7 posts categorized "映画:スペイン"

July 04, 2007

「麦の穂をゆらす風」

[DVD映画]★★★★☆

アイルランド独立戦争を通して描かれるのは
ある意味普遍的な戦争の情景であり普通の人々個々の感情。
だからこそ、人の心に語りかけるのかもしれない。

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「麦の穂をゆらす風」

製作国:イギリス/アイルランド/ドイツ/イタリア/スペイン(2006)
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
音楽:ジョージ・フェントン

デミアン(キリアン・マーフィ)
テディ(ポードリック・ディレーニー)
ダン(リーアム・カニンガム)
シネード(オーラ・フィッツジェラルド)
ペギー(メアリー・オリオーダン)

「麦の穂をゆらす風」オフィシャル・サイト
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戦争、紛争、ゲリラ線…
1920年のアイルランド独立戦争をとおして見えてくるのは
現在も続いている人間の悲しい本能と愛情の深さと脆さ。
これらが庶民の目を通してストレートに描かれるので
どうしようもないもどかしさが心に響く。

アイルランドの片田舎の農家ではじまりそして終わるのだが、
その間に起きた悲惨な出来事の数々…
戦争だから…それだけで片付けてはいけない
重い悲しい何ともいえないもどかしさが胸をしめつける。
1919〜1921年のアイルランド独立戦争を
1920年のある日から、とある兄弟の目線で丹念に描いている。

アイルランドへの英国の侵略に対抗するゲリラ戦。
少しもの寂しいけれど美しい緑の中で銃を構えて訓練する
農民や少年などの若い一般庶民で結成されている
アイルランド義勇軍〜アイルランド共和軍(IRA)達の姿。
犠牲になりながらも彼らを支え家を守り、強く立ち向かう女性達。

一機関士であったダンと出会ったあの事件。
戦争から逃げて医者になるはずだったデミアンが
幼馴染みを裏切り者として処刑したり
元同胞と闘わねばならなくなった経緯は
運命にしても悲しすぎる。
皆で投獄された時、代表者である「テディ・オドノヴァンは誰か?」と
英国軍に問われた時、すかさず「自分だ」と答えたデミアンだったのに…
仲間を裏切る事…真面目なデミアンの苦悩。
兄テディとの意識のずれが、更に弟の運命を変える…

野山の広がるアイルランド南部の町、コークを舞台に
時代に翻弄された兄弟を中心に
淡々と身近なエピソードとしてアイルランド独立戦争が描かれる。
休戦、そして、念願のイギリス・アイルランド条約。
だが、この時の条約による北アイルランドの帰属問題により
その後の革命運動を二分し新たな闘いを生み
さらにその後何十年もの間IRAは
形を変えいくつもの派閥に分裂しながら
現在も組織は存在している…

冒頭で村人達が可哀想なミホールのために歌った
映画のタイトルでもあるアイリッシュトラッドの曲
“THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY”(麦の穂をゆらす風)
これを観終った後に再び歌詞を確認しつつ聴いてみると
自分の腕の中で恋人を失った、若い兵士の詩なのだ。
祖国のための闘い、恋人の死への恨みの闘い…
何ともいえない苦しみが、美しいメロディと共に流れ出る。

アイルランド人もイギリス人も他の国の人達も
個々では誰も闘いたいわけでも裏切りたいわけでもない。
そうしなければしょうがない状況
自分や家族や同胞が守れないから
命を落とした者に顔向けができないから
若い世代の未来が見えないから…なのだ。
この映画には戦争や人間の本質を問われている気がした。

世界中でくり返されている戦争や紛争
そして近年の数多くのテロ事件…
85年も前の事件だが、現在にまだまだ繋がっているのだ。
カンヌでパルムドール賞をとったの
井筒監督大絶賛(笑)もうなずける。
知っているようで知らなかったアイルランドの歴史。
ちなみに役者さん達は皆アイルランドにゆかりのある人達。
キリアン・マーフィーの変化してゆく切ない瞳がとても印象的であった。

