4 posts categorized "映画:イタリア"

July 04, 2007

「麦の穂をゆらす風」

[DVD映画]★★★★☆

アイルランド独立戦争を通して描かれるのは
ある意味普遍的な戦争の情景であり普通の人々個々の感情。
だからこそ、人の心に語りかけるのかもしれない。

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「麦の穂をゆらす風」

製作国:イギリス/アイルランド/ドイツ/イタリア/スペイン(2006)
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
音楽:ジョージ・フェントン

デミアン(キリアン・マーフィ)
テディ(ポードリック・ディレーニー)
ダン(リーアム・カニンガム)
シネード(オーラ・フィッツジェラルド)
ペギー(メアリー・オリオーダン)

「麦の穂をゆらす風」オフィシャル・サイト
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戦争、紛争、ゲリラ線…
1920年のアイルランド独立戦争をとおして見えてくるのは
現在も続いている人間の悲しい本能と愛情の深さと脆さ。
これらが庶民の目を通してストレートに描かれるので
どうしようもないもどかしさが心に響く。

アイルランドの片田舎の農家ではじまりそして終わるのだが、
その間に起きた悲惨な出来事の数々…
戦争だから…それだけで片付けてはいけない
重い悲しい何ともいえないもどかしさが胸をしめつける。
1919〜1921年のアイルランド独立戦争を
1920年のある日から、とある兄弟の目線で丹念に描いている。

アイルランドへの英国の侵略に対抗するゲリラ戦。
少しもの寂しいけれど美しい緑の中で銃を構えて訓練する
農民や少年などの若い一般庶民で結成されている
アイルランド義勇軍〜アイルランド共和軍(IRA)達の姿。
犠牲になりながらも彼らを支え家を守り、強く立ち向かう女性達。

一機関士であったダンと出会ったあの事件。
戦争から逃げて医者になるはずだったデミアンが
幼馴染みを裏切り者として処刑したり
元同胞と闘わねばならなくなった経緯は
運命にしても悲しすぎる。
皆で投獄された時、代表者である「テディ・オドノヴァンは誰か?」と
英国軍に問われた時、すかさず「自分だ」と答えたデミアンだったのに…
仲間を裏切る事…真面目なデミアンの苦悩。
兄テディとの意識のずれが、更に弟の運命を変える…

野山の広がるアイルランド南部の町、コークを舞台に
時代に翻弄された兄弟を中心に
淡々と身近なエピソードとしてアイルランド独立戦争が描かれる。
休戦、そして、念願のイギリス・アイルランド条約。
だが、この時の条約による北アイルランドの帰属問題により
その後の革命運動を二分し新たな闘いを生み
さらにその後何十年もの間IRAは
形を変えいくつもの派閥に分裂しながら
現在も組織は存在している…

冒頭で村人達が可哀想なミホールのために歌った
映画のタイトルでもあるアイリッシュトラッドの曲
“THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY”(麦の穂をゆらす風)
これを観終った後に再び歌詞を確認しつつ聴いてみると
自分の腕の中で恋人を失った、若い兵士の詩なのだ。
祖国のための闘い、恋人の死への恨みの闘い…
何ともいえない苦しみが、美しいメロディと共に流れ出る。

アイルランド人もイギリス人も他の国の人達も
個々では誰も闘いたいわけでも裏切りたいわけでもない。
そうしなければしょうがない状況
自分や家族や同胞が守れないから
命を落とした者に顔向けができないから
若い世代の未来が見えないから…なのだ。
この映画には戦争や人間の本質を問われている気がした。

世界中でくり返されている戦争や紛争
そして近年の数多くのテロ事件…
85年も前の事件だが、現在にまだまだ繋がっているのだ。
カンヌでパルムドール賞をとったの
井筒監督大絶賛(笑)もうなずける。
知っているようで知らなかったアイルランドの歴史。
ちなみに役者さん達は皆アイルランドにゆかりのある人達。
キリアン・マーフィーの変化してゆく切ない瞳がとても印象的であった。

B000NIVIPA麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション
キリアン・マーフィー ケン・ローチ ポードリック・ディレーニー
ジェネオン エンタテインメント 2007-04-25

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December 09, 2005

「息子の部屋」

[DVD映画]★★★☆☆
 
タイトルと宣伝文句に騙されていた!
こんな控えめで奥深い映画だったなんて!!!

