47 posts categorized "●ヒューマンドラマ系"

April 24, 2008

「コントロール」

[劇場映画]★★★★☆

数多くのミュージシャンの写真を撮ってきたフォトグラファー
アントン・コービンの映像作品は30年弱前に彼が出会ったバンド
ジョイ・デヴィジョンの亡きヴォーカル、イアン・カーティスの生涯を
1974年〜1980年まで描いた映画。
モノクロームのスクリーンに切り取られた完璧な構図の中に
悩めるバンド青年の姿が狂おしいまでに美しく映し出されていた。

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「コントロール」
原題:CONTROL

製作国:イギリス/アメリカ/オーストラリア/日本(2007)
監督:アントン・コービン
製作:オライアン・ウィリアムズ/アントン・コービン/トッド・エッカート
原案:デボラ・カーティス『タッチング・フロム・ア・ディスタンス イアン・カーティスとジョイ・ディヴィジョン』(蒼氷社刊)
脚本:マット・グリーンハルシュ
撮影:マーティン・ルーエ
音楽監修:イアン・ニール
スペシャルサンクス:ニュー・オーダー

出演:
イアン・カーティス(サム・ライリー)
デボラ・カーティス(サマンサ・モートン)
アニーク・オノレ(アレクサンドラ・マリア・ラーラ)
フッキー(ジョー・アンダーソン)
バーナード・サムナー(ジェームズ・アンソニー・ピアソン)
ロブ・グレットン(トビー・ケベル)
トニー・ウィルソン(クレイグ・パーキンソン)
スティーヴン・モリス(ハリー・トレッダウェイ)
ケヴィン〈イアンの父〉(リチャード・ブレマー)
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デビューアルバム1枚を残し1980年5月18日に23歳で自殺した
ジョイ・ディヴィジョンの亡きボーカル、
イアン・カーティスの学生時代から
結婚しバンドに入り自殺するまでを描いた作品。
監督が彼らとなじみの深いフォトグラファーのアントン・コービン。

ニュー・オーダーの前身バンドだと言う事と
度々カヴァーされている名曲達は知っていたが
イアン・カーティスについてはあまり知らなかった。
デヴィッド・ボウイやルー・リードのようになりたかった詩人のイアン。
無垢なデヴィーの笑顔に恋をし若くして結婚したイアン。
職業安定所の職員だった生真面目なイアン。

そんな彼がロックバンド、ワルシャワに参加し
ジョイ・ディヴィジョンとして本格的な活動を開始してから
ありがちなロック・スターの転落人生へとまっしぐら…
TV出演、アルバム制作、ツアの日々…
疲れからか癲癇の発作を起こし、以後持病となってしまう。
追っかけ記者との恋がきっかけで、妻や娘の存在がうっとおしくなってくるし
どんどん忙しくなり欧州、果てはアメリカツアーまで決定。
自分が思い描いていたヴィジョンとはどんどんかけ離れ
ステージでも癲癇の発作を起こし
加速してゆくバンドのサクセスストーリーの中で
自分の存在について自信が持てず、コントロール出来ず
家族と恋人の間で板挟みになり
ついにステージで歌えなくなってしまう…
それでも何とかやり直そうとするイアンだが
アメリカツアーを前に、命を断ってしまった…。
後に『ブルー・マンデー』という曲になる彼の最期。
ジョイ・ディヴィジョン時代の数少ないヒット曲の歌詞の意味が
コレを観る前と全く違って感じられた。

モノクロームなアントンの写真のようなシーンに
ニュー・ウェーヴ・ムーブメントの楽曲や
もちろんジョイ・ディヴィジョンのサウンドが流れ
頭をぐるぐる回って離れない。
とにかく主演のサム・ライリーの素晴らしい演技力
ライブ・パフォーマンスと常にどこか寂しげな表情が印象的だ。
パンフレットにも書いてあるが、特に似ているわけでもないのに
どんどんイアン・カーティスに見えてくるのだ。
劇中の彼らの演奏にも妙な迫力と狂気があり
グイと心の底をつかまれてしまう。

ミュージシャンにありがちな事だし
持病の癲癇の恐怖もあっただろうが
真面目すぎるゆえ、若さゆえ…
逃げ道を閉ざされてしまったのだろうか。
『LOVE WILL TEAR US APART』がとにかく心に沁みた…

〈東京では2008/3/25まで渋谷シネマライズにて上映中〉

コントロール
サントラ ニュー・オーダー デヴィッド・ボウイ

コントロール
スティル【コレクターズ・エディション】 アンノウン・プレジャーズ【コレクターズ・エディション】 クローサー【コレクターズ・エディション】 The Best of Joy Division シャドウプレイヤーズ - ファクトリー・レコードとマンチェスターのポスト・パンク 1978~81
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ジョイ・ディヴィジョンのシングル集
サブスタンス
ジョイ・ディヴィジョン
B00005LK2V

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■ 「ドニー・ダーコ」レビュー

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July 05, 2007

「明日の記憶」

[DVD映画]★★★☆☆

“若年性アルツハイマー”という病気の悲しい症状。
誰にでもあるちょっとした物忘れが
病気の兆候であったのが他人事とは思えない。
でも、極悪人が登場しないこの映画はとても暖かく
人とのつながりの大切さを教えてもくれた。

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「明日の記憶」

制作国:日本(2005)
監督:堤幸彦
エグゼクティブプロデューサー:渡辺謙
原作:荻原浩『明日の記憶』(光文社刊)
脚本:砂本量・三浦有為子
音楽:大島ミチル

出演:
佐伯雅行(渡辺謙)
佐伯枝実子(樋口可南子)
伊東直也(坂口憲二)
佐伯梨恵(吹石一恵)
生野啓子(水川あさみ)
木崎茂之(木梨憲武)
吉田武宏(及川光博)
浜野喜美子(渡辺えり子)
河村篤志(香川照之)
菅原卯三郎(大滝秀治)

「明日の記憶」オフィシャルサイト

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こういう失われる記憶系の作品を観ると
いつも気付くのが今の自分の幸福さと
周囲の人の存在の有難さ。

完成度の高さやリアルさはともかく、
渡辺謙さんの存在感はやっぱりすごい。
若年性アルツハイマーを
バリバリ働いている広告営業マンが
50を前にして突然この病に侵されてゆく様子を
美しく淡々と丁寧に描いている作品だった。

もの忘れ、めまいや、妄想、パニック状態など
当事者の身に起きた様子を映像的に何とか描こうと
本人の視野でのカメラワークが印象的だ。

樋口可南子演じる愛妻がとても良い妻で…
何て幸せな夫なのだろうと思った。
奥多摩での陶芸教室をとおして結ばれた
二人の恋愛ストーリーとして
美しくまとめあげているので
とにかく美しく切ない。

