されていると知る事が出来たロマン。
突然訪れたつらく悲しい物語を描くのではなく、
何かに立ち向かい得る夢や希望を描くのでもなく、
人間の本能と事実を受容し、自分の死に様を決めた一人の男の心の動きを
極めて間近から繊細に優しく描いた作品だと思う。

少ない余命で何を残せるか…

イザベル・コヘット監督の「死ぬまでにしたい10のこと」も同じようなテーマだったが、
あちらは若い母親だったので、女としてしておきたい事、
旦那や子供達に残しておきたい事、
娘として両親にしておきたい事を綴っていた。
こちらは独身で同性愛者、人生の成功者であった若い男性。
心の動きはおのずと違ってくる。
前者では限界まで母性を与え、後者では母性を求めている気がした。

ちなみに、治る可能性が5%以下と言われ治療を拒否したロマン流の生き様。
後悔しないよう治療する方法をとり、癌と戦う決意をするという生き方。
“健康で死にたい”というロマンの祖母の生き方が最も望まれるものだろうが、
病気…特に癌などの病の場合は、本人の悔いの無いようにするのが一番だと思う。
特に早期発見の場合完治出来る可能性が高いので、もちろん治療すべきだろう。

こんな仕掛けや謎の無い、
フランソワ・オゾン作品は初めて!

円熟したというか、人生の折り返し地点にきたからか…
ほぼオゾンと同じ年代の自分にとっては見事に心に響いた。
これまで常に死と生と性、その源の水=海、そして女の強さと怖さ、男の弱さ…。
表現方法は違っても、常に根源にあるものは同じなのかも。
ちなみに今後“子供の死”をテーマにした作品の予定もあり3部作にしたいそう。
次回作は英語で撮っているという噂だが、こちらはどんな内容なのか楽しみだ。

本作のオゾンの定番のラストシーン。
いつもと違い、悲しい場面なのになぜか優しい安心感がある。
 

「ぼくを葬る」オフィシャルサイト

ぼくを葬るぼくを葬る
フランソワ・オゾン メルヴィル・プポー ジャンヌ・モロー

ふたりの5つの分かれ路 スイミング・プール 無修正版 8人の女たち デラックス版 まぼろし<初回限定パッケージ仕様>
焼け石に水 ホームドラマ クリミナル・ラヴァーズ 海を見る

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September 14, 2006

「ふたりの5つの分かれ路」

[DVD映画]★★★★☆

オゾン作品としてはもの足りないが、
何でも無い物語がちょっとしたミステリーになっている。
やっぱり女は強くて怖い…

違った意味で衝撃的?だったこの作品。
オゾン節が変化してきた???
監督は気になるフランスの若手監督フランソワ・オゾン
音楽はフィリップ・ロンピ
原題は「5X2」。2005年公開の作品ふたりの5つの分かれ路
 

冷めきった夫婦の離婚の場。
子供とともに、生きてゆく事にした自由で強い女。
誰かと寄り添ってゆかなければ生きてゆけない未練たっぷりの男。
ここに至るまでのこの夫婦の愛の経緯とは???

* * * * * * * * * * * * * * * *

“愛は変化し崩壊するものだ”

と定義し、その過程を見せつけるのがこの作品。
新しい手法では無いが時間軸を逆にし
ある1組のカップルの離婚から出会いまでを
“別れ”→“裏切り”→“出産”→“結婚”→“出会い”
の5つのエピソードを描く事により、
何でもない物語をうまく謎解きにしている。
レトロでメロウな音楽やイタリアンポップがとても印象的。

最初は乱暴で酷い男に思えた夫ジル(ステファン・フレイス)が、
どんどん哀れに思え、
最初は可哀想な妻に見えた妻マリオン(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)が、
どんどん力強く奔放に思えてくる。
いや、そもそもがそうだったから
5つの分かれ路を経てこの結婚は崩壊したのだ…。
彼らの愛の絶頂は結婚式だった。
 
カップルになった男女の心の嫌な所と禁断の行為を
美しいビジュアルを駆使しつつ極めてリアルに描き出す。
オゾンお得意の、エロティックかつ暴力的な表現、
それとは逆の愛ゆえの美しく明るく優しい表現の対比の妙で
ドラマティックに見せるのはさすがだ。
心に残るのがマリオンの両親、
父ベルナール(ミシェル・ロンダール)と
母モニク(フランソワーズ・ファビアン)のダンスと
ジルの兄クリストフ(アントワーヌ・シャピー)と恋人とのダンス。
ジルの元カノのヴァレリー(ジェラルディン・ペラス)の山歩きのシーン。
この夫婦とは別の愛の形がそこに垣間見える。

そして、この映画にも出てくる『海』。
生命の源、そして帰ってゆく所。
それは愛も同じなのか?
打ち寄せ引く波。どこまでも広がる母なる海。
オゾンの海はまだまだ広がり続ける。

「ふたりの5つの分かれ路」オフィシャルサイト

ふたりの5つの分かれ路ふたりの5つの分かれ路
フランソワ・オゾン ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ ステファン・フレイス

ぼくを葬る スイミング・プール 無修正版 8人の女たち デラックス版 まぼろし<初回限定パッケージ仕様>
焼け石に水 ホームドラマ クリミナル・ラヴァーズ 海を見る

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『ふたりの5つの分かれ路』(原題:「5×2」)オリジナルサウンドトラック
フィリップ・ロンビ サントラ
B0009V1ETG

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September 09, 2006

「皇帝ペンギン」

[DVD映画]★★★☆☆
 
この映像を撮影したスタッフにまず感謝したい!
皇帝ペンギンの不器用で不思議な生態を観る事が出来た!!