監督・主演はナンニ・モレッティ。
なんと2001年カンヌ映画祭パルムドール賞を受賞した
イタリアの作品「息子の部屋」。
予告編を観ていてかなり期待していただけに、ちょっとがっかりした記憶が。
実は昨年観た作品なのだが、約1年でも色々思う所があり、
再びチャレンジ&レビューを書く事にした。
実は、あとあとからじんわりくる、大変味わい深い作品だったのだ…。

事故で突然失った息子への哀しみと家族の崩壊を乗り越え、
家族の再生へ至るまでの過程…
それを淡々と過剰な表現を避け、極力リアルに描写した作品。
ごく普通の日常で“家族感”を前半でたっぷり描き、
突然家族が一人欠けるという哀しみを耐える父親と
残された家族の模様がリアルに後半で描かれる。
棺桶をやたらがっちり封をするトコロはぐっときた…。

* * * * * * * * * * * * * * *
 
精神科医ジョヴァンニ(ナンニ・モレッティ)の息子、
アンドレア(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)が、
ある日突然、ダイビングで潜水中に事故死した。
ジョバンニはその日はアンドレアとジョギングの約束をしていたのに、
急患の往診を選んでしまったがために、息子を失ってしまったと
自分を責め続けついには、仕事もやめてしまうのだった。
平和だった家庭は徐々に崩壊しはじめる。
ジョヴァンニと妻パオラ(ラウラ・モランテ)の冷めてゆく関係…
娘イレーネ(ジャスミン・トリンカ)の失恋…
そんな所へ、息子がキャンプで1日だけ恋した?少女
アリアンナ(ソフィア・ヴィジリア)からの手紙が届き、
更に突然、彼女がボーイフレンドと二人で訪ねて来る。
アリアンナが持ってきた写真に映っている笑顔の息子と息子の部屋、
彼等を家族で送ってゆき…新しい生活への始まりへ…

果たして『これ』がきっかけでふっきれるのだろうか?
最初観た時には、そう思った。

だが…何かきっかけがないと人間は立ち直れない。
若くして亡くなった息子の貴重な経験の生き証人!!!
彼らの登場がこの家族に“救い”を生み出してくれたのだ。
彼の生きた人生、家族の知らない息子の幸せだった時間の存在に気づいた時、
家族はやっと自分達の人生を生きる事を思い出したのだ。
家族が不幸になってゆくのを写真の中で微笑むあの息子が喜ぶはずが無いと…。
 
どうやら『息子の部屋』“la stanza del figlio”というタイトルと、
特に日本公開時の
生きているときは、開けてはいけないドアでした。
というキャッチコピーが
この映画の内容と違ったイメージを感じさせてしまっていたようだ。
 
 
息子の部屋
ナンニ・モレッティ ラウラ・モランテ ジャスミン・トリンカ  
ニコラ・ピオバーニ
B0000D8RO5

息子の部屋 — オリジナル・サウンドトラック
サントラ
B00005S7CQ

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October 25, 2005

「ゾンビ 米国劇場公開版」

[DVD映画]★★★☆☆

青塗りゾンビが、ゆら〜ゆら〜と押し寄せて来るのがイヤだった。
それに対抗する人間のあさましい姿…。
特別感情移入は出来なかったが、
とても重いテーマが含まれているように思える。

監督・脚本はジョージ・A・ロメロ。これは所謂“ロメロ版”らしい。
原題「Down of the Dead」。
製作はクラウディオ・アルジェントとアルフレッド・クオモ。
ディレクターズ・カット版やら、イタリア版やらと
数あるバージョンの中で、これは1978年製作の「ゾンビ 米国劇場公開版」。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

いきなり死者が甦り生きた人間の温かい肉を食らう、
そして噛まれた人も死にまたゾンビと化す…この原因不明の事態に、
合衆国は、テレビ局は、パニックに。
誰かのせいにしないと、安心出来ない彼等は、
不毛な殺しあいを始める…。

テレビ局からヘリで脱出したスティーブン(デイヴィッド・エンゲ)、
ステファンの彼女のフラン(ゲイレン・ロス)、
SWAT部隊のロジャー(スコット・H・ラインガー)とピーター(ケン・フォーレ)
の4人は街から離れて郊外へ…
だが、そこにもゾンビたちがのろのろと歩き、スキあらば襲って来る。
彼等を再び殺すには、頭を破壊するしかない。
燃料補給と食料補充のために巨大なショッピングセンターへ着陸し、
そこに立てこもり状況を見守る事にする。
だが生前の習慣からか、日に日にゾンビがショッピングセンターへ集まってくるのだ。
何といっても生活するに困らないこの場所を確保するため
中にいるゾンビをまず全て片付け、入口をトラックで塞ぐ。
その際噛まれた傷が元で、ゾンビとなる仲間…。
そんな所に暴徒と化した生存者のバイカー達が乗り込んできた!!!