誰にでも経験した事があるようなささいな症状が
まさか自分の身にも…とつい考えさせられるのではないだろうか。
そして、自分に、近親者に…と思うと
日々生きる事の大切さ、人とのつながりの有難さ
をやはり感じざるを得ないのだ。
ちなみにこの映画には善人しか出て来ない。
だからかもしれないが、とてつもない優しさに包まれている。

こういった映画は
泣こうとして観る映画ではない…
“病気の存在を知る”ためにだ
と個人的にはそう思っている。

B000FPEMX6明日の記憶
渡辺謙 荻原浩 堤幸彦
東映 2006-10-21

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明日の記憶
荻原 浩
4334924468

明日の記憶 オリジナル・サウンドトラック
サントラ 大島ミチル 宮本文昭
B000EWBCEM

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July 04, 2007

「麦の穂をゆらす風」

[DVD映画]★★★★☆

アイルランド独立戦争を通して描かれるのは
ある意味普遍的な戦争の情景であり普通の人々個々の感情。
だからこそ、人の心に語りかけるのかもしれない。

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「麦の穂をゆらす風」

製作国:イギリス/アイルランド/ドイツ/イタリア/スペイン(2006)
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
音楽:ジョージ・フェントン

デミアン(キリアン・マーフィ)
テディ(ポードリック・ディレーニー)
ダン(リーアム・カニンガム)
シネード(オーラ・フィッツジェラルド)
ペギー(メアリー・オリオーダン)

「麦の穂をゆらす風」オフィシャル・サイト
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戦争、紛争、ゲリラ線…
1920年のアイルランド独立戦争をとおして見えてくるのは
現在も続いている人間の悲しい本能と愛情の深さと脆さ。
これらが庶民の目を通してストレートに描かれるので
どうしようもないもどかしさが心に響く。

アイルランドの片田舎の農家ではじまりそして終わるのだが、
その間に起きた悲惨な出来事の数々…
戦争だから…それだけで片付けてはいけない
重い悲しい何ともいえないもどかしさが胸をしめつける。
1919〜1921年のアイルランド独立戦争を
1920年のある日から、とある兄弟の目線で丹念に描いている。

アイルランドへの英国の侵略に対抗するゲリラ戦。
少しもの寂しいけれど美しい緑の中で銃を構えて訓練する
農民や少年などの若い一般庶民で結成されている
アイルランド義勇軍〜アイルランド共和軍(IRA)達の姿。
犠牲になりながらも彼らを支え家を守り、強く立ち向かう女性達。

一機関士であったダンと出会ったあの事件。
戦争から逃げて医者になるはずだったデミアンが
幼馴染みを裏切り者として処刑したり
元同胞と闘わねばならなくなった経緯は
運命にしても悲しすぎる。
皆で投獄された時、代表者である「テディ・オドノヴァンは誰か?」と
英国軍に問われた時、すかさず「自分だ」と答えたデミアンだったのに…
仲間を裏切る事…真面目なデミアンの苦悩。
兄テディとの意識のずれが、更に弟の運命を変える…

野山の広がるアイルランド南部の町、コークを舞台に
時代に翻弄された兄弟を中心に
淡々と身近なエピソードとしてアイルランド独立戦争が描かれる。
休戦、そして、念願のイギリス・アイルランド条約。
だが、この時の条約による北アイルランドの帰属問題により
その後の革命運動を二分し新たな闘いを生み
さらにその後何十年もの間IRAは
形を変えいくつもの派閥に分裂しながら
現在も組織は存在している…

冒頭で村人達が可哀想なミホールのために歌った
映画のタイトルでもあるアイリッシュトラッドの曲
“THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY”(麦の穂をゆらす風)
これを観終った後に再び歌詞を確認しつつ聴いてみると
自分の腕の中で恋人を失った、若い兵士の詩なのだ。
祖国のための闘い、恋人の死への恨みの闘い…
何ともいえない苦しみが、美しいメロディと共に流れ出る。

アイルランド人もイギリス人も他の国の人達も
個々では誰も闘いたいわけでも裏切りたいわけでもない。
そうしなければしょうがない状況
自分や家族や同胞が守れないから
命を落とした者に顔向けができないから
若い世代の未来が見えないから…なのだ。
この映画には戦争や人間の本質を問われている気がした。

世界中でくり返されている戦争や紛争
そして近年の数多くのテロ事件…
85年も前の事件だが、現在にまだまだ繋がっているのだ。
カンヌでパルムドール賞をとったの
井筒監督大絶賛(笑)もうなずける。
知っているようで知らなかったアイルランドの歴史。
ちなみに役者さん達は皆アイルランドにゆかりのある人達。
キリアン・マーフィーの変化してゆく切ない瞳がとても印象的であった。

B000NIVIPA麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション
キリアン・マーフィー ケン・ローチ ポードリック・ディレーニー
ジェネオン エンタテインメント 2007-04-25

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September 23, 2006

「電車男」

[DVD映画]★★☆☆☆

何だか憎めない初々しさがいい!
もう解説の必要もないオタク青年とお嬢様系美女の
ネット掲示板の書き込みに応援されて成就する?
実話をもとにした純愛ストーリー。

へ〜!なるほど!!
映画はこんな表現だったんだ〜。
と、思ったよりは面白かった映画版電車男
テレビ放映されていて、DVDで観ていたのを思い出した。
そういえば最近秋葉原に行っていないので、
ドラマや映画やドキュメント観てびっくり!
すっかり変わってしまったなぁ…
以前は外人とPCヲタばっかだったのになぁ…


アキバ系の彼女いない暦22年の22歳の男が
電車の中で酔っ払いにからまれる女性を助けたことから、
インターネットの掲示板でレスで応援されながら
出来過ぎた美女と結ばれるという、
心あたたまる逆タマ的純愛物語。
2005年公開の映画版。監督は村上正典

* * * * * * * * * * * * * * * *

「電車男」のドラマを先に観ていたので、
(ちなみに本は未読)
どうしてもあのキョーレツさと比べてしまうのだが、
突っ込み所が満載!!!!!