えっちらおっちら極寒の中を歩くペンギン達の行列、
カメの甲羅のように身を寄せあい冬の寒さをしのぐオスのペンギン達。
卵を受け渡しながら子供の命を守るペンギンの夫婦。
何十日も食べずに過ごし、何十日も旅をする彼らの姿。
その耐える力強さに感動した。
彼らはなんて不思議な生き物なんだろう!
子が巣立つと彼らだけで生活するというのも初めて知った。

監督はリュック・ジャケ
声の出演は、 ロマーヌ・ボーランジェ(母ペンギン)
シャルル・ベルリング(父ペンギン)、ジュール・シトリュク(子ペンギン)。
2005年公開のフランスのドキュメンタリー映画皇帝ペンギン
 
* * * * * * * * * * * * * * * *  

水中で食事をし、活き活きと泳ぐ姿。
対して陸上でのすさまじいまでに不器用な生活。
太陽の沈まぬ南極の夏の海辺。
太陽の昇らぬ厳しく長い夜南極の冬。
その中での子育て。
寒さに耐え、食いだめの出来るペンギンの強靱な体。
必ず相手が帰って来ると信じて待つつがい達と子供達。
自然の厳しさと不思議さには驚きっぱなしだ。

美しい映像と共に、ペンギン達を擬人化して語られるこの作品は、
賛否両論ありつつも、生命の儚さと共に生きる事の力強さ、家族の愛の力など
彼らの生態をとおして解りやすく教えてくれる。
人間の弱さ、そして器用さ、執念の強さをひしひしと感じた。
なぜならこの生態を撮影したスタッフのねばり強さたるや!

日本語吹き替え(石田ひかり、大沢たかお、神木隆之介)が評判良いようなので、
子供と楽しむ方はゼヒそちらで。
個人的には字幕版で十分楽しめた。

皇帝ペンギン -La Marche de l'empereur-皇帝ペンギン -La Marche de l'empereur-
リュック・ジャケ 岡田 好恵

皇帝ペンギン プレミアム・エディション 皇帝ペンギン ペンギンガイドブック ペンギン物語 ペンギン全種に会いに行く

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October 30, 2005

「子熊物語」

[DVD映画]★★★★☆

子熊の視点で映し出された映像が楽しくてドキドキ…。
人間も含む動物の表情が豊かで素晴しい!

突然予期せず良い作品に出会いまた…観てしまった。
ロッキー山脈の大自然の中、
不安が一杯、でも好奇心も元気も一杯、
愛嬌たっぷり精一杯生きる、
ちょっと妄想癖のある子熊ちゃんが可愛らしい。

これは先日「トゥー・ブラザーズ」でも紹介した
フランスのジャン=ジャック・アノー監督により
1988年に製作された心温まる作品「子熊物語」。
撮影はとても大変そうだけれど
動物達の生き生きとした表情を撮るのが、
この監督は本当に上手。
 
ロッキー山脈のふもとの春。
草木や花が咲き乱れる丘で、死んでしまった母親のそばで眠る一匹の子熊。
生きてゆくための方法を何も知らない無防備な子熊は、
偶然森で出会った雄熊を親のように慕い、彼のまねをしながら後をついて行く。
だがその雄熊は、その巨体ゆえ人間の猟師達に目をつけられていた。
その銃弾を受け、山の奥へ逃げる雄熊をこっそり追いかけ、
その傷口を舐めてあげる子熊。
それまで子熊を追い払っていた雄熊もついに我が子のように子熊を舐めはじめた。
しつこく追ってくる猟師達から逃げながら、彼等の愛情と信頼関係は深まってゆく…。
そしてついに、人間達が猟犬を導入して追い詰めてきた時に、
雄熊は身をもって子熊を守るのだが、子熊は猟師達に捕らえられてしまった。
猟師のトム(チェッキー・カリョ)からミルクを与えられ、
次第に彼等との生活にも慣れてゆくのだが…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

子熊の視点で映し出された映像が本当に楽しい。
クレイアニメだったりして、ファンタジックなのだが、
初めて見たカエルが夢に溢れ出て来たり、
きのこを食べてトリップしてしまったり!!!
ちょっと子供の頃の空想なんかを思い出してしまう、
なかなか想像力豊かで悪戯大好きな子熊ちゃんなのだ。
何でもかんでも雄熊の真似を一生懸命する姿!
おまけに熊達の表情豊かなつぶらな瞳!
驚いたり悲しんだり喜んだり安心したり…。
雄熊の威嚇する顔の恐ろしさはかなりのインパクトがあった。
あの顔で間近で吠えられたら…
猟師のトムさんも丸腰ではさすがにおののき祈るだろう。
ワタシも思わず一緒に祈ってしまった。

怯えて攻撃しない相手にとった雄熊の行動。
子熊ちゃんも、一難去ってまた一難…
自然界での掟。そしてお互いの知恵合戦。
生かす事の勇気と生きる事の難しさ。
猟師達の作る散弾銃の弾。
この子熊が、人間達が、そして私自身も
あらためて知る大自然の厳しさと愛情。
ハッピー・エンドにも救われる。
ちょっと心が洗われた作品。
 