B000NIVIPA麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション
キリアン・マーフィー ケン・ローチ ポードリック・ディレーニー
ジェネオン エンタテインメント 2007-04-25

by G-Tools

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February 03, 2006

「欲望の法則」

[DVD映画]★★★★☆

嫉妬に狂うバンデラスのあんな顔やこんな顔に、もうびっくり!
愛と野望ゆえの悲劇を描いたアルモドバルの初期の作品。
数々のタブーに挑戦しながら様々な愛と欲望について描くアルモドバル節は
最初から結末まですでにがっちり詰まっている。

監督・脚本はスペインの奇才ペドロ・アルモドバル
カルメン・マウラが女性っぽすぎるけど(笑)性転換した人物を好演。
映画のラストで予告しているとおり、
昨年公開された「バッド・エデュケーション」の原点ともいえる、
1987年スペイン制作の映画「欲望の法則」。
 

売れっ子映画監督パブロ(エウセビオ・ポンセーラ)は新作も大盛況!
パブロの姉(兄)のティナ(カルメン・マウラ)は男嫌いで、
友人の娘アダ(マヌエラ・ベラスコ)を引き取り一緒に暮らしていた。
このティナを主役にした次の映画を現在パブロは企画し脚本を書き進めている。
内容は明かしていないがパブロの意欲は満々だ。

だが、パブロは美青年の恋人ファン(ミゲル・モリーナ)とは
愛しあいつつもいまひとつ馴れ合いすぎて冷めた状態。
ファンが休暇で帰郷し、しばらく距離を置くことになって
はじめて彼への愛へ気づくき、彼のスクーターにキスをしたり、
あげくの果てには自分宛の手紙をファンに送って、
それを返信してもらい読んでいる始末…。

そんな寂しいパブロの前に、少し前から気になっていた
好みの黒髪の美青年アントニオ(アントニオ・バンデラス)が現われた。
積極的な彼とフラフラと一夜を過ごしてしまったのだが…
パブロの崇拝者であり俳優にも興味のあったアントニオは
女性が主人公だという次回作を意欲的に書くパブロの姿、
せっせとファンに手紙を送るパブロの行動、
色々身の回りにも尽くそうとする自分に冷たいパブロの態度、
そんなパブロの愛するファンに嫉妬の念が強まるばかりだった…。

* * * * * * * * * * * * * * * *

冒頭の映画のシーンからゲイ・ワールドが炸裂!
こちらの方がドロドロした問題作だろう。
全ては愛と欲望によって行われる人間関係と悲劇を描く。
様々な愛と禁断のテーマ、鮮明な赤い色、印象的な劇中劇と音楽、
熱い視線と好奇心…そして母性。
濃厚なアルモドバル色も既に出来上がっている。

そもそも罪なのは監督パブロ。
距離を置く事に決めたけれど、恋しさが募るならすぐ追いかけようよ!
忘れられない恋人がいるにも関わらず、
寂しいからと自分に憧れる未経験な青年と一夜を過ごしてしまうから…
そりゃ、逆恨みされるだろうと気づこうよ!!
そしてそんな相手とは綺麗に別れようよ!!!
しかも兄弟の秘密を暴露するような映画は、
書きはじめる前にちゃんと断ろうよ!!!!!
恋は盲目といえど彼の甘い考えで、
悲劇の傷が大きくなってしまった…。

厳格な家庭で育ったおぼっちゃまのアントニオは、
面子を保ちつつも自分の思い通りにしなければ気が済まない。
パブロの元恋人で今も愛されているファンにどんどん嫉妬が加熱。
パブロと同じ柄のシャツを求めてしまうアントニオ。
ファンのように手紙が欲しいアントニオ。
どうしても彼らと同じ事がしたいのだ。
そんな幼稚さがあるアントニオのために
可哀想なファンはこの三角関係の犠牲となった。
そして自分の犯した罪を隠すため、
追い詰められたアントニオの稚拙な行動は、
最後の最後まで欲望に忠実なのである。

