19 posts categorized "★歴史・社会の闇系"

September 01, 2007

「アトミック・カフェ」

[TV放映映画]★★★★☆

原水爆のPRフィルムや軍用フィルム
当時のニュース、アニメーションなどを
淡々とつなぎ合わせたドキュメンタリー作品。

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「アトミック・カフェ」
原題:THE ATOMIC CAFE

製作国:アメリカ(1982年)
監督:ケヴィン・ラファティ/ジェーン・ローダー/ピアース・ラファティ
製作:ケヴィン・ラファティ/ジェーン・ローダー/ピアース・ラファティ
音楽:リチャード・バス/デヴィッド・ダナウェイ/リチャード・ウルフ

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この時期よく深夜放映していて何度も観たけれど
いやはやその無知さと身勝手さといったら…
こういった映像は日本も含めどの国も同じだと思いますが
1940〜1950年代のプロパガンダ映画達には呆れるばかり…

冷戦という言葉すら、懐かしかったりする最近
核の恐怖がゼロになったわけでもなく
逆にテロという流れになっただけですから。
核兵器はまだ存在しているのだし
核について正しい知識を言及してもらいたかったですね。
それにしても真面目に作られたフィルムだけに痛烈。
ピカッと光ったらさっと隠れる
それだけで回避できるわけ無いでしょうに…。

B00069LUL8アトミック・カフェ
ケヴィン・ラファティ; ジェーン・ローダー; ピアース・ラファティ
竹書房 2004-12-17

by G-Tools

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July 28, 2007

「選挙」

[劇場映画]★★★★☆

政治の素人山内和彦さんの川崎市議会議員への
自民党からの立候補…しかも立場的に微妙な落下傘候補。
この2005年の選挙戦を追った生々しいドキュメンタリー。
手持ちカメラも揺れるけれど、その姿もガタガタ…
彼のキャラにどんどんこちらものせられて
ちょっと応援したくなったりするのが面白い。

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「選挙」
 洋題:CAMPAIGN

製作国:日本/アメリカ(2006)
監督・撮影・編集:想田和弘
英語字幕:キャメロン・スティール

主な登場人物 :敬称略・肩書きは当時のもの
山内和彦(川崎市議会補欠選挙・自民党公認候補)
山内さゆり(山内和彦の妻)
浅野文直(川崎市議会議員)
石田康博 (川崎市議会議員)
石原伸晃 (衆議院議員・元行政改革・規制改革担当大臣・元国土交通大臣)
荻原健司 (参議院議員・オリンピック金メダリスト)
川口順子 (元外務大臣・元環境大臣・参議院候補)
小泉純一郎 (総理大臣)
高尾紀久雄 (参議院議員小泉昭男の秘書)
田中和徳 (衆議院議員)
永井はる子 (山内和彦事務所)
橋本聖子 (参議院議員・オリンピック銅メダリスト)
松川正二郎 (元田中和徳第一秘書)
持田文男 (神奈川県議会議員)
矢沢博孝 (川崎市議会議長)
山際大志郎 (衆議院議員)
山田甫夫 (山内和彦後援会会長)
川崎市の皆さん
自民党川崎支連の皆さん
各後援会の皆さん
ウグイス嬢の皆さん
東大同窓生の皆さん

「選挙」オフィシャル・サイト
→山さんブログ
→監督ブログ

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今週末また参議院選挙があるそうで…
街頭演説がそろそろ始まりましたね。
ちょっとコレが気になっていたので久しぶりに劇場鑑賞。
ドキュメンタリー作品なのであえてクレジットを
がっつり入れさせていただきました。

2005年の川崎市議会議員補欠選挙に
東大卒という事と小泉さんのファンだったから…という事で
自民党から持ち上げられた
無縁の切手コイン商だった山内和彦さんが立候補。
これを彼と同級生だった想田和弘監督が
選挙戦の約2週間密着した台本の無いドキュメンタリー。

ただただ、政治と無縁の素人が
自民党の先生達に助けられながら?
まことに情けなく滑稽でもあるが
先生達の笑顔や完璧すぎる一挙一動が、
これまた滑稽かつ不気味にすら思える。

党を上げて次席獲得の為にどんどん盛り上げ
応援演説に小泉元首相も一応ご登場。
(そういえば小泉さん一昨年前、各地で応援演説されてましたね)
そんな中、地元出身でもない落下傘候補のこの候補者…
天下の自民党のバックアップがありながらも
自腹を切って有り金はたいて、妻も前面的に協力…
選挙のために引越してきた小さなアパートで
布団1枚で疲れきって寝る姿には哀愁が…
誰も聞かない駅や住宅地での街頭演説、
票の為には…と電信柱にも頭をさげろという文字通りの姿
諸先輩型が叱咤激励してくれるが体育会系のノリについて行けない
運動会やお祭りなどへの参加などなど…
議員先生達のご苦労も、ある種滑稽。

そもそも議員って何???とか…
こんな形で政治家を生み出して良いのか?
大丈夫かな…というのと同時に
この国大丈夫なのかな…と解っていたが正直思う。

この映画の山さんも…具体的な政策が今ひとつでした。
東大卒、自民党公認、小泉さんファン
党から指示された公約並べたトコロで
突っ込まれると、笑顔で頭をさげお願いするしかない山さん…。
これでは議員さんになられても大変です。

その他には海外向けの英語の字幕が意外と楽しめたり
アメリカ在住の監督さんだけに意図したものでしょうが。
ちなみに山さん…今年の春で任期満了。
出馬せず切手コイン商にお戻りのよう。
6月にはお子さんも産まれたそうです。