「そんな男はおらんやろ〜!
 こんな女はおらんやろ〜!!
 アノ役者があんな役するんかいな!」

得意のネットで情報収集、
掲示板のみんなに協力してもらいつつ
逆にみんなが励まされてゆくのがいい!
明らかに出来過ぎだけれども、
何だか微笑ましくて確かに元気がもらえるな。

電車男を演じるのが山田孝之くん。
「あんなヲタはおらんやろ!」
普通にイイ男で普通にカップルじゃん…
いや、
エルメスを演じるのが中谷美紀さん。
「あんな美人でええ女はおらんやろ!」
美しく、上品、性格も良く、素直で、優しい、
しかもある意味新鮮な?電車男を常に肯定してくれ、
更にドロドロした男女関係も希薄、
究極の母性を持つ、無機質な理想の女性像…
なんだかふわふわつかみ所の無い感じの女性だ。
お?こりゃ、アニメのヒロインではないか!
なんだ、
「実は似合いのカップルじゃん!!!!!」
と勝手に納得してしまった。
しかも経験上、育ちのいいお嬢さまの中には
意外と強烈に天然の人物は存在するので、
あながち無い話では…とすら思えたり。
男も女もチャンスはある!勇気次第!!そんな物語に、
何やらほんわか楽しむ事ができた。
恋人なんてモノは本人達が良ければ全て良し!!!
ネットのお友達もいいもんだ…と。

唯一残念だったのは…
最初と最後のドラマとリンクしたサービスと
ベタすぎのオチ。アレはしょうがないのかなぁ…

 

B000BDG2JO電車男 スタンダード・エディション
金子ありさ 村上正典 山田孝之
東宝 2005-12-09

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伊東美咲・伊藤淳史コンビの強烈なドラマ版。
この二人よりお色気OL役の白石美帆のキャラが印象深い(笑)
ドラマ版ほうがアニオタワールドを描こうとしていて、ディープな感じ。
オープニングとドラマの中のアニメーションも近々土曜深夜枠にて
『月面兎兵器ミーナ』?とかいうタイトルで実際にアニメ化するそう。
GONZOがちゃんと作ってくれるのならゼヒ観てみよう!!!
だから『電車男』のドラマも番外編が放送されるのか。
電車男 DVD-BOX
中野独人 伊東美咲 伊藤淳史
B0009VRGFM

大ヒットした書籍版
電車男
中野 独人
4104715018

 
映画「電車男」オフィシャル・サイト

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September 16, 2006

「ブロークン・フラワーズ」

[劇場映画]★★★★☆

最初から最後までジム・ジャームッシュ節全開!
可笑しくももの悲しい?とある初老の男の人生をふりかえる、
過去の女性を訪ねる旅とは…!

これもG.W.に劇場鑑賞したもの。
あまりにもゆるゆるのエチオピアン・ジャズが耳について離れないので、
速攻サントラを購入してしまった…♪
ホントにこの監督音楽のセンスがいい!!!
そしてビル・マーレイの軽妙な演技がこ映画にぴったり!
今回はかなり思わせぶりなストーリーなのに、
思わずにやにやしてしまう…そんな作品だ。
2005年カンヌ映画祭審査員特別大賞(グランプリ)受賞作した、
アメリカの鬼才ジム・ジャームッシュ監督のブロークン・フラワーズ
 

その昔はモテモテで、数年前にパソコンで成り上がって悠々自適な生活初老の男、
だが、なぜかちょっとヒッキー気味のドン(ビル・マーレイ)。
いっつも家でも外でもジャージ姿で無表情。
その日は同棲していた彼女は出て行ってしまったが、
特に引き止めるわけでもなく、ソファーでうたた寝する始末…。
そこへ一通のピンクの手紙が届いたのが、この物語の始まり。

『人生ってフシギないたずらをするものね。
 あなたと別れて20年が経ちました。
 息子はもうすぐ19歳になります。
 あなたの子です。
 別れたあと、妊娠に気づいたの。
 現実をうけいれ、ひとりで育てました。
 内気で秘密主義の子だけど、
 想像力は豊かです。
 彼は二日前、急に旅に出ました。
 きっと父親を探すつもりでしょう…。』

この手紙を見たお隣さんのウィンストン(ジェフリー・ライト)、
子だくさんで仕事を3つもこなし、しかもネットにはまりまくる、
どうやら推理小説好きな彼は盛り上がりまくり、
早速手紙の分析をはじめ、得意分野に興味津々…。
口ではイヤだと言いながらも、どうも手紙の内容が気になるドンの
そんな性格を知っていて、
勝手にドンの息子の母を探す一人旅を企画した。
そして彼の旅が始まった。

* * * * * * * * * * * * *

とにかく全編にわたって、
気まずさ満載、肩すかし満載、ナイスな音楽満載、
そしてキャスティングの絶妙さ!!!
このジム・ジャームッシュ節全開だ!

極めてコム・ジャームッシュらし〜い、ロード・ムービー。
あるきっかけで旅が始まり、ちょっとした夢とロマンを求めるも、
目にするのは求めたロマンとは違うしょっぱい現実の珍道中。
劇的な変化は無いのだが、沈殿した何かをちょっとかき回した事により
新たな何かは産まれ、そして少しいつもと少しだけ違った日常は続く…
そして冒頭の手紙の配送される所や「ドン・ファン」の映画に始まり、
あらゆる所でお得意の小ネタは満載!
ゆる〜いイカした音楽がまたとってもグ〜♪

女たらしでITで成功した金持ちなのに、なんだかとってもダメ男なドン。
20年前につき合った4人の女性の家と1人の墓を
着慣れないスーツを着込んでピンクの花束を持って訪ねでも、
どこでも古い恋人には、気まず〜い雰囲気。
めげずに手がかりののピンク色とタイプライターをチェックするのだが、
謎は解決される気配がない。
だが…どうしても気になるのは息子の存在。

登場する5人の女性それぞれのキャラが
それぞれの女優さんのこれまでのイメージと違っていて楽しめる!
・ピンクのスーツの出て行った恋人シェリー(ジュリー・デルピー
・ピンクのバスローブがお似合いの娘ロリータと二人暮らしのローラ(シャロン・ストーン
・ピンクの名刺を差し出す夫婦で不動産成金となったドーラ(フランセス・コンロイ
・ピンクのパンツでバリバリ動物と会話する?カルメン(ジェシカ・ラング
・ピンクのタイプライターが庭にあったライダースのペニー(ティルダ・スウィントン
まさかあの黒髪の女性が雪の女王だったなんて!!!
息子疑惑の青年はどこかで観たと思ったら
「ストーリー・テリング」に出ていたマーク・ウェバー
カルメンのアシスタントのちょっとセクシーなお姉ちゃんはクロエ・セヴィニー
そして何よりビル・マーレイ!!!!!
更に個人的にはジェフリー・ライトの図々しさもツボ。
彼らのすっとぼけた演技無くしてはカンヌで評価はされなかったであろう、
このキャステングの絶妙さたるや…ジム・ジャームッシュの手腕。

そして…感動的な結末は無い、あの肩すかし感。
よくも悪くも「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のままというか…
ピンクへの徹底したこだわりや「ブロークン・フラワーズ」とは粋なタイトルもいい。
でも、人生の間に軽妙に優しさを吹き込んでくれて、
自分というものを見つめ直させてくれる、そんな作品だ。

ところで、「エリザベス・タウン」といい、
車の旅のプランニングやBGMを作るのって流行なのかな?
 