ティナとバブロの兄弟、そして母親よりもティナになついているアダ、
この3人の関係には絶対的な思いやりが溢れていていい。
過去に愛した二人の男性については、怨みよりも愛のほうが深いのか、
ティナは彼らに対する陰口は決して言わない。
余計な詮索をあまりしない弟パブロの事も、肉親として最も信頼し愛している。
過去の経験から男嫌いのティナは複雑な心境だろうが、アダに対しては
自分の理想の母親像を憎まれ口をたたきながらも嬉しそうに演じている。
だからアダも素敵な大人の女性?ティナに憧れており、彼女の事がお気に入り。
もちろんティナの弟のパブロの事も父親になって欲しいくらい大好き!
この3人は、はたから見ても普通の“家族”。
ところが、交通事故でパブロが記憶喪失になっている間に、
その“家族”に入り込んだ男がまさかのあの男!!!
しかも目的はパブロの愛を得るため。
それを知った時のパブロのショックは尋常では無かったであろう。
極限状態でのベッドでパブロとアントニオは何を考えていたのだろうか。
アントニオはきっとそうするしか無かったのだろうけれど…。

誰もが愛によって人生を狂わせてゆくのかもしれない。
それは良い方にも悪い方にもちょっとしたきっかけで急転回する。
欲望に身を任せすぎてもいけないし、押し殺しすぎてもいけない。
そのタイミングと人物を見極めないと悲劇が起きかねないのだ。

ラストに同じようなテーマの作品が制作される事が予告されている。
きっと監督は各キャラクターについてまだまだ描き足りなかったのではと思う。
幼児体験の影響や恋に堕ちる瞬間、そして犯罪に手を染めてしまう過程…。
「バッド・エデュケーション」ではこのあたりを含めて
見事にサスペンス・タッチで描かれていたので、観比べてみても面白いかも!

ペドロ・アルモドバル・セレクション DVD-BOX
ペドロ・アルモドバル
B0007KT1EE

現在単品では入手出来ない「欲望の法則」(1987年)と
「ライブ・フレッシュ」(1997年)の2本セット。
特典映像は無いがそれぞれにモノクロの解説ブック付。

■ 映画「バッド・エデュケーション」のレビュー
■ ペドロ・アルモドバル監督カテゴリー
■ ペドロ・アルモドバル監督の作品紹介はこちら

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January 11, 2006

「バッド・エデュケーション」

[DVD映画]★★★★★

欲望と情熱と好奇心。ゲイの愛、絶対的な母性に対する憧れ。
監督の描く愛の形の根源がここに描かれているのかも…。

ペドロ・アルモドバル監督による
ゲイとゲイでは無い全ての人に捧げられたこの物語。
派手で大胆な色彩と美しい構図、描かれるのは生々しい人間の欲望と愛。
感想は賛否両論、男同士の絡みが苦手な方には勧められないが、
ちょっとしたサスペンス仕立てにより素直に楽しめた。
アルモドバル節は円熟しながらも健在だ。
2004年制作のスペインの作品「バッド・エデュケーション」。
原題は「LA MALA EDUCACION」。
 
1980年、マドリード。
映画の元ネタを収集している新進気鋭の映画監督エンリケの事務所に、
神学校寄宿舎時代の親友イグナシオと名乗る
役者志望の髭面の青年が売り込みにやってくる。
彼は自分の書いた映画の脚本を読んで欲しい、
そしてエンリケの映画に出演させてくれと言うのだが、
エンリケは少年時代と変わってしまった彼の風貌や、
イグナシオではなくアンヘルと呼んでくれという彼の言動に戸惑いつつも
ぐいぐいその脚本に惹きつけられていく。
何故ならそこに彼らの寄宿舎での少年時代の秘密が描かれていたのだ…。
初恋のイグナシオ、彼の脚本「訪れ」にも関心を抱いたエンリケは
この「訪れ」を映画化する事を決意した。
そして、制作が始まったのだが…
エンリケはイグナシオについての隠された真実を知ってしまう…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

購入していたDVDをやっと観ました。
やはり…巨匠!大好きですっ!!
 