一市民として選挙について考えさせられたのと
マニュフェストや公約をもっと一般市民にも理解しやすい
ちゃんとした選挙公報を配ってもらいたいのと
何より意志のある候補者に立候補していただきたい。
今回も入れたい人がいない…というのが実情です。

→「選挙」CAMPAIGN商品を探す

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July 08, 2007

「初恋」

[DVD映画]★★★☆☆

あの“三億円事件”の新たなる捉え方が面白い。
あくまでも“実行犯”が女子高生という事で
犯人像には妙に真実味もあったりするのが興味深い。

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「初恋」

制作国:日本(2006)
監督:塙幸成
原作:中原みすず『初恋』(リトル・モア刊)
脚本:塙幸成
音楽:COIL

出演:
みすず(宮崎あおい)
岸(小出恵介)
亮(宮崎将)
ユカ(小嶺麗奈)
タケシ(柄本佑)
テツ(青木崇高)
ヤス(松浦祐也)
バイク屋(藤村俊二)

「初恋」オフィシャルサイト

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あの“三億円事件”の実行犯が実は女子高生だったという
面白い設定の物語だった。
“三億円事件”好きのワタシはちょっとワクワク…
宮崎あおいの体当たり演技に好感が持てるが
声と体型的にちょっと無理が…

1968年12月10日雨の中での犯行
1975年12月10日の公訴時効の報道はおぼろげだが
1988年12月10日の民事時効を迎えた時には
少しドキドキしたものだ…。

寂しい境遇の高校生のみすずは
幼い頃に母と一緒に出て行った兄の亮に会うため
ジャズクラブに出入りするようになり
そこで出会った岸に恋をした。

時代は学園紛争のまっただ中に突入し
権力に対する為に事件をおこす岸の思惑は
恋する人のために犯行を行うみすずにより成されたと思われたが…

あまりにも純粋でドジながら懸命なみすずの姿。
親に捨てられ兄を頼りそこで出会った初恋の人。
時代もあり感化されるのは17歳という
可能性も沢山あるが、不安定な年齢だからなのかもしれない。
何故だかこのハイティーン時代は誰もが
駄目な世の中を変える事が出来るように思え
行動を起こせる貴重な時代でもあったりする

とはいえ“三億円事件”の実行犯…
成人男性とはあまりにもかけはなれた体格と声。
あまりにも不自然であった…
バイクで雨の中を走るだけでいっぱいいっぱい…
少し無理が有り過ぎたかな。
小さな身体で雨の中自動二輪を扱う困難さだけは
十分伝わってくる…シートを引きずりながら
ヨロヨロ走る姿は印象的であった。

このシートをひっかけたまま走った偽装白バイは事実であり
その不用意かつどこか未熟さを感じる所から
高校生実行犯…というアイデアが生まれたのかもしれない。
時代に流されるメンバーには年代が
Bに出入りする彼らに感情移入は出来なかったが
ねつ造されたのでは…というあのモンタージュ写真や
数多くの遺留品があったにも関わらずの捜査の難行…
事件が国家権力でもみ消された…というのは
妙に真実実もあり興味深いものがある。

おひょいさん演じるバイク屋さんといい
集っていた若者達の行く末には
ちょっと物悲しさもあった。

B000FZENKS初恋 プレミアム・エディション
中原みすず 塙幸成 宮崎あおい
ハピネット・ピクチャーズ 2006-11-24

by G-Tools

初恋 スタンダード・エディション
中原みすず 塙幸成 宮崎あおい
B000IU38I8

初恋
サントラ コイル 岡本定義
B000F9UDK8

初恋
中原 みすず
4898150640

“三億円事件”を描いたドラマ&コミック
■ドラマ 「悪魔のようなあいつ」 - 1 レビュー
■ドラマ 「悪魔のようなあいつ」 - 2 レビュー
■コミック 「悪魔のようなあいつ」 レビュー

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July 04, 2007

「ゆれる」

[DVD映画]★★★★☆

幼い頃より信頼しきっていたものが
お互い一度ゆらいでしまうとやっかいなのかもしれない。
特に異性によってゆらぎは起こりうる…。

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「ゆれる」

製作国:日本(2006)
監督・脚本:西川美和
音楽:カリフラワーズ

早川 猛(オダギリジョー)
早川 稔(香川照之)
早川 勇(伊武雅刀)
早川 修(蟹江敬三)
岡島洋平(新井浩文)
川端智恵子(真木よう子)
検察官(木村祐一)
警部補(ピエール瀧)
裁判官(田口トモロヲ)

「ゆれる」オフィシャル・サイト

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田舎の実家で家業を継ぐ、石橋をたたいても渡れない生真面目な兄と
都会でカメラマンになり、揺れる吊り橋も平気に渡る奔放な弟。
母の葬儀に久しぶりに帰省した弟は
久しぶりに逢った家族や親族の中でも浮きまくり。
父親はちょっとした事ですぐ怒鳴る。
でも兄はいつも優しくそんな弟に接してくれる。
弟もそんな兄が自慢でもあり、大好きなのだった。

だが、実家のガソリンスタンドで
従業員の彼女と兄が仲良くしている所を見かけてから
兄弟の絶対的な信頼関係が崩れてゆく…
彼女は昔から弟に好意があったようで
弟が彼女を誘えば大人の関係にはあっと言う間…
渓谷へのドライブを兄が提案し
3人は吊り橋のかかる川に来た。
子供のようにはしゃぐ兄…
冷静に、ファインダー越しに自然を楽しむ弟…
兄弟の間に挟まれた女がとった行動でとある事件が…

殺人罪に問われる兄を何とか救おうとする弟。
そして父親の兄弟である叔父の弁護士。
だが、優しくて生真面目すぎる兄にもずっと悩みはあったのだ。
真実と虚偽。記憶すらあちらこちらに揺れた結果
弟は何年も自分の虚偽に目を閉じた。