B000I8O8Y8ブロークンフラワーズ
ジム・ジャームッシュ ビル・マーレイ ジェフリー・ライト
レントラックジャパン 2006-11-24

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映画「ブロークン・フラワーズ」オリジナル・サウンドトラック
サントラ ザ・グリーンホーンズ・ウィズ・ホリー・ゴライトリー ムラトゥ・アスタトゥケ
B000EMH89U

 

B000I0RDOSジム・ジャームッシュ / アーリー・コレクションDVD-BOX (初回限定生産)
ジム・ジャームッシュ クリス・パーカー リーラ・ガスティル
キングレコード 2006-11-22

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待ってましたっ!ジム・ジャームッシュ監督の初期代表3作DVDがBOXで再発売! 「パーマネント・バケーション」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ダウン・バイ・ロー」を収録。BOXには「ダウン・バイ・ロー特典ディスク」つき

ジム・ジャームッシュ作品集 DVD-BOX 1989-1999
ジム・ジャームッシュ 工藤夕貴 ジョー・ストラマー
B0007IMMTM

こちらは中期の4作品のDVD-BOX。
「ミステリートレイン」「ナイト・オン・ザ・プラネット」「デッドマン」「ゴースト・ドッグ」を収録。スリムケースでコンパクト。ポストカードセット付。

ジム・ジャームッシュ
4924609757
結構充実していて重宝している2000年発行の書籍。「パーマネント・バケーション」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」
「ダウン・バイ・ロー」のシナリオも掲載されている。

ジム・ジャームッシュ
遠山 純生
4872951034

2006年5月に発売されたジム・ジャームッシュ本。
『パーマネント・バケーション』から『ブロークン・フラワーズ』まで、ジム・ジャームッシュ監督の作品紹介、監督のインタビュー&コメント、彼をとりまく人々のコメントが、濃厚かつコンパクトにまとめられている。
懐かし〜いあのシーン、このシーンなどの写真もふんだんで、本の厚さに対しては、意外と読み応え有!
 

「ブロークン・フラワーズ」オフィシャルサイト

■ 映画「コーヒー&シガレッツ」レビュー
■ ジム・ジャームッシュ監督の愛すべき作品達

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September 15, 2006

「ぼくを葬る」

[劇場映画]★★★★☆

前作でオゾンさんどこへゆくの?と思ったが、今度はこっちだったのね…。
ある日突然宣告され決定しなければならない自己の死に様。

どうしても今回は劇場で観たかったのでG.W.に鑑賞した。
終了後、無言状態の劇場が映画のテーマの深さを物語っており新鮮だった。
前作の「ふたりの5つの分かれ路」で何かが起きた?オゾン節。
しかも「まぼろし」の“最愛の人の死”に続き、…今回は“自分の死”を描く。
この重いテーマをオゾンがどう描くのかはいへん興味深かった。
 
監督は気になっているフランスの若手監督フランソワ・オゾン
2005年フランスで制作されたぼくを葬(おく)る」。
原題は「LE TEMPS QUI RESTE」。
  
31歳の売れっ子ファッション・カメラマンのロマン(メルヴィル・プポー)は、
ある日撮影中に倒れてしまう。
医者にかかったところ、末期癌で余命が役3ケ月と宣告された。
まだ若いロマンに、医者は放射線や点滴での治療をすすめるのだが、
ロマンは治療を拒絶する。

同性愛者のロマンの恋人サシャ(クリスチャン・センゲワルト)に
冷たい言葉を浴びせ別れを決意し、
家族に告白しようとするが、どうしても言う事が出来ず、
父(ダニエル・デュヴァル)母(マリー・リヴィエール)には心配かけないよう
更に姉(ルイーズ=アン・ヒッポー)とは仲違い。
仕事を辞め、唯一祖母のローラ(ジャンヌ・モロー)にだけは病気の事を打ち明けた。
なぜなら…
“おばあちゃんは、僕に似ているから…”

そんな時、たまたまカフェで出会った
ウエイトレスのジャニィ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)夫婦から
持ちかけられたのは“代理父”の依頼。
運命に怒り、周りに心配をかけないように己を孤独に追いやって、
どんどん弱ってゆくロマンに、姉からの手紙で転機が訪れる。
“子供”を意識している事に気付いたロマン。
幼い自分の記憶と幻に出会った時に何かが起きた。
自分と向き合い、今出来る事を遂行し、自分を葬る準備を始める…。
美しいと思ったシーンを切り取るカメラ。
ニコンの一眼レフからコンパクトカメラに変わってからの彼の撮る写真は、
きっと彼の宝物で天国へ持ってゆきたい写真に違いない…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ある日突然つきつけられる、限りなく近い将来に起きる人生の終焉。
その当事者は病と死への恐怖の中で、
残された人生で行うべき事を短時間で決定せねばならない。

全ての人は孤独に生まれ、孤独に逝く運命を持っている。
その間の限られた人生を如何に生きるか、そして死ぬのか…それが人生。
ロマンを通して自己の人生観が感情と共にえぐり出される気分になった。
リアルで普通な何という事の無いシーンに込められたロマンの想い。
ロマンを演じるメルヴィル・プポーの繊細に揺れ動く感情と
遠くを見つめるかのような美しい瞳、
そして衰えてゆく肉体の変化に、胸をしめつけられる。
祖母を演じるジャンヌ・モローの孫への言葉
“今夜お前と死にたい”。
唯一信頼している肉親の愛情がこもったその言葉には、
ロマンと共に目頭が熱くなった。
余談だが、子供時代のロマン役の少年(ウゴ・スーザン・トラベルシ)の
くりくり巻き毛と瞳がメルヴィル・プポーと似ていてこれにまたグッとくる。

偶然に出あった人に自分の生きた証を委ね、
愛した人から愛されていると知る事が出来たロマン。
突然訪れたつらく悲しい物語を描くのではなく、
何かに立ち向かい得る夢や希望を描くのでもなく、
人間の本能と事実を受容し、自分の死に様を決めた一人の男の心の動きを
極めて間近から繊細に優しく描いた作品だと思う。

少ない余命で何を残せるか…

イザベル・コヘット監督の「死ぬまでにしたい10のこと」も同じようなテーマだったが、
あちらは若い母親だったので、女としてしておきたい事、
旦那や子供達に残しておきたい事、
娘として両親にしておきたい事を綴っていた。
こちらは独身で同性愛者、人生の成功者であった若い男性。
心の動きはおのずと違ってくる。
前者では限界まで母性を与え、後者では母性を求めている気がした。

ちなみに、治る可能性が5%以下と言われ治療を拒否したロマン流の生き様。
後悔しないよう治療する方法をとり、癌と戦う決意をするという生き方。
“健康で死にたい”というロマンの祖母の生き方が最も望まれるものだろうが、
病気…特に癌などの病の場合は、本人の悔いの無いようにするのが一番だと思う。
特に早期発見の場合完治出来る可能性が高いので、もちろん治療すべきだろう。

こんな仕掛けや謎の無い、
フランソワ・オゾン作品は初めて!