とにかく熱い視線!!
登場人物それぞれの熱っぽい視線がたまらない。
・突然現れた同級生だという美しい青年イグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)を
 好奇心と共になめまわすように見る映画監督エンリケ(フェレ・マルティネス)。
・その監督に対するこれまた熱っぽい青年イグナシオの情熱的な視線。
・天使の歌声の少年イグナシオ(ナチョ・ペレス)を
 涙を流さんばかりに見つめる若いマノロ神父(ダニエル・ヒメネス・カチョ)。
・その初恋?のイグナシオにちらちら目線を配る
 同級生の少年エンリケ(ラウル・ガルシア・フォルネイロ)。
・劇中で登場するサハラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)の同僚
 ゲイの歌手パキート(ハビエル・カマラ)の男性を品定めする目。
・ベレングエル編集長(ルイス・オマール)のアンヘルを見つめる愛に狂える視線。
などなど…
男達の視線はなんと情熱的かつ欲望的なのだろう!!!
そしてその情熱と尽きる事の無い欲望は年月を経て数々の悲劇を生むのだ。
 
これらとは逆に遠巻きながら包み込むような女性達のあたたかい想いと眼差し。
絶対的な愛情をもって息子を信頼する、笑顔を絶やさないイグナシオの母と叔母。
目立たずさりげなく世話を焼く、若いメイクの女性(レオノール・ワトリング)。
彼女達が今回登場が少ないながら妙に印象的であった。
ここにはアルモドバル監督の母性に対する憧れや、
ある種のマザー・コンプレックスなどが表現されているのかも。

サハラを演じるガエル君の美しい女装、イグナシオとして見せる初々しい裸体…
反して、彼の中で渦まく欲望を見せる小悪魔的な表情の変化。
エンリケを演じる情熱家ながら繊細で冷静な部分も持つ、
フェレ・マルティネスの不思議な存在感。

エンリケの劇中映画「訪れ」のシーンを回想に使用し、
隠された真実をラストに向かってどんどん解明してゆく、
ちょっとしたミステリー的な展開もこの上なく上手い。
禁断の愛にふりまわされる様々な男達の欲情と欲望。
くり返し語られる新聞記事のネタ、ワニに食べられて死んだ女性の記事。
好奇心と欲望に勝てずに破滅に向かうと判っていながら
愛というものにふりまわされ続ける、そんな不器用な人間達が好きでたまらない監督。
鮮やかな色彩と共に、常に“様々な愛”について描き続ける
アルモドバル監督の情熱と好奇心の根源にふれた気がする、
生々しく美しいゲイ達の愛憎劇を描いた秀作だ。

[特典映像]
・ペドロ・アルモドバル音声コメンタリー
・削除シーン
・メイキング
・フェレ・マルチネス来日インタビュー
・オリジナル/日本版予告編
・ポスター・ギャラリー
・ジャンポール・ゴルチエ衣裳デザインギャラリー
 
バッド・エデュケーション
フェレ・マルチネス ペドロ・アルモドバル ガエル・ガルシア・ベルナル
B000BH4C42

オール・アバウト・アルモドバル BOX
フェレ・マルチネス ペドロ・アルモドバル ガエル・ガルシア・ベルナル
B000BHHYIS
特典映像が全てに付いているのでこれを購入。
「オール・アバウト・マイ・マザー」と「トーク・トゥ・ハー」そして
「バッド・エデュケーション」の3本入りのボックス。
3面デジパックのなかなかオシャレで豪華なパッケージ。
簡単な監督コメント・カード入り。 
 
バッド・エデュケーション ヴィレッジブックス
バッド・エデュケーション
ペドロ アルモドバル Pedro Almod´ovar 佐野 晶
4789725170

「バッド・エデュケーション」オリジナル・サウンドトラック
サントラ サラ・モンティエル ヴィヴァルディ・イプシ・カタルーニャ少年合唱団
B0007OE5F0

 
■ 映画「オール・アバウト・マイ・マザー」のレビュー
■ 映画「トーク・トゥ・ハー」のレビュー

■ ペドロ・アルモドバル監督の作品紹介はこちら
 

「バッド・エデュケーション」オフィシャル・サイト
 

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November 03, 2005

「マシニスト」

[DVD映画]★★★☆☆

あのイラストはドアじゃなくてハングマンゲーム…。
クリスチャン・ベイルの役者根性を観る価値は大!