ガソリンスタンドの従業員のおせっかいで
ふと想い出した母親の形見の8ミリフィルムにを観て
彼はやっと目をそらしていた真実に気付く。
女性の存在でゆれた兄弟達は
再び女性の残したものでゆり戻されたのかもしれない。
言葉よりさりげない光景が物語る。

特に田舎で顕著なのだが、
主に長男とその他の兄弟の間には大きな溝があったりする。
長男やそれに準じるものには
生まれながらにして跡継ぎという使命があり
それ以外の子供には親の遺産は入らぬが
その重苦しい期待はかからない。
必然的に跡継ぎになったものは
その一家全体を背負い使命をまっとうすべく
自分を押し殺してしまう傾向にある。
幼い頃より年長者であるがゆえに周りを気遣い
選択の余地無く実家で我慢を重ねてきた兄の苦悩。
それとは真逆に自分の居場所を探さなければならなかった次男。

昔気質の頑固な父の間に入り自分を守ってくれた
兄であり母親的な絶対的な愛情を信じていたゆえに
一度ゆらいだ信頼はなかなか元に戻れない。
兄も一瞬ゆれた心での発言の中で消えた信頼が戻るのを
罪を償いながらじっと待ち続けたのだろう。
オダジョー、新井くん、伊武さん…
そして何といっても香川さんのあの笑顔が印象的。
名優ぞろいで気が抜けない緊張感がある作品だ。


B000KIX658ゆれる
オダギリジョー 西川美和 香川照之
バンダイビジュアル 2007-02-23

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ゆれる オリジナルサウンドトラック
カリフラワーズ
B000FZDMIC

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「麦の穂をゆらす風」

[DVD映画]★★★★☆

アイルランド独立戦争を通して描かれるのは
ある意味普遍的な戦争の情景であり普通の人々個々の感情。
だからこそ、人の心に語りかけるのかもしれない。

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「麦の穂をゆらす風」

製作国:イギリス/アイルランド/ドイツ/イタリア/スペイン(2006)
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
音楽:ジョージ・フェントン

デミアン(キリアン・マーフィ)
テディ(ポードリック・ディレーニー)
ダン(リーアム・カニンガム)
シネード(オーラ・フィッツジェラルド)
ペギー(メアリー・オリオーダン)

「麦の穂をゆらす風」オフィシャル・サイト
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戦争、紛争、ゲリラ線…
1920年のアイルランド独立戦争をとおして見えてくるのは
現在も続いている人間の悲しい本能と愛情の深さと脆さ。
これらが庶民の目を通してストレートに描かれるので
どうしようもないもどかしさが心に響く。

アイルランドの片田舎の農家ではじまりそして終わるのだが、
その間に起きた悲惨な出来事の数々…
戦争だから…それだけで片付けてはいけない
重い悲しい何ともいえないもどかしさが胸をしめつける。
1919〜1921年のアイルランド独立戦争を
1920年のある日から、とある兄弟の目線で丹念に描いている。

アイルランドへの英国の侵略に対抗するゲリラ戦。
少しもの寂しいけれど美しい緑の中で銃を構えて訓練する
農民や少年などの若い一般庶民で結成されている
アイルランド義勇軍〜アイルランド共和軍(IRA)達の姿。
犠牲になりながらも彼らを支え家を守り、強く立ち向かう女性達。

一機関士であったダンと出会ったあの事件。
戦争から逃げて医者になるはずだったデミアンが
幼馴染みを裏切り者として処刑したり
元同胞と闘わねばならなくなった経緯は
運命にしても悲しすぎる。
皆で投獄された時、代表者である「テディ・オドノヴァンは誰か?」と
英国軍に問われた時、すかさず「自分だ」と答えたデミアンだったのに…
仲間を裏切る事…真面目なデミアンの苦悩。
兄テディとの意識のずれが、更に弟の運命を変える…

野山の広がるアイルランド南部の町、コークを舞台に
時代に翻弄された兄弟を中心に
淡々と身近なエピソードとしてアイルランド独立戦争が描かれる。
休戦、そして、念願のイギリス・アイルランド条約。
だが、この時の条約による北アイルランドの帰属問題により
その後の革命運動を二分し新たな闘いを生み
さらにその後何十年もの間IRAは
形を変えいくつもの派閥に分裂しながら
現在も組織は存在している…

冒頭で村人達が可哀想なミホールのために歌った
映画のタイトルでもあるアイリッシュトラッドの曲
“THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY”(麦の穂をゆらす風)
これを観終った後に再び歌詞を確認しつつ聴いてみると
自分の腕の中で恋人を失った、若い兵士の詩なのだ。
祖国のための闘い、恋人の死への恨みの闘い…
何ともいえない苦しみが、美しいメロディと共に流れ出る。

アイルランド人もイギリス人も他の国の人達も
個々では誰も闘いたいわけでも裏切りたいわけでもない。
そうしなければしょうがない状況
自分や家族や同胞が守れないから
命を落とした者に顔向けができないから
若い世代の未来が見えないから…なのだ。
この映画には戦争や人間の本質を問われている気がした。

世界中でくり返されている戦争や紛争
そして近年の数多くのテロ事件…
85年も前の事件だが、現在にまだまだ繋がっているのだ。
カンヌでパルムドール賞をとったの
井筒監督大絶賛(笑)もうなずける。
知っているようで知らなかったアイルランドの歴史。
ちなみに役者さん達は皆アイルランドにゆかりのある人達。
キリアン・マーフィーの変化してゆく切ない瞳がとても印象的であった。