子熊物語
チェッキー・カリョ ジャン=ジャック・アノー ジェラール・ブラッシュ
B0006NKDGM

子熊物語サウンドトラック
クロード・ベリ
B00005HLPT

 
■映画「トゥー・ブラザーズ」レビュー
 

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October 28, 2005

「トゥー・ブラザーズ」

[DVD映画]★★★★☆

愛すること。信じること。最後まで諦めないこと。
これらを、2匹のトラ兄弟の母から教えてもらい、
トラの深い愛情に驚いた。

監督・原作・脚本・製作は
子熊物語」「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のジャン=ジャック・アノー
2004年の英・仏合作「トゥー・ブラザーズ」。
出演は「メメント」のガイ・ピアース、ジャン=クロード・ドレフュス。
予告編から気になっていたが、それを上回るステキな物語だった。
30頭ものトラを使い撮影されたそう…素晴しいシーンが満載。
トラの兄弟のじゃれあう姿に思わず涙がにじんでしまう。
 
冒頭のカンボジアの密林の中、草木のからまる石像のゴロゴロする、
寺院の遺跡で暮らしている4匹のトラの家族の姿。
彼等が水浴びをする川の中にも転がるレリーフの遺跡…。
子猫のような子トラの兄弟、立派で堂々とした愛情深い両親。
じゃれあい、救いあう子トラ達…。
この風景に見入ってしまった。

象牙より、めずらしいアジアの石仏がめずらしく高値で取り引きされた時代、
伝説のハンター、エイダン(ガイ・ピアース)は
違法承知でトラ達の住む寺院へやってきた。
人間達から子を守ろうとする親達。
まだ葉も生えない乳飲み子の子トラ達は、
一匹は父に守られきれずにエイダンの手、そしてサーカスへと売られてゆき
クマルと名付けられた。
もう一匹は母と供にジャングルへ逃亡したのだが、その後やはり捕らえられ、
行政長官ユージン(ジャン=クロード・ドレフュス)の家へひきとられ、
サンガと名付けられた。

子を奪われ、残された子と走り去るトラックを見つめ、
道にたたずむ母と子の姿が目に焼き付いている。
木登り中、そして炎の中、兄弟で見つめあう信頼の眼差しも忘れられない。
人間に捕らえらても、チャンスを見計らい決して諦めない母トラの力強さ。
子を乗せて走るトラックを追いかけ荷台にまで乗る。
穴に落ち銃で撃たれても、チヤンスを逃さない、野生に生きる母トラの粘り強さ。
この母の姿を子供達はずっと追い求め見てきたのだ。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
 
野生の本能に従ってしまう肉食動物のトラ。
人間達の身勝手な欲望に翻弄され、数奇な運命を送る事になるトラの兄弟。
まさかの運命のイタズラ…イベントのための兄弟対決。
アジアの密林の中で人間とトラが同等に見えた。
当然だが、人もトラも大自然の中では同じ食物連鎖の中に存在しているのだ。
それぞれ悩みや欲望を抱え、全ては生きてゆくために…。

人間達の小さな欲望や悩みがバカバカしく思えてくる。
石窟寺院の石仏の持ち出しを闇に許可する村の長。
人間を襲うトラを許せない村の知的な娘。
偉大な父の後を継いだ、ボンクラ息子、おとぼけ閣下のマヌケさ。
彼の財産に目がくらむフランス女性。
動物に芸を仕込まなければ、興業を行えないから、
お金のためには何でもするサーカス団。

ハンターのエイダンとクマルのちょっと複雑な友情。
エイダンがミルク替わりのハチミツドロップをずっと覚えていたクマル。
少年ラウル(フレディー・ハイモア)とサンガの絶対的な信頼。
行政官の息子ラウールと同じベッドで眠るサンガ。
「彼等は人間を襲わない」とサンガを信じたラウルの純粋な思い。
実際こんなに美しい物語になるかどうかは運のようなもの。
彼等(野生の動物)は、憎しみがあって人を殺めるわけではない。
生きるために、身を守るために、時にはじゃれて遊んでいて…。
野生動物との共生というのは難しい。
だからこそ、彼等の世界も守らねばならないのかも…。
この作品の結末には、少し救われた気分になった。

  
トゥー・ブラザーズ スタンダード・エディション
ガイ・ピアース ジャン=ジャック・アノー フレディー・ハイモア
B0006N2FL8

トゥー・ブラザーズ コレクターズ・エディション
ガイ・ピアース ジャン=ジャック・アノー フレディー・ハイモア
B00063IA12

ノベライズ
トゥー・ブラザーズ—きっと逢えると信じて
ジャン=ジャック アノー カリーヌ・ルー マティニョン
Jean‐Jacques Annaud
4566013618

 
「トゥー・ブラザーズ」オフィシャルサイト
 
■映画「子熊物語」レビュー
 

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October 15, 2005

「ベルヴィル・ランデブー」

[DVD映画]★★★★☆

独特のシニカルなストーリーとキャラクターのデフォルメには脱帽!
レトロなテーマソング♪が耳に心地よく残り、そんな映像にぴったりな
非常にフランス的なアニメーション作品。

圧倒されるおばあちゃんパワー!
アニメーションと言えど、「ありえね〜!!」の連続!!
キャラクターやマシンの強烈なデフォルメ、
そして物語の思いもつかない展開にびっくり。
予告編にすっかり騙されてしまった。

フランスのアニメーター、シルヴァン・ショメ監督による、
とことんシュールな、そしてシニカルな長編フレンチ・アニメーション。
シルヴァン・ショメによるノスタルジックな映像と、
ブノワ・シャレストのレトロな音楽とリズムが素敵にマッチした2002年の作品。
アカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされ、NYやLAの批評家協会賞を受賞など
2003年の映画賞で話題になった「ベルヴィル・ランデブー」!