こんな作品だったとは…予告編にまた騙された!
『366日目からの未体験ムービー』って…何だそりゃ?。
だが、クリスチャン・ベイルの30キロ減量という役者魂は必見。
彼のあの“歩く骸骨”の身体、ポカンとした虚ろな表情無くしては
この映画は成立しなかっただろう!

監督は ブラッド・アンダーソン、脚本は スコット・コーサー
アメリカの出資だが製作はスペインのザ・カステラス・プロダクション。
撮影は全てバルセロナで行われのでスタッフも
プロデューサーがフィルマックス会長のフリオ・フェルナンデス、
撮影は シャビ・ヒメネス、音楽ロケ・バニョス、
その他大勢のスペインのスタッフが活躍している。
なんとバルセロナでL.A.を舞台にした撮影をしていたのだ!
ぼくは怖くない」の怖い母さんアイタナ・サンチェス=ギヨンもキュートに登場。
その他ジョン・シャリアン、マイケル・アイアンサイドもなかなか安心感のある怪演。
物語の謎は伏線となってあちこちにちりばめられている…。
不眠症の男と共に謎を解き明かすまで眠れない映画「マシニスト」?
 
 
いきなり衝撃的なシーンから…。
どうやらす巻きにした死体を海に投げ捨てている主人公らしき男。
そこへ現れる懐中電灯を持つ男が…???
ブリーチ剤で手を洗い鏡に映るメモに書かれた言葉は
“WHO ARE YOU?”

バスルームの床の漂白にすら気を使う、
体重やすべき事などは忘れないように黄色の付箋紙にメモして冷蔵庫に張り付ける、
極めて神経質な機械工=マシニストのトレバー(クリスチャン・ベイル)は、
この一年間眠れずにいる。
痩せこけた身体だが日々勤め先の工場へ通っている。
しかもそんな身体ですら彼がひいきにしている
娼婦スティービー(ジェニファー・ジェイソン・リー)の所、
笑顔に癒されるウェイトレスのマリア(アイタナ・サンチェス=ギヨン)と
会話するのを楽しみに空港のカフェへコーヒーを飲みに行く事も欠かさない。

だが、自宅の冷蔵庫に見覚えの無いメモが。
“ハングマンゲーム”
(首吊り人形の絵が完成する前に隠された単語のスペルを当てるゲーム)
の最初の部分のようで、末尾の2文字が“ER”。
何だこれは?と捨ててしまったトレバーだったが、
工場で出会ったアイバン(ジョン・シャリアン)という謎の男の登場により、
同僚のミラー(マイケル・アイアンサイド)や、
彼自身にも不可解な事件が起きはじめた…。
日に日に増す怪事件により精神的にも社会的にも追い詰められてゆくトレバー。
彼の眠れない理由とは?
そして、彼は安眠する事ができるのか…???

以下結末は書きませんが若干ネタバレ有り。
これから観る方はこの先を読まない事をお勧めします

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
 
ぎょっとするシーンも多いが
一年間眠れない眠れない原因を主人公と共に
視聴者も謎解きに参加しながら進むいたってシンプルな作品。
現実と虚構が同等に交錯する描写の増えた昨今では、
特に目新しい手法ではないので途中ちょっと混乱するけれど、
勘の良い人はすぐこの仕掛けに気づくかも。

・ハングマンゲーム
・ブリーチ剤
・車のライター
・とんがりブーツ
・1:30
・母
・ルート66
・天国と地獄
・743CRN

そして…「ソウ」同様のタイトル「マシニスト」。
彼は母親想いで神経質で生真面目な機械工。
不眠症は彼の性格によるものであったのであろう。
父親のいないマリアの息子のニコラスと自分を重ねているがゆえに…。