B000NIVIPA麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション
キリアン・マーフィー ケン・ローチ ポードリック・ディレーニー
ジェネオン エンタテインメント 2007-04-25

by G-Tools

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July 03, 2007

「ジャーヘッド」

[DVD映画]★★★☆☆

介入戦争の虚しさを描いた異色の戦争映画。
若い兵士達の青春に大きな穴を開けたのは
湾岸戦争のとある1ページにすぎない。

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「ジャーヘッド」

制作国:アメリカ(2005)
監督:サム・メンデス
原作:アンソニー・スオフォード
   『ジャーヘッド アメリカ海兵隊員の告白』(アスペクト)
脚本:ウィリアム・D・ブロイルズ・Jr
撮影:ジャー・ディーキンス
音楽:トーマス・ニューマン

出演:
アンソニー・スオフォード(ジェイク・ギレンホール)
アレン・トロイ(ピーター・サースガード)
クリス・クルーガー(ルーカス・ブラック)
カジンスキー中佐(クリス・クーパー)
サイクス三等曹長(ジェイミー・フォックス)

「ジャーヘッド」オフィシャルサイト(英語)

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とにかく虚しい…そんな気分になるこの映画。
ワタシの大好きなジェイク・ギレンホール君主演の
異色の戦争…いや青春映画とも言えるかも。

見た目がジャーに似ているという、海兵隊のヘア。
そして頭の中が空っぽで虚しい…という意味も。

上官や仲間うちでのいじめ、
仲間を失うような厳しい訓練をし、
狙撃兵になったアンソニー。
だが、明日死ぬかも知れぬ彼らのする事といったら
自慰や馬鹿騒ぎばかり…
ごく普通の青年だった彼はいつしかシューティングにはまり
いつか人を撃ちたい、敵を殺したいと願うようになった。
だが湾岸戦争の前線に居た彼は
1発も銃を撃たずして無事に帰還。

敵ではなく味方に攻撃される。
目の前の敵を撃ってはいけないと命令される。
生と死の背中合わせなのに、馬鹿騒ぎの日々。
自分達は何のために闘っているのか?
何のために訓練してきたのか?
何のためにこの戦場に存在しているのか?
若い兵士のアイデンティティは崩れてゆく…
映画の中で『地獄の黙示録』の映像や音楽が多用されるのは
そう…ベトナム戦争の頃と何も変わっていないのだ。

彼らはそういった経験をしてまた元の生活に戻って行った。
でも、銃を握った感触は忘れず、心は戦地に置いたまま…

戦争はとても愚かで虚しい。
平和な生活に戻った若い兵士の心にもポカリと穴を開けてしまう。
ジェイクくんの大きな青い吸い込まれそうな瞳を観ていると
そう思えてならないそんな映画だった。
介入戦争やテロに巻き込まれたりと
徴兵制の無い日本だからこそ、色々考えてしまう。
とても虚しく…そして少し国家というものが怖くなる。

B000F6IL14ジャーヘッド プレミアム・エディション
ジェイク・ギレンホール サム・メンデス ジェイミー・フォックス
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2006-07-28

by G-Tools

映画『ジャーヘッド』オリジナル・サウンドトラック
サントラ ボビー・マクファーリン
B000CSUWLM

ジャーヘッド-アメリカ海兵隊員の告白
アンソニー・スオフォード 中谷 和男
475720972X


「ドニー・ダーコ」でファンになったのですが
ずいぶんおっさんになってきたジェイクくん。
でもやっぱり気になる存在です。

■映画「ドニー・ダーコ」レビュー

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September 12, 2006

「ナイロビの蜂」

[DVD映画]★★★★☆

蜂ってそういう事だったのだ…なかなか洒落た邦題だ。
アフリカ大陸でのエイズ問題の陰にある人権に関わる陰謀と夫婦愛。
サスペンスタッチで描かれているのでどんどん引き込まれた。

原題は「THE CONSTANT GARDENER」
残酷な現実と悲しい結末。
美しいアフリカの大地と人々と音楽、それと裏腹の極度の貧困。
強く深い夫婦愛。人間の命の尊さ。
これらがフラッシュバックが多用された映像となり、
サスペンスタッチで緊迫感をあおり、
心になだれのように流れ込んでくる期待以上の作品だった。

原作はジョン・ル・カレの同名ベスト・セラー「ナイロビの蜂」。
監督は「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス
この作品でレイチェル・ワイズは2005年アカデミー助演女優賞を獲得した、
イギリス映画ナイロビの蜂
アルベルト・イグレシアスの紡ぎ出す民族的な音楽も非常に印象深い。

* * * * * * * * * * * * * * * *

エキゾチックな美しさのある奔放で激しい気性、生まれながらの革命娘であり
慈善活動をしているテッサ(レイチェル・ワイズ)、
常に平常心を忘れないジェントルマン、
庭いじりの好きな英国の外交官ジャスティン(レイフ・ファインズ)。
この夫婦は夫ジャスティンの転勤でナイロビへやってきたのだ。

「じゃ、二日後に」
 
彼らが軽く抱き合い別れ、次に出会ったのは…
なんと遠く離れた土地の死体置き場だった。
いわくの多い妻テッサの死を探るうちに明らかになったのは、
人間の尊厳に関わる恐ろしい事実。

妻の死、怪しい交友関係、“スリー・ビー”の謎。
じわじわと明らかになる惨い真実と
妻のどこまでも真っすぐな正義感と愛情。
冷静沈着なジャスティンだったが、
どんどん妻の意思を継ぐかのように、
身の危険を顧みず謎に立ち向かってゆく。
観ている者は、それに呼応するように
アフリカの過酷な現実におののきながら、
どんどんこの物語のエピソードの洪水に溺れ、
その流れに吸い込まれる…。