円熟したというか、人生の折り返し地点にきたからか…
ほぼオゾンと同じ年代の自分にとっては見事に心に響いた。
これまで常に死と生と性、その源の水=海、そして女の強さと怖さ、男の弱さ…。
表現方法は違っても、常に根源にあるものは同じなのかも。
ちなみに今後“子供の死”をテーマにした作品の予定もあり3部作にしたいそう。
次回作は英語で撮っているという噂だが、こちらはどんな内容なのか楽しみだ。

本作のオゾンの定番のラストシーン。
いつもと違い、悲しい場面なのになぜか優しい安心感がある。
 

「ぼくを葬る」オフィシャルサイト

ぼくを葬るぼくを葬る
フランソワ・オゾン メルヴィル・プポー ジャンヌ・モロー

ふたりの5つの分かれ路 スイミング・プール 無修正版 8人の女たち デラックス版 まぼろし<初回限定パッケージ仕様>
焼け石に水 ホームドラマ クリミナル・ラヴァーズ 海を見る

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■ 映画「海をみる」レビュー
■ 映画「クリミナル・ラヴァーズ」レビュー
■ 映画「ホームドラマ」レビュー
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■ 映画「まぼろし」レビュー
■ 映画「8人の女たち」レビュー
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■ 映画「ふたりの5つの分かれ路」レビュー
 
フランソワ・オゾンの作品紹介とレビューの一覧
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■ フランソワ・オゾン監督の作品紹介はこちら
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■ 映画「死ぬまでにしたい10のこと」レビュー

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September 14, 2006

「ふたりの5つの分かれ路」

[DVD映画]★★★★☆

オゾン作品としてはもの足りないが、
何でも無い物語がちょっとしたミステリーになっている。
やっぱり女は強くて怖い…

違った意味で衝撃的?だったこの作品。
オゾン節が変化してきた???
監督は気になるフランスの若手監督フランソワ・オゾン
音楽はフィリップ・ロンピ
原題は「5X2」。2005年公開の作品ふたりの5つの分かれ路
 

冷めきった夫婦の離婚の場。
子供とともに、生きてゆく事にした自由で強い女。
誰かと寄り添ってゆかなければ生きてゆけない未練たっぷりの男。
ここに至るまでのこの夫婦の愛の経緯とは???

* * * * * * * * * * * * * * * *

“愛は変化し崩壊するものだ”

と定義し、その過程を見せつけるのがこの作品。
新しい手法では無いが時間軸を逆にし
ある1組のカップルの離婚から出会いまでを
“別れ”→“裏切り”→“出産”→“結婚”→“出会い”
の5つのエピソードを描く事により、
何でもない物語をうまく謎解きにしている。
レトロでメロウな音楽やイタリアンポップがとても印象的。

最初は乱暴で酷い男に思えた夫ジル(ステファン・フレイス)が、
どんどん哀れに思え、
最初は可哀想な妻に見えた妻マリオン(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)が、
どんどん力強く奔放に思えてくる。
いや、そもそもがそうだったから
5つの分かれ路を経てこの結婚は崩壊したのだ…。
彼らの愛の絶頂は結婚式だった。
 
カップルになった男女の心の嫌な所と禁断の行為を
美しいビジュアルを駆使しつつ極めてリアルに描き出す。
オゾンお得意の、エロティックかつ暴力的な表現、
それとは逆の愛ゆえの美しく明るく優しい表現の対比の妙で
ドラマティックに見せるのはさすがだ。
心に残るのがマリオンの両親、
父ベルナール(ミシェル・ロンダール)と
母モニク(フランソワーズ・ファビアン)のダンスと
ジルの兄クリストフ(アントワーヌ・シャピー)と恋人とのダンス。
ジルの元カノのヴァレリー(ジェラルディン・ペラス)の山歩きのシーン。
この夫婦とは別の愛の形がそこに垣間見える。

そして、この映画にも出てくる『海』。
生命の源、そして帰ってゆく所。
それは愛も同じなのか?
打ち寄せ引く波。どこまでも広がる母なる海。
オゾンの海はまだまだ広がり続ける。

「ふたりの5つの分かれ路」オフィシャルサイト

ふたりの5つの分かれ路ふたりの5つの分かれ路
フランソワ・オゾン ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ ステファン・フレイス

ぼくを葬る スイミング・プール 無修正版 8人の女たち デラックス版 まぼろし<初回限定パッケージ仕様>
焼け石に水 ホームドラマ クリミナル・ラヴァーズ 海を見る

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『ふたりの5つの分かれ路』(原題:「5×2」)オリジナルサウンドトラック
フィリップ・ロンビ サントラ
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September 10, 2006

「バッシング」

[劇場映画]★★★★☆

小林政広監督の真骨頂?エンターテイメント性はゼロ!
極力ドキュメントタッチで描かれた、
重いテーマだがなかなか見応えのある作品。


やっと観ることができた!
公開まで長い道のりだったバッシングだ。
小林政広監督が2005年のカンヌでコンペティションに出品、
レッドカーペット歩いたのだが、結果賞は取れなかったが
報道され話題になった問題作。
その後、日本ではなかなか公開が決まらず、
昨年の夏の第6回東京フィルメックスでグランプリを受賞し、
本年2006年6月やっと渋谷のイメージフォーラムでの劇場公開が開始され
その後各地で細々と公開されている。

非武装地帯へボランティア活動に行っていた有子(占部房子)は
誘拐され人質にされたのだが、日本政府のおかげで無事帰国。
だが、彼女ととその両親が、自己責任について有子を批判
周囲の人々から“バッシング”を受けるその経緯を
ドキュメントタッチで描いたちょっと重い作品。
もちろん小林作品、予算は、無い。
いつもの北海道ロケで、いつもの淡々とした撮り方だ。
だが、この作品のインパクトは…いつもと異なった。

小林フリークとして、これが話題になり評価されたというのは納得。
これまでの作品は感情移入出来ないというかさせないというか…
そういうシュールな世界を妙にリアルに描いていたのだが、
今回はネタがタイムリーでリアル(フィクションだが)。
主人公の有子やその父(田中隆三)、義母(大塚寧々)、
有子を解雇したホテルの社長(香川照之)など、
彼らを敬遠、中傷する人々は決して我々から遠くない存在だ。
いつ自分がその中の誰かになるかもしれない…そんな脅威、
観るものをいやがおうでもこの問題の中にひきずり混む勢いがあるのだ。