ラスト近くで出てくる元の姿のクリスチャン・ベイルのほうが驚き!
まるで別人ではないか!!
体力の限界で行われた演技による、極限状態のリアルさ。
暗く汚れた地下道をヨロヨロ走る姿、
骨の浮き出た身体でのベッドシーンは印象的だった。
そして、全編に渡る独特の色調…特に空の色と青白い蛍光灯の部屋、
ヒッチコックを思わせる、テルミンを使用した不思議な音楽と、
何もかも怪しく思える、奇妙な緊迫感。
ストーリーはともかく雰囲気はなかなか味わえる。

ちなみに長く眠らないでいると、幻覚や妄想に悩まされるそう。
夢によって記憶が整理されているというし、
睡眠というのは身体にも脳にとっても大切なのだ。 
 
[特典映像]
・30分のメイキングがなかなか面白い!
 (真夏のスペインでのロケや製作秘話が満載)
・未公開シーン
 (たしかにネタバレになるので不必要なシーンだった。
   映画がよく分からなかった方は観ると良いかも)

マシニスト
クリスチャン・ベール ブラッド・アンダーソン ジェニファー・ジェイソン・リー
B000A2I7L2

ノベライズ
マシニスト
Scott Kosar 入間 真
4812419336

 
「マシニスト」オフィシャルサイト
 

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February 07, 2005

「トーク・トゥ・ハー」

[DVD映画]★★★★★

男達の一方的な報われぬ愛と目を閉じた無言の女達の愛。

スペインの奇才「神経衰弱ぎりぎりの女たち
オール・アバウト・マイ・マザー」などのペドロ・アルモドバル監督・脚本による、
二人の昏睡状態の女性とそれぞれを愛する二人の男性を描くヒューマン・ドラマ。
あらゆる要素を含むアルモドバル監督の真骨頂ともいえる「トーク・トゥ・ハー」。
あまりにも美しく繊細な映像と音楽と絶望的な設定に圧倒されながら、
登場人物の織り成す人間模様に心が動かされずにいられない。
2002年度アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した作品。

不思議なダンスの舞台。
盲目の女とそれを助ける男。そして壁に当たっては嘆く同じく盲目の老女…。
そして、この舞台を観ている二人の男。
一人は淡々と周りを観察し、もう一人は感激して泣いている。
この象徴的な場面がこの先にある物語を暗示する。

病室のベッドで植物状態にある少女アリシア(レオノール・ワトリング)は、
この4年間、看護士のベニグノ(ハビエル・カマラ)の妄信的な看護を受けていた。
その完璧なまでの甲斐甲斐しさ。
母親の看護で身に着けたという技術。
爪をとぎ、髪を整え、化粧をし、マッサージし、着替えをさせ、体を洗う…。
その作業をアリシアを愛しく見つめながらも淡々こなす。
そして、今日あった事などを一心に彼女に語り続けるのだ。

一方、劇場で泣いていた男マルコ(ダリオ・グランディネッティ)が恋している
女闘牛士リディア(ロサリオ・フローレス)も、
競技中の事故によって昏睡状態で入院する事になる。
絶望に困惑していたマルコは、ベニグノとの出会いによって、
リディアの看護をするようになり、二人に友情が生まれていく…。

この作品の主人公達は孤独だ。
人間の孤独感が生み出すもの…それは愛情であり、友情であり、同情であり、
そして…
ベニグノの献身的な看護には、ある種の異常さがあった。
彼は言う「人生の中で最も充実した4年間だった」
窓から見ていた憧れの少女とずっと一緒に過ごしている4年間。
一方的な愛だから喧嘩もしない。だから仲が良いのだと…。
マルコは言う「僕はその正反対だ」
そして、マルコは愛しいリディアが昏睡状態になる前にすら、
恋人だと思っていた、彼女の心は彼へは向いていなかった事実を知る。