こんな惨く悲しい出来事が許されて良いはずではない。
憤りと共に、無力で無関心だった自分が悲しくなる。
そして、ジャスティンの
 
「テッサが家だった」
 
この一言にじ〜んときてしまった。
ジャスティンに信頼され愛された正直すぎるテッサ。
そのテッサもジャスティンを信頼し自分流に愛を貫き、
夫もその愛を受け入れ、妻と同化するかのように突き進む。
なんて夫婦愛なのだろうか!
劇的な二人の出会いから、あまりにもあっけない別れ。
短い間だったが二人は幸せなのかもしれない。
お互い帰る家を見つけたのだから…。


ちなみにこれを観に行ったのはメンズデー!
実はおじ様達に囲まれて観る事となった!!
エンドロールが流れると鼻水をすする音が…
男の方もじ〜んとされたのかしら?
しかしながらこのメンズデーっつ〜のもいいですね〜!!!
最近お小遣いの少ないお父さん達や給料の少ないヤング達の強い味方かも。
どんどん映画館もコレを採用してあげて欲しいなぁ。


B000HEZ4BYナイロビの蜂
ジョン・ル・カレ ジェフリー・ケイン フェルナンド・メイレレス
日活 2006-11-10

by G-Tools

「ナイロビの蜂」オリジナル・サウンドトラック
サントラ ロンドン・セッション・オーケストラ アユブ・オガダ
B000EZ87TM
ナイロビの蜂 オリジナル・サウンドトラック【送料無料】

ナイロビの蜂〈上〉
ジョン ル・カレ John Le Carr´e 加賀山 卓朗
4087604500

ナイロビの蜂〈下〉
ジョン ル・カレ John Le Carr´e 加賀山 卓朗
4087604519


「ナイロビの蜂」オフィシャル・サイト

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September 10, 2006

「バッシング」

[劇場映画]★★★★☆

小林政広監督の真骨頂?エンターテイメント性はゼロ!
極力ドキュメントタッチで描かれた、
重いテーマだがなかなか見応えのある作品。


やっと観ることができた!
公開まで長い道のりだったバッシングだ。
小林政広監督が2005年のカンヌでコンペティションに出品、
レッドカーペット歩いたのだが、結果賞は取れなかったが
報道され話題になった問題作。
その後、日本ではなかなか公開が決まらず、
昨年の夏の第6回東京フィルメックスでグランプリを受賞し、
本年2006年6月やっと渋谷のイメージフォーラムでの劇場公開が開始され
その後各地で細々と公開されている。

非武装地帯へボランティア活動に行っていた有子(占部房子)は
誘拐され人質にされたのだが、日本政府のおかげで無事帰国。
だが、彼女ととその両親が、自己責任について有子を批判
周囲の人々から“バッシング”を受けるその経緯を
ドキュメントタッチで描いたちょっと重い作品。
もちろん小林作品、予算は、無い。
いつもの北海道ロケで、いつもの淡々とした撮り方だ。
だが、この作品のインパクトは…いつもと異なった。

小林フリークとして、これが話題になり評価されたというのは納得。
これまでの作品は感情移入出来ないというかさせないというか…
そういうシュールな世界を妙にリアルに描いていたのだが、
今回はネタがタイムリーでリアル(フィクションだが)。
主人公の有子やその父(田中隆三)、義母(大塚寧々)、
有子を解雇したホテルの社長(香川照之)など、
彼らを敬遠、中傷する人々は決して我々から遠くない存在だ。
いつ自分がその中の誰かになるかもしれない…そんな脅威、
観るものをいやがおうでもこの問題の中にひきずり混む勢いがあるのだ。

「この国じゃ、皆が怖い顔をしている。」
「皆が喜んでくれる、あの顔が見たい」

失敗だらけで居心地の悪い日本での生活から逃げ、
海外の非武装地帯でのボランティア活動に生き甲斐を感じ、
そこにしか自分の存在価値を見いだせない有子の行動は
余りにも安直で、必ずしも正しいとは言えない。
自分の人生を投げ打って苦しんでいる人々に手を差し伸べるのは
なかなか出来ない殊勝な行動だ。
しかも、行っているのは“人助け”なのだ。
彼女の人生だから、彼女が生きたいように生きれば良い。
ただ…彼女の動機は家族を追い込んでまでの大義なのだろうか?
自分の行ったことで周囲にどんな影響を与えるのか、
国の警告をふりきって、紛争地帯に行くという事は、
もはや一個人としてだけでなく、
誰もが母国を背負っているという事を自覚をしていない。
そんな彼女には理想論や大義名分では済まされない
個人的にも悲惨な結果が待っていたのだが…

だが、ここに描かれているのは
そんな彼女とその家族の受けた、
匿名での“バッシング”
権力をかざしての“バッシング”
直接手を下す“バッシング”
社会からの“バッシング”
人が人を追いつめる醜い行為だ。

決して全面的に褒める事は出来ない有子の行動だが、
凶悪犯罪を犯したわけではない。
どちらかといえば現地で凶悪犯罪にあった被害者である。
命を落としたらヒーローであった。
国の…国民の援助で帰ってきたらまるで犯罪者扱い。
この皮肉な結果で何を学ぶべきだろうか。

あらゆる登場人物の立場にたってみると
現代社会のあらゆる混沌とした矛盾が浮き彫りになり、
有子の痛々しさが際立ちまくる。
こんなに深く考えさせられた小林作品は初めてで
とても新鮮だった。
 