両親のいない寂しいシャンピオンとおばあちゃん。
何にも興味を示さない…そんな孫が気に入ったのは、
おばあちゃんのプレゼント、犬のブルーノと三輪車。
これに目をつけたおばあちゃん!
生活用品をマッサージやトレーニングや計量に見事に利用し、
厳しくサラブレッドのごとく鍛え上げ、自転車レーサーへと成長したシャンピオンは、
ついにあの有名な自転車レースの最高峰“ツール・ド・フランス”へ出場した!!!
ところが、レースの最中にシャンピオンは謎のマフィアに誘拐されてしまう。
愛する孫を救うために、おばあちゃんとブルーノはシャンピオンを追って、
巨大都市"ベルヴィル"へ辿りついた…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

『ベルヴィルでスィングしてランデヴ〜♪』
オープニングはモノクロ画面で三つ子が歌う、テーマソング。
極端に会話が少ないかわりに、濃密でどこかもの悲しくも美しい風景と音楽が語る。
まるでヨーロッパの…東欧などの絵本を見ているようだ。
そして、いちいちかなり毒のあるシニカルさ。
決して美しくはない、これも極端にデフォルメされたキャラクタ−達!
筋肉質だがガリガリに痩せ、人間とは思えない鼻を持ち、目は落ち窪み顔色が悪く、
黙々と自転車をこぎ続けるシャンピオン。
一方、体育会系でホイッスルを吹きまくり、鋼の右足を持のしのし歩く、
三波伸介(←古いなぁ)似のおばあちゃん!
ブクブク太って巨大になる大食いの愛犬ブルーノ、そしてブルーノのシュールな夢!
個人的には“ツール・ド・フランス”のかけひきがもっと観たかったけれど、
爆死させて食べるカエル料理や、丸々した自由の女神?
シャンピオンの田舎の力強いおばあちゃんと、
音楽好きの都会に住む三つ子のおばあちゃん姉妹との
友情と底知れぬパワーに苦笑い。
ジャック・タチなんかへのオマージュも含め、
映画好き、漫画好き、音楽好きな感じに好感が持て、
もう、目が離せない、耳が離れない!!

『ベルヴィル・ランデヴ〜でスィング♪』
カラーになってまた三つ子が歌う、テーマソングとリズミカルな踊り!
STOMPもびっくりでっせ。
海を超えた架空の大都市"ベルヴィル"(←というかアメリカ?)。
ここでまさかのとんでもない裏社会を描いた、
ハード・ボイルドな展開になるとは驚いた。
いわゆる弱者を愛してしまうお国柄…
非常にフランス的な、地味ながらも心に残る力強い作品。
最初から最後までシャンピオンは色んな意味で可哀想、
四角いマフィアも含め、男の人はどこかおマヌケ。
う〜ん、年をとってもやっぱり女は強いのだ〜!!!

ちなみにエンドロール終了後も、こそっとオチありなので、
映画の基本、最後まで観るべし。


[映像特典]
・高畑勲とシルヴァン・ショメの対談(約40分)
・完成披露試写会 監督舞台挨拶(約10分)
・劇場予告編(オリジナル版、日本版、TVスポット)

ベルヴィル・ランデブー
シルヴァン・ショメ
B0009ETCD8

ベルヴィル・ランデブー / エディシオン・コレクトール (初回限定生産)
シルヴァン・ショメ
B0009ETCDI

ベルヴィル・ランデブー オリジナル・サウンドトラック(CCCD)
サントラ M Beatrice Bonifassi
B00069BOMS

  
 
「ベルヴィル・ランデブー」オフィシャルサイト
 

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May 14, 2005

「世界でいちばん不運で幸せな私」

[DVD映画]★★★★☆

邦題がちょっ妙だけれど、観終わるとなるほど。
アメリ」をちょっと彷佛させるキュートさとテンポと残酷さ。
ちょっと浮き世離れしたカップルのお伽話のような恋愛を描いた作品
世界でいちばん不運で幸せな私」。

監督は本作が長編映画のデビュー作となったヤン・サミュエル
イラストレーターから映画監督へと子供時代の夢をかなえたそう。
絵コンテやセットのイラストも自ら書いた超器用な才能の持ち主。
主演は監督としても才能を発揮する「ヴィドック」のギョーム・カネ
ビッグ・フィッシュ」「ロング・エンゲージメント」のマリオン・コティヤール
音楽はフランソワ・オゾンの作品でおなじみのフィリップ・ロンピ。
甘くセツなくどこか壮大なイメージのメロディ、
全編ふんだんに色んなバージョンで使われるシャンソンの名曲『バラ色の人生』が、
ロマンティックさをもりあげる。
2003年制作のフランス映画で、配給は…アルバトロスさん!!!
こりゃ、ただものではないファンタジックな物語なはずだ!