ベニグノの愛ゆえの行動。
サイレント・フィルム「縮みゆく恋人」に触発されて行った行為。
それによってアリシアは目覚めたのかもしれないが、決して許さる行為では無い。
それが理解出来ないベニグノはもはや狂気の世界の住人に近い。
あくまでも一方的な愛。愛される事を知らないベニグノ。
もう少し相手の立場になれたなら、
実際に愛しあう事が出来たかもしれないのに…。

一見人間は何を考えているか、他人には全く解らない。
正しい、間違いの尺度も人それぞれ。
心に“闇”のある人間は得てしてそれを表に出さない。
心に“病み”のある人間は、自覚が無いがゆえに、
それが優しさや生真面目さにも見える。
心が止まった植物状態の人間でも、生きているのだから何かを感じてはいるはず。
彼等は何がきっかけで目覚めるか解らないし、
そのまま目覚めないのかもしれない。
看護する者の期待と不安、そして焦り…。

夢見るおしゃべりなベニグノのこんなにも深い愛情
         —————でもそれは犯罪と背中合わせ。
現実的で無口なマルコの愛は広い不器用な愛情
         —————報われないけれど未来のある愛。

この映画はまた舞台で終わる。
今度は男達の手によって運ばれる歌う女…。
ラスト・カットでベニグノの愛は意外にも報われたと知る事になる。
内向的でストーカーまがいのマザ・コン男の余りにもセツない恋愛の結末だけれど、
意外と彼にとっては最悪では無かったのかもしれない。
彼がいなければアリシアの未来も無かったのだ。
そして、泣く男マルコにもほんの少しの希望を残した…。
内向的な変態さんの純愛をここまで美しく深く描いた監督はあっぱれ!

とにかくアルモドバル監督のこだわりが細部にまで効いていた。
ドイツの振付家ピナ・バウシュの『カフェ・ミュラー』の舞台
サイレント・フィルム、看護師の手際の良い仕事、昏睡状態の人間の表現 etc……。
あらゆる要素やモチーフは必然性があるがゆえ存在し、
巨大なタペストリーに細密に描かれた絵のように完成されている、そんな作品。
変態アルモドバル監督の完成度の極めて高い傑作に拍手!!!

 

映像特典の監督・キャストのインタビューや
封入特典のムック本はなかなか参考に。
前知識無しで一度目、特典を観て二度目、観る目が変わって楽しめる。

[DVD映像特典]
 本編ディスク
 ●予告編集
 ●フォトギャラリー
 ●スタッフ&キャスト解説
 特典ディスク
 ●メイキング
 ●ペドロ・アルモドバル監督インタビュー
 ●インタビュー (スタッフ&キャスト)
 ●レオノール・ワトリング、来日インタビュー

[封入特典]
 ●豪華ムック本「オール・アバウト“トーク・トゥ・ハー”」

トーク・トゥ・ハー リミテッド・エディション
レオノール・ワトリング ペドロ・アルモドバル ハビエル・カマラ

by G-Tools

トーク・トゥ・ハー スタンダード・エディション
レオノール・ワトリング ペドロ・アルモドバル ハビエル・カマラ

トーク・トゥ・ハー
ペドロ アルモドバル Pedro Almod´ovar 百瀬 しのぶ

トーク・トゥ・ハー オリジナルサウンドトラック
サントラ

トーク・トゥ・ハー
〜イマジネイション コンパイルド・バイ・ペドロ・アルモドバル

映画主題歌
シャーリー・ホーン ジミー・スコット ゴールドフラップ

 
■ 映画「オール・アバウト・マイ・マザー」のレビュー
■ ペドロ・アルモドバル監督の作品紹介はこちら
■ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 来日20周年記念講演
「カフェ・ミュラー」「春の祭典」のレビュー

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November 22, 2004

「死ぬまでにしたい10のこと」

[DVD映画]★★★★★

悲しくは無いのに、涙が止まらない映画だった。
若くして死を宣告された若い女性が、残りの人生を悔いなく生きるために
リストを作って一つずつクリアしてゆくというヒューマン・ドラマ。
監督・脚本は「あなたに言えなかったこと」のイザベル・コヘット
製作総指揮はスペインの変態監督ペドロ・アルモドバル
2002年スペイン=カナダの作品「死ぬまでにしたい10のこと」。