 
元ミュージシャンの小林監督の歌う「バッシング」エンディング曲
寒かったころ
小林政広
B000FDF124

「バッシング」オフィシャルサイト

 
小林政広監督の初期3作品のDVDが2006/7/29発売された

クロージング・タイム ◆20%OFF! クロージング・タイム

海賊版=BOOTLEG FILM ◆20%OFF! 海賊版=BOOTLEG FILM

歩く、人 ◆20%OFF! 歩く、人

映画監督小林政広の日記 映画監督小林政広の日記
小林政広監督のブログ本。

神楽坂映画通り 神楽坂映画通り
小林監督の自伝本。

→「歩く、人」レビュー
→「KOROSHI 殺し」レビュー
→「フリック 完全版」レビュー

■小林政広監督の映画レビュー

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February 04, 2006

「スケルトン・キー」

[DVD映画]★★★★☆

ジーナ・ローランズの演技が怖いのなんの!
閉鎖的なアメリカ南部の文化とそこに潜む歴史の暗部。
日本未公開ながらなかなか見応えありのこの作品、
ストーリーが進むにつれてどんどん尻上がりにドキドキ度アップ!!
終盤の手に汗にぎる展開にはびっくりだ!!!

監督はイアン・ソフトリー
脚本を米版「リング」シリーズなどのアーレン・クルーガーが手掛けた
2005年制作のアメリカの作品「スケルトン・キー」。
主演はケイト・ハドソン。そして、何と言っても、
ジーナ・ローランズやジョン・ハートの演技が重厚で素晴しい!
アメリカ南部、ルイジアナ州ニュー・オリンズを舞台に、
その地方の歴史と独自に根付いた文化を鍵に繰り広げられるサスペンス・ホラー。
 
 
ホスピスで働く看護士のキャロライン(ケイト・ハドソン)は、
今日も1人の患者を看取った。
だが、無くなった患者に対しての職場の事務的な対応に嫌気がさしている…
そんな時に新聞の求人広告での住込看護の職を見つけ、
ルームメイトのジル(ジョイ・ブライアント)の忠告をも軽く聞き流し
ルイジアナの沼地にある勤務先の屋敷へ面接に向かった。
うっそうとした沼地の中にある広大な敷地、30部屋以上もある大邸宅には、
老婦人のヴァイオレット(ジーナ・ローランズ)と
脳梗塞で身動き取れず話しも出来ない夫のベン(ジョン・ハート)が住んでいた。
ヴァイオレットは南部出身でないキャロラインを気に入らないのだが、
仲介に入っていた青年弁護士ルーク(ピーター・サースガード)の強いすすめで
キャロラインはこの屋敷で働く事に決定。

さて、彼女はいよいよ屋敷に住み込む事となったのだが、
まだキャロラインを気に入っていない様子のバイオレットから
ぶっきらぼうに屋敷とベンの介護について説明され、
“全ての部屋を開けられる合鍵”をもらう。
ただでさえ南部の農園の古い大邸宅…
いわくのありそうな怪しい雰囲気とこちらも無気味な周辺の住人達。
でもキャロラインにとっては理想の看護士の仕事。
悲しげな表情のベン、少しずつだが会話の増えてきたヴァイオレット
時々やってくる弁護士のルークを頼りに、新生活が始まった!!!
 

以下ややネタバレ有り。この作品を楽しむため、
これから観る方はこの先を読まない事をお勧めします

 
* * * * * * * * * * * * * * * *
 
そんなある日、キャロラインはヴァイオレットに言われて
庭に植える花の種を取りに2階へ登った時、
ふと、妙な音が聞こえる屋根裏部屋に気づく。
しかもその小部屋の奥には合鍵でも開けられない扉を発見!
ヴァイオレットにその事を訊ねると、屋敷の悲しい歴史を少し教えてくれた。
だが、こっそり後で再度チャレンジしてみた所…その中にあったものは…
屋敷のアルバム、奇怪なものが入っている瓶や人形や本、そして古いレコードなど
怪しげな儀式に使うようなものばかり…。
ニューオリンズへ戻ってこの事をジルに相談すると、
この地方独特の風習について教えてくれた。

リンチで無くなった奴隷の夫婦が写るからと鏡が隠されているこの屋敷、
その恐ろしい歴史や次々と起こる不思議な出来事。
不思議な習慣“フードゥー”。
この屋敷に不審感を抱きつつも妙に興味をそそられるキャロラインは、
亡くした父親と重なるベンを何とか救いたいがために、
ついに禁断の世界へ足を踏み入れてしまったのだ…
 
 
前半の意味不明で乱暴なカットのひとつひとつが後になって効いてくる!
“赤いレンガくず”“ドーナツ盤のレコード”“開かずの扉”そして“鍵”
“オイスター”“ガンボ料理”“鏡”“縫い閉じられた体のパーツ”
“薬”“シーツの文字”“写真立てに重ねて入った古い写真”
“奴隷へのリンチ”“『アイコ・アイコ』”
あぁそうだったのか!!何てことだ!!!まさか!!!!!
のったりした導入部分からじわじわと攻めてきて
クライマックスに至るやドキドキハラハラのもはや応援系への展開♪
“生贄”“儀式”“恐怖の館”
と古典的な手法ながら巧妙に作られおり、
ふんだんにちりばめられたあらゆる伏線がピタッと収まる所に感心する。
そのひとつひとつに「なるほど」納得しながらも、
観た後は重い気分になるのもこの作品の特徴だ。