とても可愛いメリーゴーランドの缶。
これが最初から最後まで、二人をつなぎ一貫して登場。
冒頭で少年が語る。

「僕はゲームが好きだ。
 でも、絶対のってはいけないゲームがある。
 でないと、コンクリートで固められてしまうぞ!」

いじめられっ子のポーランド移民の少女ソフィー。
(8歳:ジョゼフィーヌ=ルバ・ジョリー
彼女を可哀想に思い、病気の母(エマニュエル・グリュンヴォルド)にもらった
宝物のメリーゴーランドの缶を譲ってあげた
ジュリアン(8歳:チボー・ヴェルアーゲ)の幼いゆえの一言。
「時々返して」
でも、ソフィーは言う。
「返して欲しければ“のる?のらない”のゲームをして」
この会話から全ては始まった。
このゲームは“相手の出した条件をクリアできるかできないか”を答え、
クリアできたらあのメリーゴーランドの缶を手元に置けるというもの。
だが、このゲームの鉄則は“必ずのること!”なのだ。
相性バッチリ、元々悪戯っこの二人のゲームは、どんどんエスカレートし、
そのまま成長するにつれて増々条件も悪趣味に。
幼い頃からの“ゲーム”にしばられ、素直に気持ちを口に出来ず、相手も信用出来ない
大人になったジュリアン(ギョーム・カネ)とソフィー(マリオン・コティヤール)。
お互いを見つめる優しくキラキラした瞳だけで十解りそうな事なのに。
ちょっと意地悪でひねくれた二人の気持ちはすれ違うばかり…。

幼い頃、不幸な境遇を笑い飛ばすために、二人で遊んだ“ゲーム”だったのだが、
奔放な悪戯娘のソフィーの“ゲーム”振り回され、父親(ジェラール・ワトキンス)
からは叱られてばかりで、何もかもうまくいかない。
もっと大人になろうと決意したジュリアン…。
自分の蒔いた種とはいえ、恋する女にとってひどい仕打ちを受けたソフィー。
ついに二人は別の道へ進み出す。
だが、ジュリアンの選んだ大人の世界は彼にとっては退屈でつまらないものだった。
どうしても忘れられない天真爛漫の幼馴染みソフィーと、あの“ゲーム”。
同じくソフィーも自分で決めたルールを守りながらも同じ気持ちでいたよう。
お互い愛しているのは、一人だけ。
ジュリアンの父や、妻クリステル(レティシア・ヴェネチア)
ソフィーの夫セルゲイ(ジル・ルルーシュ)にとっては
まともで誠実だけに災難ばかり!!
ちょっと周囲を巻き込み過ぎたが、彼等の求めていたのは
あまりにも遠回りな長い時間をかけた末に、危険を背中合わせに
やっと見つけた“二人だけの世界”。

彼等は子供の心を引きずりながら、体裁だけは大人になってしまった。
幼い頃の言葉は大人になっても変わらない。
「私達は一心同体」
「心は通じ合っている」
「二人は永遠に離れず一緒」

この物語は極端だが、幼馴染みと年月を経て恋をした経験者には同じような、
歯がゆくも痛い部分、馴れ合いだからこそ言えなかった事もあるのでは?
“ゲーム”では無いけれど、冗談や嘘なんてはぐらかしてみたり(ああ青春♪)。
この映画では、ある意味一般的で古典的、運命的で絶対的な愛をもし貫いたとしたら?
では無いかと思ったのですが…
オチでひょえ〜。ラストシーンで複雑な気分に。
個人的には絶対貫けません。楽なほうへ流されます〜っ。
ジュリアン役の二人の優しそうで悪戯っぽい笑顔にもうメロメロ。
暴君になられたらイヤですけど〜。

[特典映像]
・メイキング
・フィルモグラフィー/俳優・監督インタビュー
・幸せ度チェック

オフィシャルサイト
“恋のからまわり度チエック”ができます。
 ↓
http://www.albatros-film.com/movie/sekai/
 

世界でいちばん不運で幸せな私
ギョーム・カネ ヤン・サミュエル マリオン・コティヤール チボー・ヴェルアーゲ
B0006TPIJS

映画「世界でいちばん不運で幸せな私」オリジナル・サウンドトラック
サントラ
B0002J518K

世界でいちばん不運で幸せな私
ヤン サミュエル Yann Samuell 番 由美子
4840111405

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February 14, 2005

「かげろう」

[DVD映画]★★★☆☆

戦時下での深い森で、未亡人と謎の青年の静かに押し殺された激しい一瞬の恋。
これは戦争の虚しい残酷さと人間の悲しい性を描いた作品だと思った。
“65年前の戦争”も“戦争中の一瞬の情熱”も“人の心”も
ゆらゆらと、『かげろう』のようにゆれ動く。
フランスの巨匠アンドレ・テシネ監督による2003年の作品「かげろう」。
美しき諍い女」「8人の女たち」などのエマニュエル・ベアール
本作で脚光を浴びた新人ギャスパー・ウリエルの
緊張感のある演技が素晴らしい。

第2次世界大戦最中の1940年6月10日。
戦火を逃れてパリから南仏ヘ向かう人々の列をナチス・ドイツ空軍の機銃掃射が襲う。
13歳の息子フィリップ(グレゴワール・ルブランス・ランゲ)と
7歳の娘カティ(クレメンス・メイエ)を連れてその惨劇の中に居た
未亡人のオデール(エマニエル・ベアール)は、
間一髪で命は助かったのだが現場で呆然としていた。
そこへ突然現れた謎の青年(ギャスパー・ウリエル)が、親子を森へと避難させる。
イヴァンと名乗るその青年は、オデール達を更に安全な森の奥へと導く。
そこで見つけた空家となった他人の屋敷で、
オデール親子とイヴァンは暮らし始めるのだ…。