「この国じゃ、皆が怖い顔をしている。」
「皆が喜んでくれる、あの顔が見たい」

失敗だらけで居心地の悪い日本での生活から逃げ、
海外の非武装地帯でのボランティア活動に生き甲斐を感じ、
そこにしか自分の存在価値を見いだせない有子の行動は
余りにも安直で、必ずしも正しいとは言えない。
自分の人生を投げ打って苦しんでいる人々に手を差し伸べるのは
なかなか出来ない殊勝な行動だ。
しかも、行っているのは“人助け”なのだ。
彼女の人生だから、彼女が生きたいように生きれば良い。
ただ…彼女の動機は家族を追い込んでまでの大義なのだろうか?
自分の行ったことで周囲にどんな影響を与えるのか、
国の警告をふりきって、紛争地帯に行くという事は、
もはや一個人としてだけでなく、
誰もが母国を背負っているという事を自覚をしていない。
そんな彼女には理想論や大義名分では済まされない
個人的にも悲惨な結果が待っていたのだが…

だが、ここに描かれているのは
そんな彼女とその家族の受けた、
匿名での“バッシング”
権力をかざしての“バッシング”
直接手を下す“バッシング”
社会からの“バッシング”
人が人を追いつめる醜い行為だ。

決して全面的に褒める事は出来ない有子の行動だが、
凶悪犯罪を犯したわけではない。
どちらかといえば現地で凶悪犯罪にあった被害者である。
命を落としたらヒーローであった。
国の…国民の援助で帰ってきたらまるで犯罪者扱い。
この皮肉な結果で何を学ぶべきだろうか。

あらゆる登場人物の立場にたってみると
現代社会のあらゆる混沌とした矛盾が浮き彫りになり、
有子の痛々しさが際立ちまくる。
こんなに深く考えさせられた小林作品は初めてで
とても新鮮だった。
 
 
元ミュージシャンの小林監督の歌う「バッシング」エンディング曲
寒かったころ
小林政広
B000FDF124

「バッシング」オフィシャルサイト

 
小林政広監督の初期3作品のDVDが2006/7/29発売された

クロージング・タイム ◆20%OFF! クロージング・タイム

海賊版=BOOTLEG FILM ◆20%OFF! 海賊版=BOOTLEG FILM

歩く、人 ◆20%OFF! 歩く、人

映画監督小林政広の日記 映画監督小林政広の日記
小林政広監督のブログ本。

神楽坂映画通り 神楽坂映画通り
小林監督の自伝本。

→「歩く、人」レビュー
→「KOROSHI 殺し」レビュー
→「フリック 完全版」レビュー

■小林政広監督の映画レビュー

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February 03, 2006

「欲望の法則」

[DVD映画]★★★★☆

嫉妬に狂うバンデラスのあんな顔やこんな顔に、もうびっくり!
愛と野望ゆえの悲劇を描いたアルモドバルの初期の作品。
数々のタブーに挑戦しながら様々な愛と欲望について描くアルモドバル節は
最初から結末まですでにがっちり詰まっている。

監督・脚本はスペインの奇才ペドロ・アルモドバル
カルメン・マウラが女性っぽすぎるけど(笑)性転換した人物を好演。
映画のラストで予告しているとおり、
昨年公開された「バッド・エデュケーション」の原点ともいえる、
1987年スペイン制作の映画「欲望の法則」。
 

売れっ子映画監督パブロ(エウセビオ・ポンセーラ)は新作も大盛況!
パブロの姉(兄)のティナ(カルメン・マウラ)は男嫌いで、
友人の娘アダ(マヌエラ・ベラスコ)を引き取り一緒に暮らしていた。
このティナを主役にした次の映画を現在パブロは企画し脚本を書き進めている。
内容は明かしていないがパブロの意欲は満々だ。

だが、パブロは美青年の恋人ファン(ミゲル・モリーナ)とは
愛しあいつつもいまひとつ馴れ合いすぎて冷めた状態。
ファンが休暇で帰郷し、しばらく距離を置くことになって
はじめて彼への愛へ気づくき、彼のスクーターにキスをしたり、
あげくの果てには自分宛の手紙をファンに送って、
それを返信してもらい読んでいる始末…。

そんな寂しいパブロの前に、少し前から気になっていた
好みの黒髪の美青年アントニオ(アントニオ・バンデラス)が現われた。
積極的な彼とフラフラと一夜を過ごしてしまったのだが…
パブロの崇拝者であり俳優にも興味のあったアントニオは
女性が主人公だという次回作を意欲的に書くパブロの姿、
せっせとファンに手紙を送るパブロの行動、
色々身の回りにも尽くそうとする自分に冷たいパブロの態度、
そんなパブロの愛するファンに嫉妬の念が強まるばかりだった…。

* * * * * * * * * * * * * * * *

冒頭の映画のシーンからゲイ・ワールドが炸裂!
こちらの方がドロドロした問題作だろう。
全ては愛と欲望によって行われる人間関係と悲劇を描く。
様々な愛と禁断のテーマ、鮮明な赤い色、印象的な劇中劇と音楽、
熱い視線と好奇心…そして母性。
濃厚なアルモドバル色も既に出来上がっている。

そもそも罪なのは監督パブロ。
距離を置く事に決めたけれど、恋しさが募るならすぐ追いかけようよ!
忘れられない恋人がいるにも関わらず、
寂しいからと自分に憧れる未経験な青年と一夜を過ごしてしまうから…
そりゃ、逆恨みされるだろうと気づこうよ!!
そしてそんな相手とは綺麗に別れようよ!!!
しかも兄弟の秘密を暴露するような映画は、
書きはじめる前にちゃんと断ろうよ!!!!!
恋は盲目といえど彼の甘い考えで、
悲劇の傷が大きくなってしまった…。

厳格な家庭で育ったおぼっちゃまのアントニオは、
面子を保ちつつも自分の思い通りにしなければ気が済まない。
パブロの元恋人で今も愛されているファンにどんどん嫉妬が加熱。
パブロと同じ柄のシャツを求めてしまうアントニオ。
ファンのように手紙が欲しいアントニオ。
どうしても彼らと同じ事がしたいのだ。
そんな幼稚さがあるアントニオのために
可哀想なファンはこの三角関係の犠牲となった。
そして自分の犯した罪を隠すため、
追い詰められたアントニオの稚拙な行動は、
最後の最後まで欲望に忠実なのである。