それは、もちろんアメリカの南部の悲しい歴史が背景にあるからなのだが、
アンクルトムの小屋」などで子供の頃に読んだ本を思い出した。
“プランテーション農園”“奴隷制度”
先住民族とヨーロッパとアフリカ融合した特異な文化。
“バーボン・ストリート”“フレンチ・クオーター”
ニューオリンズの街なみからもそれを知る事は出来る。
だが、宗教である“ヴードゥー”は知っていたが、
実践的な呪術である“フードゥー”というものは初めて知った!!
彼らは精霊を信じ、信じる事によってその効果を得るものらしい。
特典映像にある“恋まじない”や“こっくりさん”などは実践的な呪術と言えよう。
そもそもアニミズムの国である日本人にとっては意外と馴染み深い慣習だ。

亡くした父との過去があり選んだ職業が看護士だったゆえに
この極めてダークな世界に関わったゆえに、
思いもかけない経験をする事になる若いキャロラインの職業意識と正義感。
お約束だがこれが恐怖のきっかけとなる。
キャロラインを演じるケイト・ハドソンの繊細な演技と
力強い美しさ(実は出産後だったそう)!!
そして、なんと言っても大御所女優と俳優の名演技!!!
怖さ満点!屋敷の女主人を演じるジーナ・ローランズの眼力と
堂々たる体を張った演技と人物像の豹変ぶり、
動かない体で密かに助けを求める可哀想な老人ジョン・ハートの
訴えるような悲しげな眼差し、
ガソリンスタンドの怪しい盲目の老女、マリオン・ジンザーの目!!!
往年の各役者のその絶妙なる演技がたまらない!
少ない登場人物ながら彼らの演技力が、
この作品のクオリティーを高めているのは確かだ。

ローズマリーの赤ちゃん」を彷佛させるオカルト感。
特別難解な作品ではないが、再度観てパズルをはめなおしてみるのも楽しい。
エンドロールのプレスリーの曲すら…なるほどね!!!
 
[超もり沢山の特典内容]
・イアン・ソフトリー監督による本編音声解説
・未公開シーン集(イアン・ソフトリー監督による音声解説付き)
・鍵のかかったドアの後ろに −メイキング・オブ・「スケルトン・キー」
・「フードゥー」と「ブードゥー」についての解説
・レシピと儀式:パーフェクト・ガンボの作り方
・バイユーのブルース
・ケイト・ハドソンのゴースト・ストーリー
・荘園での生活
・「スケルトン・キー」のキャスティング
・ジョン・ハートの物語
・“幸福”と呼ばれた家
・ジーナの恋まじない
・「キング・コング」予告編

スケルトン・キー
ケイト・ハドソン イアン・ソフトリー ジーナ・ローランズ
B000BK4D1Q

最近では息子のニック・カサベテスの「君に読む物語」でも出演していたが、
彼女の亡き夫ジョン・カサベテス監督の作品での強烈な演技が大好き!
■映画「フェイシズ」レビュー
■映画「こわれゆく女」レビュー
■映画「グロリア」レビュー

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June 04, 2005

「ボーイズ・ドント・クライ」

[DVD映画]★★★★☆

とても一言では語る事が難しい作品で、
なかなかレビューを書くため再見することが出来なかった。
良きに、悪きに、観た後重い気分になるから…。

先日「ミリオンダラー・ベイビー」のオスカー受賞、
この作品「ボーイズ・ドント・クライ」で主役を演じた
ヒラリー・スワンクの海外でのインタビューを観て、
改めて再チャレンジしてみる気になった。
母親と二人で、女優を夢みて映画の街へ移り住み、
ビバリーヒルズ青春白書」で注目を受け、
この作品に出演してからの波瀾万丈の人生。
個性的なルックスで笑顔で語るヒラリーを観ていると力強さを感じた。

アメリカで実際に起きた殺人事件をもとに製作された、
公開当時はまだ聞き慣れなかった“性同一性障害”の主人公の
悲しい運命を描いた、1999年アメリカの作品。
監督は女流監督キンバリー・ピアース。これが彼女の初の劇場用長編映画。
主演のヒラリー・スワンクは第72回アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞など
最優秀主演女優賞を受賞した。


1993年、ネブラスカ州リンカーン。
20歳になるブランドン・ティーナ(ヒラリー・スワンク)は、
従兄でゲイのロニー(マット・マクグラス)に手伝ってもらい、
完璧な男に見える格好をして、スケートホールへ向かう。
彼女はいわゆる同性愛者ではなく“性同一性障害”であった。

ロニーの警告をふりきって、恋する女の子とラブラブに…
だが、あとでブランドンが女とバレ、女の子の家族に怒鳴り込まれる。
落ち込みバーで飲んでいたブランドンは、
そこでヤケ酒を飲む女の子キャンディス(アリシア・ゴランソン)、
一見気のいいマッチョな男ジョン(ピーター・サースガード)、
彼の刑務所仲間(ブレンダン・セクストン3世)らと知り合い、
「パーティをしよう」と彼らの地元フォールズタウンへ向かう事に…。
そこでカラオケを歌う、彼らの仲間の女の子…金髪で青い目を持つ
ラナ(クロエ・セヴィニー)に一目惚れしてしまう。

ラナの家庭は、ラナの母親(ジャネッタ・アーネット)と、
その愛人で元詐欺師のジョン、そしてラナの3人で暮らしていた。
ブランドンは未婚の母キャンディスの家に居候し、積極的にラナにアプローチ。
ラナも不思議な魅力のある優しいブランドンに、どんどん惹かれてゆく。
二人がついに愛するようになった時、とある交通事故が発端で、
ブランドンがついていた嘘と、隠していた秘密がバレてしまった!!!
これが悲劇の幕開けになる。