奇妙な共同生活。
息子のような17歳の孤独な青年イヴァンの、粗野な男と、時折見せる幼い顔。
「行動しないと生き残れないからだ」
と語る彼には人に言いたく無い過去があるらしい。
最初は息子のフィリップが慕い始め、幼い娘カティも王子様と彼がお気に入り。
最も警戒していたオデールも、彼の危なっかしい魅力に徐々に心が動いてゆくのだ。
憔悴し弱った女、強く正しい母親、成熟した魅惑的な女、時には可愛らしい面もある、
大きな目と小柄な顔にアンバランスな唇を持つオデールの様々な顔。
オデールとイヴァン、このアンバランスな二人は、
違法を共有している緊迫感の中で、お互い魅了されてゆく。
17才の男の子に
「あんただけだ。妻になってくれ」
なんて言われたら…!!!
つかの間の戦中とは思えない森での家族的な静かな生活と情熱的な恋。
だが、彼等は厳しい現実に引き戻されてしまうのだ。

全てを冷静に見つめるフィリップとカティの存在が印象的だった。
常に母親や妹の事を考えて父親のかわりを勤めようと頑張る兄フィリップは、
イヴァンを慕いながらも複雑な思春期を迎えようとする少年。
彼の兵士のために歌う歌声はまるで天使のよう。
幼いカティは冒頭で戦争について疑問に思う。
「急いで逃げるのは悪魔が追ってくるからね。
 なぜ悪魔は子供をさらうの? 悪い事をしてないのに…」
そして、イヴァンに自分の見た死体のまねをしてみせる。

オ−プニングから時折挿入される、揺れ動く戦争のモノクロフィルム。
『かげろう』のようなのは、あの森での暮らしやイヴァンの存在だったのだが、
もはや戦争の事実が『かげろう』になりつつある…。

「かげろう」オフィシャルサイト
 ↓
http://www.gaga.ne.jp/strayed/

かげろう
エマニュエル・ベアール

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February 11, 2005

「女はみんな生きている」

[DVD映画]★★★★☆

のっけから緊迫感をあおる音楽とスピーディーな展開で、もう目が離せない!
こんな勢いのあるパワフルなフランス映画ははじめて!!
赤ちゃんに乾杯!」のコリーヌ・セローが監督・脚本・台詞を担当した
コメディ・ドラマ「女はみんな生きている」。
2001年の作品で原題は『Chaos(カオス)』

ディナーの約束に間に合わない!と夫ポール(ヴァンサン・ランドン)と共に
どたばた支度をする妻エレーヌ(カトリーヌ・フロ)。
車を飛ばす二人の前にあらわれた怪しげな男たちに追われる若い女!
それを無視するポールは車のドアを開けない。
女は男達につかまり、ポールの車のフロントガラスに頭を打ちつけられ血まみれに。
“彼女”を助けようとするエレーヌに、ポールは
「ティッシュを」と大怪我している彼女には見向きもせず、
血で汚れたフロントガラスを拭くのだ…。
そして、救急車も呼ばずに『洗車』へと向かう。
翌日も、母親が尋ねてきても居留守を使うポール。
家庭より、仕事と会社が第一の、そんな男だった。

エレーヌは怪我をした女が気になって仕方がない。
そして救急病院にいる瀕死の彼女を見つけ出して、
病院で泊まり込んで看病を始める。
すると例の怪しげな男達が現れた…。
エレーヌは“彼女”のそばにいたいと思い、語り始める。
「私はエレーヌ。他人だけど、あなたに生きて欲しいの。」

エレーヌが帰らないので、家庭は無茶苦茶。
ポールは「アイロンがかかってない!」とエレーヌの携帯にまで伝言を入れてくる。
独り息子ファブリス(オレリアン・ウィイリク)がこれまた女にだらしないドラ息子。
ファブリスのガールフレンドが何人も家におしかけてくる。
そこで、エレーヌは家を出て本格的に“彼女”を守り家を出る事に。
エレーヌの献身的な介護のおかげで奇跡的に回復した“彼女”は、
信じられないような身の上を話し始めた。
彼女はノエミ(ラシダ・ブラクニ)というかなりワケありの売春婦だった。

娘を売り飛ばすような家族を持ち、“組織”に利用されるノエミ。
田舎から出て来て息子に30分程息子とお茶するためにでも、
1ケ月間もホテルで待つポールの母親(リーヌ・ルノー)。
家庭や家族を全くかえりみないポールの妻、普通の主婦エレーヌ。

この映画はダメで酷い男達にしいたげられてきた女達が
その男達に頭脳戦で立ち向かい復讐する、その力強い姿を描く。
女達は自分の事よりも『他の誰か』の事なると強いのなんの!
一方ダメ男達は自分の事で手一杯。
「魚は食べたくない!」なんて、子供じゃないんだから…。
もちろん、全ての男女がこんな関係では無いが、
万国共通で、こんな差別意識があるのか…と少し驚いた。

頭の良いノエミのとんでもない過去とパワフルなエピソード。
そんな彼女に魅了されたエレーヌの家族達!!!
経験豊かすぎるノエミを女性陣は愛しみ影響され、男性陣は彼女のテクに骨抜きに。
ちょっとヤリ過ぎだけれども、
鮮やかな彼女達の手口は活き活きとしていて爽快感がある。
特にノエミ!そして、エレーヌのキレのある動きも探偵顔負け!
次から次へと何が起こるのか?とドキドキし通し。
ノエミの目覚めた顔!!!あの目は一生忘れないだろう!!!!