ティナとバブロの兄弟、そして母親よりもティナになついているアダ、
この3人の関係には絶対的な思いやりが溢れていていい。
過去に愛した二人の男性については、怨みよりも愛のほうが深いのか、
ティナは彼らに対する陰口は決して言わない。
余計な詮索をあまりしない弟パブロの事も、肉親として最も信頼し愛している。
過去の経験から男嫌いのティナは複雑な心境だろうが、アダに対しては
自分の理想の母親像を憎まれ口をたたきながらも嬉しそうに演じている。
だからアダも素敵な大人の女性?ティナに憧れており、彼女の事がお気に入り。
もちろんティナの弟のパブロの事も父親になって欲しいくらい大好き!
この3人は、はたから見ても普通の“家族”。
ところが、交通事故でパブロが記憶喪失になっている間に、
その“家族”に入り込んだ男がまさかのあの男!!!
しかも目的はパブロの愛を得るため。
それを知った時のパブロのショックは尋常では無かったであろう。
極限状態でのベッドでパブロとアントニオは何を考えていたのだろうか。
アントニオはきっとそうするしか無かったのだろうけれど…。

誰もが愛によって人生を狂わせてゆくのかもしれない。
それは良い方にも悪い方にもちょっとしたきっかけで急転回する。
欲望に身を任せすぎてもいけないし、押し殺しすぎてもいけない。
そのタイミングと人物を見極めないと悲劇が起きかねないのだ。

ラストに同じようなテーマの作品が制作される事が予告されている。
きっと監督は各キャラクターについてまだまだ描き足りなかったのではと思う。
幼児体験の影響や恋に堕ちる瞬間、そして犯罪に手を染めてしまう過程…。
「バッド・エデュケーション」ではこのあたりを含めて
見事にサスペンス・タッチで描かれていたので、観比べてみても面白いかも!

ペドロ・アルモドバル・セレクション DVD-BOX
ペドロ・アルモドバル
B0007KT1EE

現在単品では入手出来ない「欲望の法則」(1987年)と
「ライブ・フレッシュ」(1997年)の2本セット。
特典映像は無いがそれぞれにモノクロの解説ブック付。

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January 26, 2006

「Shall we Dance?」

[DVD映画]★★★☆☆

オリジナルに忠実に作られているのにびっくり!
ハリウッド版は洗練されていて素敵すぎ!!

なんてステキなリチャード・ギア!
やはり社交ダンスはアチラの方が踊ると違うなぁ。
身体のバランスと文化の違いをあらためて感じてしまう。
監督はピーター・チェルソム
2004年に制作されたハリウッド版「Shall we Dance?
 

シカゴ遺言書作成専門の弁護士をしているジョン・クラー(リチャード・ギア)は、
デパートでバリバリ働く妻ビヴァリー(スーザン・サランドン)と2人の子供達共に、
平穏ながらもちょっと寂しく虚しい生活をしていた。
そんなある日、ジョンはいつもの通勤電車の中から見えるダンス教室の窓の美女
ポリーナ(ジェニファー・ロペス)の姿にドッキリ。
思わず電車から降りてダンス教室へ向かい成りゆきで通う事に…
だが、最初はポリーナ目当てだったのだが、
同じ日に入会した色男チック(ボビー・カナヴェイル)と
おデブなヴァーン(オマー・ミラー)と共に
どんどん“ボールルームダンス=社交ダンス”の楽しさに夢中になってゆく。
そしてここには強烈なラテンな二人、
明るくパワフルなママさんダンサーボビー(リサ・アン・ウォルター)と、
実はジョンの会社の同僚で常にダンスの事を考えており、
激しく踊りまくる熱い男リンク(スタンリー・トゥッチ)が居た。
優しいミス・ミッツィー(アニタ・ジレット)と、
どこか影のある孤独さを感じさせる実力派のポリーナは
彼らを“ボールルームダンス”のコンテストに出場させようと熱心に教え始めた。
さすがに最近帰りが遅くて挙動不審な夫ジョンが気になり出したビヴァリーは、
ディバイン探偵(リチャード・ジェンキンス)にジョンの浮気調査を依頼した…
さて、クラー夫妻の行方は…??
コンテストはどうなる?

* * * * * * * * * * * * * * * *

日本版、周防正行監督の「Shall We ダンス?」は
もう、生真面目すぎる役所広司さんのおかしさや、
渡辺えり子さんとと竹中直人さんの強烈なキャラクターにあてられて、
公開当時劇場で鼻血出すほど笑った記憶が…。
現代においてはもはや一般の人はまず踊った事が無い社交ダンス。
マイナーながらカルチャー・センターなどでは根強い人気はあったが、
社交ダンス教室に通うというのは、ちょっとマイナー嗜好というイメージがあった。
そこにスポットライトを当てて、これまた生真面目な普通のおっさんを通わせ、
社交ダンスに目覚めてハマりまくって大会へ!!!!!
この、ちょっとイケない感じが良かったんだけれど、
“ハイスクールの卒業式”で普通にペアでダンスを踊るアメリカさんでは、
マイナ−感がちょっと希薄なのでは?
それともすごくお堅いイメージなのだろうか??

だが極力日本版に忠実に制作した感が溢れていて、好感が持てた。
アメリカで電車で通勤という都市も少ないらしく、シカゴでロケになったそう。
日本版で渡辺えり子の役のボビーなんでキャラや声までソックリ!
ラテンな兄さんリンクのズラ振り回す濃いダンスも竹中直人を彷佛させた。

ジェニファー・ロペスは普通に綺麗だけど、
とにかくリチャード・ギアがキュートでダンディーで素敵すぎ。
妻の存在がハリウッド版では大きく描かれており、
仕事もディスプレーでバリバリやっている。
でも、夫の愛を求めているのは同じ。
職場にあんなバラの花持って、あんなステキな旦那が迎えに来たら!
日本ではサムいけど、リチャード・ギアならアリでしょう!!
人妻の胸の谷間にメロメロな探偵のオヤジも可愛かった。

ダンスにせよ、小さなエピソードにせよ、
向こうの人はスマートなのが綺麗すぎた。
ちょっとイケナイ感じのする日本版のほうが、
個人的にはグッときたな。

Shall we Dance ?(初回限定版)
リチャード・ギア 周防正行 ピーター・チェルソム
B00067HDVQ

「Shall we Dance?」オリジナル・サウンドトラック
サントラ ザ・プッシーキャット・ドールズ ゴタン・プロジェクト
B0007WZUNI

オリジナル日本版
Shall We ダンス? (初回限定版)
役所広司 周防正行 草刈民代
B0001JZHHG

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January 11, 2006

「バッド・エデュケーション」

[DVD映画]★★★★★

欲望と情熱と好奇心。ゲイの愛、絶対的な母性に対する憧れ。
監督の描く愛の形の根源がここに描かれているのかも…。

ペドロ・アルモドバル監督による
ゲイとゲイでは無い全ての人に捧げられたこの物語。
派手で大胆な色彩と美しい構図、描かれるのは生々しい人間の欲望と愛。
感想は賛否両論、男同士の絡みが苦手な方には勧められないが、
ちょっとしたサスペンス仕立てにより素直に楽しめた。
アルモドバル節は円熟しながらも健在だ。
2004年制作のスペインの作品「バッド・エデュケーション」。
原題は「LA MALA EDUCACION」。
 
