「カリフォルニア物語」吉田秋生
[コミック]★★★★★
夢のカリフォルニア…
そこで傷付きN.Y.へ来た青年ヒース。
N.Y.で生まれ貧しく過酷な環境で育ち、
カリフォルニアに憧れる少年イーヴ。
彼等のN.Y.での不思議な共同生活。
同じ建物で暮らす仲間達、友人、知人、恋人、そして…
かけがえのない家族、家族同然の人。
あまりにもセツない過酷な現実に愕然とした。
涙が止めどなく溢れてくる。
随分昔に1巻目を本屋でパラパラめくった。
そこには、現在の吉田秋生氏の絵とは違った、
やや少女漫画チックなキャラクタ−達が居た。
マラソン・ランナーで、カリフォルニア裕福な家庭で育った、
だが、どこか傷付き恐れを含むトゲトゲしさのあるヒース。
一方、N.Y.っ子で天真爛漫な美少年イーヴ。
どうも…それ以上読み進める気が無くなった記憶がある。
それから20年近く経た後…
ふと…また文庫本化されているのを見つけて読んでみた。
ああ!なんて事だろう!!
こんな名作を読んでいなかったなんて…!!!
ここには吉田秋生氏の原点とも思える、
多くのものが、ぎっしりつまっていたのだ。
第1巻はまだまだ導入部分。彼等の出合いと
N.Y.での新しい生活が語られているにすぎない。
ヒースが頼ってきた家主のインディアン、
ブッチとスゥエナ兄妹、元恋人のエレイン、同じ家の住人達。
第2巻からヒースの傷、イーヴの不幸な人生、
決して美しくない、様々な人間関係が生々しく描かれ始める。
父親との確執。出来過ぎた良い子の兄テリーと比較される事の苦悩。
憧れの女性、兄の妻スージー。
悪い仲間によるジャンキーへの転落、そして…再生。
この巻の変化が目覚ましい。
後半になると絵柄も内容も現在のタッチに急激に近づき
最初と最後で人物の顔やスタイルがかなり違う所が面白い。
第3巻。突然の兄の死でヒースは故郷へ帰る。
少しずつ変化していたカリフォルニア。
同性を想う肉体関係を含まぬ、深く無条件な愛情。
知らなかった母や家族…兄の本当の思い。
トラウマや青春の過ちからの復活。
第4巻でもはや吉田秋生ワールドは出来上がる。
異性同士の決して結ばれる事の無かった恋の結末はあまりにも残酷であった。
様々な愛の形、更に追い討ちをかける度重なる不幸な現実、
そして…それらを乗り越えた後に残る優しさと静けさ。
「BANANA FISH」を彷佛させるハード・ボイルド&ミステリーな展開にも驚いた。
頭の薄いちょっとおデブなチョビヒゲおやじ、市警のジェンキンズと、
すっとぼけた部下チャーリー、同性愛者のリロイやアレックスが大活躍!!!
極めて人間的な人物像。妙にリアルでカラッとしたベッド・シーン。
絶対的な美貌や魅力を持つキャラクターの存在。
性別を超えた深い純愛を育む青春。
そして…冷酷な現実の中にもある一筋の光で、
人間の存在する意味を優しく肯定する。
一見クールなようで、非常にハートフルな、
この吉田秋生ワールドが初の長編で徐々に進化する様が、
驚きと共になかなか興味深い作品である。
尚、第4巻の巻末に収録されている、カリフォルニア物語〈番外編〉「夢の園」。
こちら兄テリーから見た年の離れた、
幼い弟ヒースへの愛情が綴られている。
弟が兄を失うまで忘れていた、幼い日々…。
年齢差のある兄弟姉妹の関係とは…こんなものかもしれない。
彼等の行く末を知っているだけに、目頭が熱くなった。
カリフォルニア物語 (1)
吉田 秋生













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