[映像特典]
メイキングとトレーラー。
この作品はデジタル・カメラで撮ったそう。
そんな世の中なんですね。

公式サイト
ドキドキする音楽も聴けます。

http://onna-minna.jp/

女はみんな生きている
カトリーヌ・フロ コリーヌ・セロー ヴァンサン・ランドン

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February 02, 2005

「8人の女たち」

[DVD映画]★★☆☆☆

ごめんなさいオゾンさん。やっぱりダメでした…。
実はオゾン作品で唯一相性の悪かった作品。
一番最初に観たのがこの作品だったので、もう一度チャレンジ。
これは、殺人事件が起きた大邸宅の中での
ミステリー風ミュージカル映画?「8人の女たち」。
監督・脚本は「まぼろし」「スイミング・プール」のフランソワ・オゾン
2002年ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀芸術貢献賞)受賞作品。

1950年代のフランス。郊外の大邸宅にて。
ある雪の日、一室で主人が刺殺されているのが発見された。
容疑者は邸宅に集まった8人の女たち。
家族愛を吹聴する祖母のマミー(ダニエル・ダリュー)は欲深。
妻のギャビー(カトリーヌ・ドヌーヴ)はどうやら浮気を。
妹ピレット(ファニー・アルダン)はお金のトラブル。
ギャビーの妹オーギュスティーヌ(イザベル・ユペール)は欲求不満のオールドミス。
清楚な長女スゾン(ヴィルジニー・ルドワイヤン)は妊娠中。
勝ち気な次女カトリーヌ(リュディヴィーヌ・サニエ)は妙な行動を。
黒人の家政婦マダム・シャネル(フィルミーヌ・リシャール)はレズビアン。
もちろん、新人メイドのルイーズ(エマニュエル・ベアール)も…。
8人の醜態がどんどん明らかに!!!

ワタシがダメだった理由が判明!
ストーリーや描いている事は初期の頃から変わっていない。
今思えばミステリーにオマージュを捧げた、
ホームドラマ」のレトロでゴージャスなミュージカル演劇映画といった感じか。

1の理由。
どうしても、あのミュージカル感が生理的にダメなのだ。
あの“突然歌って踊る”寒さに耐えられない。(←タモリさんと同じ)
歌い出した途端にもう…。
これはもう、好みなのでしょうが無いなあ。
焼け石に水」とか「サマー・ドレス」(「海をみる」に収録)の
下手な歌と下手な踊りは、アクセントや意味付け的にもツボだったのだが、
ど〜も、何度も何度もしつこく繰り広げられる、
あの“踊りと歌”はそれまでの流れをぶった切る。
あれは“歌う意味”が無いというか、あれにより興醒めしてしまうのだ。
ちなみにオペラなら不思議と大丈夫。
だって最初から最後まで基本的に歌で構成されているんだから…。

2の理由。
あえてやってはいるのだが、
古い演劇風の演出と俳優の演技が映画にするとくどい!!!

3の理由。
オゾン特有の観終わったあとの“浮遊感”。
これは明解に解決してしまうので、
『そりゃそうだろうな〜』と思って終了。
その後の余韻があまり無い。

ちなみにこの作品で面白かったのは、
やはり、ラストの予想のつかないどんでん返しと、
大女優を使って、あれだけの女の醜態を描いたオゾンさんのセンスと勇気!
それだけはあっぱれ!!!

「スイミング・プール」のインタビューで監督自身が語っているように、
やっぱりこの作品の製作は大変なストレスがたまったみたい。
だから「スイミング・プール」では逆の事をやりたかったそう。
たぶんその“ストレス”が微妙に感じられ、観ているほうも堅苦しかった。
オゾンさんには妙な浮遊感のある、変てこな作品を作って欲しいなあ〜。
一見普通に見えて、とんでも無い、想像もつかない結末の作品!!!
そんなオゾン節が好きだなあ!

「8人の女たち」公式サイトはこちら

http://www.gaga.ne.jp/8femmes/

 
8人の女たち デラックス版
カトリーヌ・ドヌーヴ

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8人の女たち プレミアムBOX
フランソワ・オゾン

オリジナル・サウンドトラック「8人の女たち」
サントラ リュディヴィーヌ・サニエ イザベル・ユペール ファニー・アルダン

8人の女たち
佐野 晶 Francois Ozon Robert Thomas Marina De Van


 
■ 映画「海をみる」のレビュー
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January 22, 2005

「スイミング・プール」

[DVD映画]★★★★☆

なんじゃこりゃ? とラストでいつも驚かされる。
さらっと描かれているが、これぞオゾン節。
ランプリングとサニエの肉体美にメロメロの「スイミング・プール」。


最後の最後まで気が抜けない二人の対照的な女性を描いたミステリー?ドラマ。
フランス短編映画の若き巨匠フランソワ・オゾン監督の2003年の作品。
脚本はフランソワ・オゾン/エマニュエル・ベルンエイム。
女優陣は、「まぼろし」のシャーロット・ランプリングと
焼け石に水」「8人の女たち」のリュディヴィーヌ・サニエ。

ロンドンに年老いた父と住むイギリス人の売れっ子女流ミステリー作家の
サラ・モートン(シャーロット・ランプリング)は、
出版社の社長ジョンに勧められ、南仏のリュベロンにある、
プールつきの彼の別荘へ行き、そこで執筆を始めていた。
後で来るという約束だったジョン(チャールズ・ダンス)は来ずに、
彼の娘のジュリー(リュディヴィーヌ・サニエ)が突然やって来る。

きちんとした“お堅い”女流作家先生のイギリス人の中年女性サラ。
いつもヨーグルトやダイエットフードを食べている。ランチすら粗食。
眩しくはちきれそうな若さと奔放さのフランス娘のジュリー。
フォアグラを食べ、毎日違う男をつれこむ彼女。
見た目も性格も行動も正反対の二人は、最初はもちろん反発し合うのだが、
まだ、掃除も行われていない自宅の“プール”で裸体で泳ぐジュリーを見た時から、
ミステリー作家としての衝動がサラに沸き起こる。
ジュリーの連れ込む男達の世にも下品な身体と顔。
彼女の恋愛遍歴と行動に興味深々のサラの目は彼女を追い、探し、そして書く。
創作意欲をかき立てるジュリーの過去、謎と影。