1980年、マドリード。
映画の元ネタを収集している新進気鋭の映画監督エンリケの事務所に、
神学校寄宿舎時代の親友イグナシオと名乗る
役者志望の髭面の青年が売り込みにやってくる。
彼は自分の書いた映画の脚本を読んで欲しい、
そしてエンリケの映画に出演させてくれと言うのだが、
エンリケは少年時代と変わってしまった彼の風貌や、
イグナシオではなくアンヘルと呼んでくれという彼の言動に戸惑いつつも
ぐいぐいその脚本に惹きつけられていく。
何故ならそこに彼らの寄宿舎での少年時代の秘密が描かれていたのだ…。
初恋のイグナシオ、彼の脚本「訪れ」にも関心を抱いたエンリケは
この「訪れ」を映画化する事を決意した。
そして、制作が始まったのだが…
エンリケはイグナシオについての隠された真実を知ってしまう…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

購入していたDVDをやっと観ました。
やはり…巨匠!大好きですっ!!
 
とにかく熱い視線!!
登場人物それぞれの熱っぽい視線がたまらない。
・突然現れた同級生だという美しい青年イグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)を
 好奇心と共になめまわすように見る映画監督エンリケ(フェレ・マルティネス)。
・その監督に対するこれまた熱っぽい青年イグナシオの情熱的な視線。
・天使の歌声の少年イグナシオ(ナチョ・ペレス)を
 涙を流さんばかりに見つめる若いマノロ神父(ダニエル・ヒメネス・カチョ)。
・その初恋?のイグナシオにちらちら目線を配る
 同級生の少年エンリケ(ラウル・ガルシア・フォルネイロ)。
・劇中で登場するサハラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)の同僚
 ゲイの歌手パキート(ハビエル・カマラ)の男性を品定めする目。
・ベレングエル編集長(ルイス・オマール)のアンヘルを見つめる愛に狂える視線。
などなど…
男達の視線はなんと情熱的かつ欲望的なのだろう!!!
そしてその情熱と尽きる事の無い欲望は年月を経て数々の悲劇を生むのだ。
 
これらとは逆に遠巻きながら包み込むような女性達のあたたかい想いと眼差し。
絶対的な愛情をもって息子を信頼する、笑顔を絶やさないイグナシオの母と叔母。
目立たずさりげなく世話を焼く、若いメイクの女性(レオノール・ワトリング)。
彼女達が今回登場が少ないながら妙に印象的であった。
ここにはアルモドバル監督の母性に対する憧れや、
ある種のマザー・コンプレックスなどが表現されているのかも。

サハラを演じるガエル君の美しい女装、イグナシオとして見せる初々しい裸体…
反して、彼の中で渦まく欲望を見せる小悪魔的な表情の変化。
エンリケを演じる情熱家ながら繊細で冷静な部分も持つ、
フェレ・マルティネスの不思議な存在感。

エンリケの劇中映画「訪れ」のシーンを回想に使用し、
隠された真実をラストに向かってどんどん解明してゆく、
ちょっとしたミステリー的な展開もこの上なく上手い。
禁断の愛にふりまわされる様々な男達の欲情と欲望。
くり返し語られる新聞記事のネタ、ワニに食べられて死んだ女性の記事。
好奇心と欲望に勝てずに破滅に向かうと判っていながら
愛というものにふりまわされ続ける、そんな不器用な人間達が好きでたまらない監督。
鮮やかな色彩と共に、常に“様々な愛”について描き続ける
アルモドバル監督の情熱と好奇心の根源にふれた気がする、
生々しく美しいゲイ達の愛憎劇を描いた秀作だ。

[特典映像]
・ペドロ・アルモドバル音声コメンタリー
・削除シーン
・メイキング
・フェレ・マルチネス来日インタビュー
・オリジナル/日本版予告編
・ポスター・ギャラリー
・ジャンポール・ゴルチエ衣裳デザインギャラリー
 
バッド・エデュケーション
フェレ・マルチネス ペドロ・アルモドバル ガエル・ガルシア・ベルナル
B000BH4C42

オール・アバウト・アルモドバル BOX
フェレ・マルチネス ペドロ・アルモドバル ガエル・ガルシア・ベルナル
B000BHHYIS
特典映像が全てに付いているのでこれを購入。
「オール・アバウト・マイ・マザー」と「トーク・トゥ・ハー」そして
「バッド・エデュケーション」の3本入りのボックス。
3面デジパックのなかなかオシャレで豪華なパッケージ。
簡単な監督コメント・カード入り。 
 
バッド・エデュケーション ヴィレッジブックス
バッド・エデュケーション
ペドロ アルモドバル Pedro Almod´ovar 佐野 晶
4789725170

「バッド・エデュケーション」オリジナル・サウンドトラック
サントラ サラ・モンティエル ヴィヴァルディ・イプシ・カタルーニャ少年合唱団
B0007OE5F0

 
■ 映画「オール・アバウト・マイ・マザー」のレビュー
■ 映画「トーク・トゥ・ハー」のレビュー

■ ペドロ・アルモドバル監督の作品紹介はこちら
 

「バッド・エデュケーション」オフィシャル・サイト
 

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December 24, 2005

「姉のいた夏、いない夏」

[DVD映画]★★☆☆☆

えぇ…そっちの話しですか???
またもや予告編から想像もつかない展開で、正直ちょっとびっくりした。

監督・脚本はアダム・ブルックス。
原作はジェニファー・イーガンのベストセラー小説『インヴィジブル・サーカス』。
これは革命を夢見た亡き姉の軌跡を追い、
真実を知りその幻から卒業しようとする妹の旅の物語。
姉フェイス役のキャメロン・ディアスと
少女時代の妹フィービー役のカミーラ・ベルが
父親とかくれんぼをして遊ぶその笑顔がなぜか涙を誘う、
2000年アメリカで制作された作「姉のいた夏、いない夏」。
 
1976年。
高校を卒業したフィービー(ジョーダナ・ブリュースター)は、
母親ゲイル(ブライス・ダナー)と二人でサンフランシスコに住んでいた。
病気で亡くなった父親(パトリック・バーギン)の影響で
ヒッピー・ムーヴメントにのめり込んでいた
フェイス(キャメロン・ディアス)という姉がいたのだが、
7年前、同士であり恋人の青年ウルフ(クリストファー・エクルストン)と
ヨーロッパへ旅に出て、旅先で自殺してしまったのだ。<