「スラム砦の伝説」
[DVD映画]★★★★☆
自ら自分を“埋める”美しい青年…。
そして、美しく完璧な構図と意味ありげなモチーフ!!
これは天才監督セルゲイ・パラジャーノフの祖国愛と
その悲しい歴史を語った詩的映像パノラマである「スラム砦の伝説」。
女占い師の予言により、砦を守るため生きたまま砦に埋め込められた
グルジアの“人柱”の伝説をベースに作られた、
セルゲイ・パラジャーノフとドド・アバシッゼの共同監督による
1984年のグルジアの作品。
脚本はヴァッジャ・ギガシヴィリ。
撮影はユーリー・クリメンコ、音楽をジャンスク・カヒッゼ。
ペレストロイカによってパラジャーノフにとって初めての
公式プレミア上映が1985年のモスクワで行われた。
中世グルジア。皇帝は祖国を護る砦の建設が盛んに行っていた。
だがトビリシの南門のスラム砦だけは、
何度建造してもすぐに崩れてしまうのだった…。
奴隷であった青年、ドゥルミシハンには、ヴァルドーという美しい恋人がいた。
しかし、奴隷から解放されると公爵に騙されたことを知り、
ドゥルミシハンは全て、恋人さえもを捨てて、放浪の旅へ。
そこで彼は隊商を率いるオスマン・アガ=ザリカシヴィリと出会う。
彼の現在に至るまでの過去と罪、その懴悔を聞かされ、
オスマン・アガの隊に加わり片腕となるドゥルミシハン。
そして、自分も改宗し結婚して子供をもうけた。
恋人に捨てられたヴァルドーは嘆き哀しみ、ドゥルミシハンを追い求め、
ついにある老女の占い師のもとへ。
そこで、ドゥルミシハンの現在を知り、世を捨て老占い師の跡を継いだのであった。
そこへあろうことか、ドゥルミシハンの妻が、
生まれる子供の性別を占いにやって来る。
動揺を押えながらも、ヴァルドーは男子であると予言した。
これが、ズラプである。
時がたち、スラム砦再建のために、皇帝はヴァルドーに占いを依頼。
占いの結果は“背が高く青い眼の美しい若者の人柱を砦の壁に埋めろ”というもの。
ズラプはまさにこの条件に一致していたのだ…。
とにかく音声に2つの言葉が重なり聴き取りづらい!!
初めて知ったのだが、ロシアでは通例として民族共和国映画を劇場公開するさい、
役者のセリフ(地方言語)にロシア語をボイス・オーバーし、
映像解説をかぶせるのだ。
更に、字幕も読む事になるのだから、入り込むのに多少の時間を要する。
だが、一度入り込むと…何とセツなくも残酷な物語なのだろう!
中世のグルジアの身分差別と多民族ゆえの宗教問題。
エキゾチックな隊商、きらめくイスラム文化。
サフランの美しい黄色、ざくろの鮮烈な赤、グルジアの地方文化。
綱渡りの芸人、港での手旗信号、海を表す青い布。
そして…寒々しい砦。
祖国のために運命を受け入れ自らを“埋める”青い目の美しい若者。
それを悲しげに見つめる白馬、母の嘆きとそれを讃える兵士達。
悲しい運命に翻弄される者達の物語と
パラジャーノフの美しい詩的・絵画的な世界が見事に融合され、
まるで、この伝説のパノラマ絵巻を観ているようだ。
日本でも橋などをかけるさいに行っていた“人柱”。
なんと悲しい風習なのか…。
[映像特典]
・貴重なセルゲイ・パラジャーノフ夫人のインタビュー(約27分)
・主演女優:ヴェリコ・アンジャパリッゼのドキュメントフィルム(約9分)
・グルジア遺産 ドキュメントフィルム(約6分)
・スタッフ・キャストのフィルモグラフィ
・トレーラー「アシク・ケリブ」「ざんげ」「ヴェリー地区のメロディー」
・フォトアルバム
なんと今度はパラジャーノフ夫人のトーク!!!
恋愛ストーリーや夫としてのパラジャーノフ。
そして、投獄へのウラ話について、これまたロングに語ってくれます。
ブレジネフ書記長がパラジャーノフの事を知らなかったので、
就任時に恩赦というのも知らなかった…。
想像以上にエキセントリックで生涯大勢の人を魅了し、
多くの人々に囲まれ生きた芸術家パラジャーノフ、
の未知なる部分を知る事が出来た。
実は観るのに時間がかかったが、満足出来るDVDである。
先日の「アシク・ケリブ」といい、ロシア映画評議会〈RUSCICO〉さすが!!
書籍
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セルゲイ・パラジャーノフ
パトリック カザルス Patrick Cazals 永田 靖 永田 共子
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