二人の奇妙な共同生活は、ある夜彼女達の別荘を訪れた
サラもよく知るレストランのウエイター、ちょっぴり可哀想な
フランク(ジャン=マリー・ラムール)の失踪で急激な変化を見せる。
プールサイドの血痕。フランクのソックス…。
ジュリーの美しい身体にある傷。作家であった彼女の母親…。
不思議な二つの三角関係がここで絡み、
サラとジュリーの奇妙な共犯感で気持ちが共鳴し始める。
ジュリーを守るために自らの身体をさらけ出すサラ!
そして、相変わらず謎を残した結末。
女たちが手を振り合うシーンは印象的だ。

魅力的な二人の女優の対照的な美しい肉体美には思わずため息。
それを眺めている男性たちの足もと。
それをなめるように撮るカメラ。
「焼け石に水」のグラマーちゃんリュディヴィーヌ・サニエもより洗練され、
シャーロット・ランプリングの熟成された裸体美は圧巻。
愛の嵐」(1973)から32年!。
相変わらずスリムで女性らしい身体はリアルな年相応の美しさ。
これには年老いた娘?(ミレイユ・モセ)のいる、
すっかり枯れた管理人のマルセル(マルク・ファヨール)もメロメロ。

どうも合わなかった「8人の女たち」とは全く違った、
肩の力の抜けたオゾンぽい作品だと思う。
特典映像でオゾン監督が語っている“バカンス”的な作品。
最初のサラと最後のサラ。服装といい、表情といい、別人の様。
海ではなく、四角い水たまりのスイミングプール。
人の欲望を映し解放する、デヴィッド・ホックニーの作品のような
あのスイミングプールで彼女の目には何が見えたのだろうか…。
悪戯っ子のような、母親のようなサラの笑顔には充実感があった。
卑屈で内向的だった作家が別の世界への扉を開けたかのようにも見えた。
 
[映像特典]
・未公開シーン(4シーン:約15分)
・オゾン監督・ランプリング・レニエのインタビュー(約20分)
・オリジナル特報・オリジナル予告・日本版予告・日本版TVスポット

スイミング・プール 無修正版
シャーロット・ランプリング

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スイミング・プール
サントラ

スイミング・プール
フランソワ オゾン Francois Ozon 佐野 晶



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December 17, 2004

「ホームドラマ」

[DVD映画]★★★★☆

さて、気になって気になって仕方が無い!!
フランソワ・オゾン監督のかなり毒の効いたシュールな作品「ホームドラマ」。
少し「8人の女たち」を思わせる部分もありながら(どうもあの作品は苦手)、
とにかく下らなく毒々しいのにどこか可笑しくて、
断然こちらの作品のほうがハマれた!
カップリングは「小さな死」。
こちらはしょっぱなからかなりマイナス・オーラを出した
カメラマンの青年を追った意外にも微笑ましい短編。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ホームドラマ」[作品別評価]★★★★☆」

うひゃ〜!まさかあんな事になるなんて!想像出来なかった!!
また1本とられました。オゾンさん!!!
平凡なブルジョア家庭に一匹のネズミがやって来たことから、
どんどん崩壊してゆく様を描いたオゾン風のブラック・コメディ。

“短編のヒッチコック”フランソワ・オゾン監督の長編デビュー作。
1998年のフランス映画。
原題の「SITCOM」はシチュエーション・コメディの略だそう。
これは80分のかなりブラックなドタバタ“奇劇”。

いきなりである。
とある豪邸に父親ジャン(フランソワ・マルトゥレ)が帰宅し、
“ハッピー・バースディー”の歌声♪
と、突然銃声と悲鳴が!

そしてこれまたいきなり数カ月前にさかのぼる。
家政婦のマリア(ルシア・サンチェス)がやってきたその日、
ジャンが“ネズミ”を持ち帰ったその日の夜、マリアと
夫のアブドゥ(ジュール=エマニュエル・ヨウム・デイド)を招いての夕食会で、
直前までネズミと遊んでいた息子ニコラ(アドリアン・ド・ヴァン)が
突然「ボクはゲイだ」と宣言する。
それがこの家庭の崩壊の始まりだった。

ニコラをなだめるために彼の部屋に行ったアブドゥは
“ネズミ”に噛まれて、あろうことかニコラに身をもって体験させてしまう。
“ネズミ”と戯れていた娘ソフィ(マリナ・ド・ヴァン)は窓から身を投げ
命は助かったものの半身不随に。
“ネズミ”を触ったマリアに誘惑された
ソフィの恋人ダヴィッド(ステファーヌ・リドー)は、
それをネタにされ愛するソフィのプレイの下僕に。
絵に描いたような心配性な良き母エレーヌ(エヴリーヌ・ダンドリイ)は
“ネズミ”に触れてしまってから息子のためにと男女の関係を持つように。
それらを全て知っていて、それを受け入れると言う家族に
自分は“まとも”だからと一人無関心な父親ジャン。
そして…誰も居ない家でジャンは“ネズミ”と戯れた…。

とにかく予期せぬ事態と災難が次々と起こる。
彼等は名前すらつけてもらえないこの“ネズミ”に触れる事をきっかけに、