3 posts categorized "漫画家:吉田秋生"

July 02, 2005

「カリフォルニア物語」吉田秋生

[コミック]★★★★★

夢のカリフォルニア…
そこで傷付きN.Y.へ来た青年ヒース。
N.Y.で生まれ貧しく過酷な環境で育ち、
カリフォルニアに憧れる少年イーヴ。

彼等のN.Y.での不思議な共同生活。
同じ建物で暮らす仲間達、友人、知人、恋人、そして…
かけがえのない家族、家族同然の人。
あまりにもセツない過酷な現実に愕然とした。
涙が止めどなく溢れてくる。


随分昔に1巻目を本屋でパラパラめくった。
そこには、現在の吉田秋生氏の絵とは違った、
やや少女漫画チックなキャラクタ−達が居た。
マラソン・ランナーで、カリフォルニア裕福な家庭で育った、
だが、どこか傷付き恐れを含むトゲトゲしさのあるヒース。
一方、N.Y.っ子で天真爛漫な美少年イーヴ。
どうも…それ以上読み進める気が無くなった記憶がある。

それから20年近く経た後…
ふと…また文庫本化されているのを見つけて読んでみた。
ああ!なんて事だろう!!
こんな名作を読んでいなかったなんて…!!!
ここには吉田秋生氏の原点とも思える、
多くのものが、ぎっしりつまっていたのだ。

第1巻はまだまだ導入部分。彼等の出合いと
N.Y.での新しい生活が語られているにすぎない。
ヒースが頼ってきた家主のインディアン、
ブッチとスゥエナ兄妹、元恋人のエレイン、同じ家の住人達。

第2巻からヒースの傷、イーヴの不幸な人生、
決して美しくない、様々な人間関係が生々しく描かれ始める。
父親との確執。出来過ぎた良い子の兄テリーと比較される事の苦悩。
憧れの女性、兄の妻スージー。
悪い仲間によるジャンキーへの転落、そして…再生。
この巻の変化が目覚ましい。
後半になると絵柄も内容も現在のタッチに急激に近づき
最初と最後で人物の顔やスタイルがかなり違う所が面白い。

第3巻。突然の兄の死でヒースは故郷へ帰る。
少しずつ変化していたカリフォルニア。
同性を想う肉体関係を含まぬ、深く無条件な愛情。
知らなかった母や家族…兄の本当の思い。
トラウマや青春の過ちからの復活。

第4巻でもはや吉田秋生ワールドは出来上がる。
異性同士の決して結ばれる事の無かった恋の結末はあまりにも残酷であった。
様々な愛の形、更に追い討ちをかける度重なる不幸な現実、
そして…それらを乗り越えた後に残る優しさと静けさ。
「BANANA FISH」を彷佛させるハード・ボイルド&ミステリーな展開にも驚いた。
頭の薄いちょっとおデブなチョビヒゲおやじ、市警のジェンキンズと、
すっとぼけた部下チャーリー、同性愛者のリロイやアレックスが大活躍!!!

極めて人間的な人物像。妙にリアルでカラッとしたベッド・シーン。
絶対的な美貌や魅力を持つキャラクターの存在。
性別を超えた深い純愛を育む青春。
そして…冷酷な現実の中にもある一筋の光で、
人間の存在する意味を優しく肯定する。
一見クールなようで、非常にハートフルな、
この吉田秋生ワールドが初の長編で徐々に進化する様が、
驚きと共になかなか興味深い作品である。

尚、第4巻の巻末に収録されている、カリフォルニア物語〈番外編〉「夢の園」
こちら兄テリーから見た年の離れた、
幼い弟ヒースへの愛情が綴られている。
弟が兄を失うまで忘れていた、幼い日々…。
年齢差のある兄弟姉妹の関係とは…こんなものかもしれない。
彼等の行く末を知っているだけに、目頭が熱くなった。
 
 
カリフォルニア物語 (1)
吉田 秋生
4091910017

カリフォルニア物語 (2) カリフォルニア物語 (3) カリフォルニア物語 (4)

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May 27, 2005

「ラヴァーズ・キス」

[DVD映画]★★☆☆☆

あえてこの時代に、この作品を2002年に映画化した事は評価したい。
原作に忠実に描いたそう…たしかにそういう作りになっている。
だが原作を超えることが出来なかった映画「ラヴァーズ・キス」。
及川中監督、「富江」は好きだったのだが…
映像が美しいだけに惜しいなぁ。

正直、平山綾の女優としてのステップアップ作品という印象。
彼女演じる里伽子に比重が大き過ぎた感がある。
そして、ワタシ的にはキャスティングに違和感があった。
里伽子のトラウマや感情を押し殺す性格は、平山綾の素直な演技では引き出せない。
妹依里子の天真爛漫さは宮崎あおいでは少し弱い。
里伽子の親友美樹はマッシュルームカットでポーカーフェイスの
市川実日子では無いだろう。
モデルのようなクールな藤井朋章が、成宮寛貴では可愛い過ぎ。
でも、成宮くんは最初と最後では明らかに表情が違い、
ちょっぴり大人に成長しているトコロがさすがだ。
個人的にイメージ合っていたのが緒方篤志“オオサカ”役の阿部進之介くん。
暑苦しくてうるさい変な大阪弁のおじゃま虫キャラがぴったり。