ブードゥーの教え、
「地獄が死者であふれた時、地上を死者が歩く」

SWAT部隊のあるメンバーがスラム街で行った無秩序な殺戮を見ていながら、
銃の腕のあるロジャーとピーターのとった行動。
特にロジャーは自意識過剰に彼等を甘くみてしまったのか、
冷静だった彼が、どんどん狂気満ちてゆく。
実に人間的なダメなヤサ男スティーブンの愛情。
女性ならではの甘さと強さ、フランの勇気…。
そして…平静を保とうとするピーターが最後に行おうとしたのは…
わずかながらの可能性に賭けてみる事。

非常にまったりと進む70年代の作品。
ゾンビの頭を楽しそうに撃つ人間。
その人間をガツガツ生々しく食らうゾンビ達…。
もはや利用価値の無い金銭や貴金属を奪う生存者。
ここに描かれるのは世紀末的な虚しさと、人間のモロさ。
そして、狂気と醜さだった。
 
ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE
デビット・エンゲ ジョージ・A・ロメロ ケン・フォーリー
B0002CHNHO

 
なんだか笑えるスピーディーなリメイク版
■映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」レビュー

ゾンビのような“感染者”がスピーディーに駆け回る!
■映画「28日後」レビュー  
 

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September 23, 2004

「ぼくは怖くない」

[DVD映画]★★★★☆

いい『穴』もの見つけました!さすがアルバトロスさん!!
いや〜むちゃくちゃ良かった!
「ぼくは怖くない」

監督ガブリエーレ・サルヴァトーレス。
原作はニコロ・アンマニーティによる同名小説
「ぼくは怖くない」(ハヤカワepi文庫)
2003年のイタリア映画。
タオルミナ映画祭やドナテッロ賞などで数々の映画賞を受賞した作品。
音楽はエツィオ・ボッソ。
クラシカルでミニマルなサウンドがこの映画に深みと優しさと
何とも言えないセツない緊張感を与えている。

真っ暗な穴から始まる。そして、真っ黒なカラス。
一面の金色の麦畑を走る子供達。
これは、何も無い、一見のどかな南イタリアの小さな集落の物語。
カメラは子供達の目線でそれらを写し撮っている。シンプルな画のような世界。
妹マリアが落とした眼鏡を探す
優しい兄ミケーレ(ジュゼッペ・クリスティアーノ)は、
廃屋の近くでトタンに蓋をされた穴を見つける、もう好奇心満々!。
そして、穴の中に彼の黒い瞳に映ったものは…!!
なんと、鎖につながれたキズだらけでボロボロの少年だった。

麦畑を妹を連れて逃げ帰るミケーレ!!。
怖いのだが興味も深まり、誰にも言わない秘密にして、
『彼』フィリッポ(マッティーア・ディ・ピエッロ)の元を度々訪れ、
『子供の自分の可能な限りの範囲』で助けようとする。
それを表現するかのように、
大きな自然と小さな生き物達による対比があらゆる所に出てくる。
例えば、自転車で駆け抜ける子供達の足下にいるハリネズミ、
柵の上のクモ、麦を刈り取る重機の前のカマキリ、
麦畑に倒れるミケーレの瞼の上のアリ、大空に小さく飛ぶトンビ、
クモ、フクロウ、コウモリなど…。

そして、『彼』がなぜ、『穴』の中にいたのか、
ミケーレには思いもかけない両親そして、村人達の秘密があった。
彼等の関わる『ある事件』。
見るからにいたいけで幼い、過酷な現実から逃避している
ミケーレと同じ10才の『彼』。
どんどん親しくなる『彼』とますます怪しい『大人達』。
そして、余りにも無力な『子供』の自分。
ミケーレは葛藤しながら、あくまでも『子供の自分の可能な限りの範囲』で、
正義感をつらぬこうとする。
まだ彼は『純粋』そして、『裏切』や『信頼』を経験し成長しようとしていた。

怒ると怖いマンマ、母親アンナ(アイタナ・サンチェス=ギヨン)は、
純粋なミケーレを心から愛し、父親ビーノ(ディーノ・アップレーシャ)もまた、
乱暴な言動とは裏腹にやはり息子のミケーレを愛している。
でも、ボスのセルジョ(ディエゴ・アバンタントゥオーノ)には逆らえない。
彼等にとっても葛藤はあるのだ。

こうしてまっすぐな少年、ミケーレのとった行動とは!
『彼』の運命は、意外な結末を迎える事になる…
もう、出来過ぎだけれどホロリときます。

ラジオから流れるイタリアンポップス「甘いささやき(パローレ・パローレ)」♪
そしてプッチーニのオペラ「ラ・ボエム」♪も使用され、
ちょっとユルくてノスタルジックな南イタリアの田舎町の雰囲気が出ていて好き。

原題は“IO NON HO PAURA”(直訳のままです。)
それにしても“だるまさんがころんだ”とか“渦巻き蚊取り線香”が
イタリアにもあるのは知らなかった。
こりゃ、南イタリア行かないと!!!
ああ!ミケーレみたいな息子か兄が欲しい…。

ぼくは怖くない
ぼくは怖くない
 

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