23歳のアン(サラ・ポーリー)は、夫のドン(スコット・スピードマン)と、
二人の幼い娘と共に清掃の仕事をしながらトレーラーハウスで暮らしている。
ある日、突然の腹痛に倒れたアンは、癌で余命2〜3ヵ月と宣告された!
アンはドンと母(デボラ・ハリー)には貧血だと癌とは言わない。
彼女は、真夜中のカフェで『死ぬまでにしたいこと10項目』のリストを作り、
それを翌日から実行してゆく…。

若いアンならではのリストの内容。
誰がそれを責められようか。
家族には誰にも真実を伝えることなく、
ショックが少ないように自分が存在しなくなったあとの生活の
レールを少しずつしいてゆくアン。
家族と思い出を作るためにビーチへ。
刑務所にいる父(アルフレッド・モリーナ)と会い、
子供達に新しい母親を探し、
カセットテープに家族へのメッセージを吹き込む彼女。
それとは別に、
コーヒーショップにいた男リー(マーク・ラファロ)との横恋慕を望むアン。
“夫と別の男と寝てみる”のは、リーには悪いけれど、
唯一の彼女の不安心の逃げ道だったのではないか。

隣に引っ越してきた同じ名前のアン(レオノール・ワトリング)というのは
ちょっと出来すぎだが、自分にこんな行動が出来るとは思わない。
愛する家族を託す…少し安心かもしれないが、あまりにも寂しい決断だ。
“My Life Without Me”という原題が心に染みる。

癌という病気はこんな綺麗事で済まないと思う。
だが、彼女と同じように他人には知らせず若くして逝ってしまっう知人もいた。
毎年癌検査を必要としている身としては他人事と思えず涙が止まらない…。

毎日何気なく生かせてもらっているが、
たまには生や健康の有り難さを感じることが大事だと、
改めて教えてくれる映画であり、
日々、精一杯、大切に生きようと思った。

死ぬまでにしたい10のこと
死ぬまでにしたい10のこと
 
 
原作本


「原作」死ぬまでにしたい10のこと
 —初めて人生を愛することを知った女性の感動の物語

ナンシー キンケイド Nanci Kincaid 和田 まゆ子
 
ヴィレッジブック


死ぬまでにしたい10のこと
斎藤 薫 しまお まほ 酒井 順子 角田 光代 八塩 圭子 室井 佑月
 

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August 27, 2004

「オール・アバウト・マイ・マザー」

[DVD映画]★★★★★

何度観てもなぜか涙がこぼれる映画。
「オール・アバウト・マイ・マザー」

スペインの変態巨匠ペドロ・アルモドバル
監督によるヒューマン・ストーリー。
1999年の作品。音楽は「愛よりも非情」のアルベルト・イグレシア。

17年前に別れた夫に関して息子から問われた
移植コーディネーターの母マヌエラ(セシリア・ロス)は、
長い間隠していた夫の秘密を話そうと覚悟を決めた矢先、
最愛の息子エステバンを事故で失ってしまう。
息子との約束を果たすため?元夫に息子の事を伝えるために、
バルセロナへ向かうマヌエラ。
その夫とは乳房のある父親であった…。

偉大なる母の『愛』、性別を越えた『愛』、奔放な『愛』の結果は厳しい現実…。

まっすぐで美しく夢を持つ青年エステバン、
『欲望という名の電車』を演じるマヌエラ、
(この映画では)異常に可愛い妊娠した修道女役のぺネロぺ・クルス。
乳房のある夫…。
その他、ひとクセもふたクセもある登場人物はアルモドバル監督ならでは。
人によっては不愉快なエピソードも多いが、
マヌエラの『愛情』の深さ、強さに何度も感動してしまうのだ…。

ペドロ・アルモドバルの作品の中では、かなりお気に入りの1本。

オール・アバウト・マイ・マザー
オール・アバウト・マイ・マザー
 
 
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