里伽子と朋章のキスシーンは綺麗だったけど…
じ〜んとくるような感動やセツなさが無い。
「Hした時よりドキドキする」という言葉の後のキスより、
酔ってつぶれた時に朋章の部屋で彼の手を放さない里伽子にちょっとドキッとした。
その他のキスもそう。
そう、どのエピソードもキレイなんだけど、セリフが心に響かない。
高尾ちゃんの眼鏡とタオル!!
重要なエピソードなのに…あれ無しでは彼等の恋愛は語れないではないか!
石垣佑磨くん、眼鏡も似合うと思うのだけど…ダメかしら?。
心中した幽霊達と朋章の母の登場は一度で良かった。

とはいえ、ストーリーはしっかりしているからそれなりの完成度はある。
鎌倉の風景、海の風景は特に美しい。

完成度の高い作品の映画化は難しかっただろう。
だが、原作のアイデアを更に際だたせる何かが無くては
一つの作品として評価できないんだな…と改めて思う。
同じ吉田秋生の原作を映画化した「櫻の園」は
その点、同時間進行という手法によって成功していたが、
その完成度により以後これを越える作品が撮れていないというのも皮肉なものだが…。

原作を読んで、惚れ込んでいるからの感想なので、
まず映画を観るとそれなりにはもちろん楽しめる。
特に、思春期の悩める人には是非ふれて欲しい作品だ。
無理な設定だと思ったら原作を読んで欲しい。
この揺れ動く「好き」という気持ちが少しは理解出来ると思う。

だが、ワタシ的にはもうひとひねり欲しかったなぁ!
う〜ん!残念!!

LOVERS' KISS ラヴァーズ・キス
平山綾 吉田秋生 及川中 後藤法子
B00009PN6L

原作コミック
断然こちらがじ〜んとくる。
ラヴァーズ・キス
吉田 秋生
4091911838

■コミック「ラヴァーズ・キス」レビュー
 

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May 26, 2005

「ラヴァーズ・キス」吉田秋生

[コミック]★★★★★

大好きだよ、のキス。
男女なんて関係無い、軽くふれあうだけの相手を愛しむキス。

久し振りに読んだ。
鎌倉のとある高校での、ある時期の出来事を
登場人物それぞれからの視線を通して交錯させ、オムニバス風に描いた短編集。
この一冊全てを読み終えると…
一つの『ある場所、ある時、ある出来事』を多面的に描いた作品となる。
そして、同じ出来事でもこんな風に色々な面を持ち、
人それぞれ、こんなにも感じ方が違い、
仲が良いほど、近しいほど、知らない事がたくさん有るのだと思い知る。
吉田秋生の作品の中でも完成度の高い作品「ラヴァーズ・キス」。

何故今になって映画化されたのが解った気がする。
随分前の作品だが、全く古臭く無い。
思春期の揺れ動く感情を切り取った、
ある種普遍的な物語でもあるのだ。


姉の恋人
姉の恋人を好きな男
姉の恋人を好きな男を好きな男
姉の恋人を好きな男を好きな男の親友=妹
姉の恋人を好きな男を好きな男の親友=妹の好きな人=姉の親友

川奈里伽子、藤井朋章、鷺沢高尾、緒方篤志、川奈依里子、尾崎美樹、

まるで言葉遊びのように複雑な人間関係。
誰にでも悩みはある。それを感じるか感じないかだけ。
隣の芝生は良く見える。他人の家族が良く見える。
告白出来ない恋もある。
告白出来ない事もある。
知った方が良い事もある。
知らない方が良い事もある。
知っていても知らないふりをする事も大切な事を知る。
そうすると世界は今までと違って見えてくる…。
こうして思春期の若者達は少し大人になってゆくのだ。

人との出会い。出会うタイミング。
『好き』になってしまったら、それはその時の感情だからしょうがない。
『好き』と思う気持ち。相手を愛しむ事。ドキドキする感情。理由なんて無い。
色々な『恋』。色々な形の『愛』。
とても美しくキラキラした幼い頃の『片思い』
そして…綺麗事だけでは済まされない少し歯車の狂った『愛憎劇』

しょーもない青春時代を送って、
いい大人になってしまったワタシにとっても、
忘れていた事を思い出させてくれた、
そして、少しだけ心が広くなったように思えた一冊。

4091911838ラヴァーズ・キス
吉田 秋生

櫻の園 白泉社文庫 吉祥天女 (2) 吉祥天女 (1) 夢みる頃をすぎても カリフォルニア物語 (2)

by G-Tools

DVD映画
LOVERS' KISS ラヴァーズ・キス
平山綾 吉田秋生 及川中 後藤法子
B00009PN6L

 
■映画「ラヴァーズ・キス」レビュー
 

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