女性としてでは無く、男性として女性を愛したい。
“性同一性障害”の女性ブランドンはそれが最も自然に感じ、望む事なのだ。
男として、人間として、ブランドンを愛したラナ。
ブランドンのカミング・アウト後もラナは言う。
「あなたにも同じように感じでもらいたい。どうやって愛し合えばよいの?」
医者に通いこの“性同一性障害”を知り、お金さえあれば男性に性転換したかった、
男性になりたくてたまらなかったブランドン。
その憧れた男性によって、あまりにも酷い仕打ちを受ける事になるのだ。

アメリカの排他的な田舎町。
従兄のロニーはブランドンに“フォールズ・シティの連中はオカマを殺す”と
警告していたが、それでも本能に忠実に生きようとしたブランドン。
彼?のついた嘘を信じてよそ者を受け入れていた優しい人々に真実が暴露された時、
他所者、嘘つき、異端者のブランドンは化け物として扱われたのだ。
特に男性達は女と解った途端に態度を急変。実に身勝手で劣悪な行動に出た。
対する女性達、特に若いラナとキャンディスは
戸惑いながらもブランドンを守ろうとする。
ラナの母親は一度信頼したからこそ、
娘を守る事だけにブランドンを嫌悪したのだろうか…。

ブランドンの素直すぎる行動は、手放しに誉める行動であったとは思えないし、
あまりにも不用心で、時期早々だったのかもしれない。
しかも、都会ではなくアメリカの閉鎖的な田舎町であった事も非運だった。
ただ、この事件により“性同一性障害”が世に知れ渡る事になったのも事実。
以後、この問題はマスコミでも大きく取り上げられ、
現在日本でも“性同一性障害”は広く認知されている。
“自分の持って生まれた性に違和感がある”
“異性に恋愛感情を抱けない”
“異性として同性を愛し、愛されたい”

そう思っている人は意外と少ない数では無いと思う。
ブランドンの無謀な行動は同じ思いに悩む人々に“自然に生きる道”を与え、
彼等を排除してきた社会に、その命をもって一石を投じたのだ。
とはいえ実際は、諸問題も多いそうだが…。

人は男性・女性、両方のホルモンを持っている。
近親者での“性同一性障害”が起こる可能性は勿論誰にでも有るわけで、
もし、自分がブランドン、もしくはラナ、ラナの母親であったなら…。
それを考えながら観て欲しい。
もし身内であれば、勿論とまどうだろうが…。

ガール・ハント意外でも、とにかく笑顔を作りまくるブランドン。
途中流れる、ザ・キュアーの「ボーイズ・ドント・クライ」。
ブランドンは泣かないように頑張る。
男の子は泣いちゃだめだと暴行を受けボロボロの顔でも笑顔をつくる。
エンディングで流れる「ブルーエスト・アイズ・イン・テキサス」
恋するラナの歌った曲。
彼女に出会え、彼女に愛され、ブランドンは幸福だったと思いたい。


オフィシャル・サイト
http://www.foxsearchlight.com/boysdontcry/


ボーイズ・ドント・クライ
ヒラリー・スワンク キンバリー・ピアース
クロエ・セヴィニー ピーター・サースガード
B0006TPEWE


もちろん「ブルーエスト・アイズ・イン・テキサス」も収録
ボーイズ・ドント・クライ
ニナ・パーソン&ネイサン・ラーソン ネイサン・ラーソン ニナ・パーソン ザ・ボビー・フラー・フォー
B00005GYCN


爽やかなのはこの「ボーイズ・ドント・クライ」1曲のみ。
あとは暗くてドロドロなUKロック。そこが好き♪
輸入盤
Boys Don't Cry
The Cure
B000002H5V

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March 31, 2005

「ブラザーフッド」

[DVD映画]★★★★☆

正直、愕然とした。
強烈な戦場の地獄絵図。敵も見方もごちゃまぜの肉弾戦が目の前で繰り広げられる様。
プラトーン」とかあちら系の戦争映画に近い映像に仕上がっていた。
とにかく戦争の醜い実体、狂気、悲惨さ、が伝わってくる作品「ブラザーフッド」。

監督は「シュリ」のカン・ジェギュ
出演は「友へ/チング」のチャン・ドンゴン
日韓合作ドラマ「フレンズ」で深田恭子と共演したウォンビン
先日惜しくも亡くなった「バンジージャンプをする」のイ・ウンジュ
ラスト・プレゼント」のコン・ヒョンジン
オールド・ボーイ」のチェ・ミンシク、「火山高」の不良高校生キム・スロなど。
2004年、韓国本国でも大ヒットした。

1950年、ソウル。
家族想いの靴磨きジンテ(チャン・ドンゴン)と
高校生のジンソク(ウォンビン)兄弟は、そば屋を営む母親を支え、
ジンテの婚約者ヨンシン(イ・ウンジュ)とその弟妹と共に、
貧しいながらも平和に暮らしていた。

6月25日朝鮮戦争勃発。家族はソウルから避難していたのだが、
突然兄弟は18〜30歳の男子という事で、避難民ながら徴兵されてしまう。
体弱い弟ジンソクを大学で学ばせる事に母親と共に夢を託していた兄ジンテは、
手柄を立て太極勲章を授与され、特例により除隊を認められた親子がいる、
という上官の言葉を信じ、自分を犠牲にしてでも弟を守ると決意。
地雷の設置や奇襲など、危険な任務に率先して志願するようになる。
手柄をたて出世するにつれて“兵士=殺人マシーン”へと変わってゆく兄。
ジンソクはそんな兄の行動が理解出来ない。
そして戦争と数奇な運命は何度も彼等兄弟、そして家族を元の同僚を
醜い争いへと巻き込んでゆくのだ。
ただ弟を守りたい一心で戦う兄。
それを失望しつつも兄からの愛情を受けて悩む弟…。

だが“戦争”は戦場だけでなく、市街地、農村と
あらゆる所に暗いねじれた影を落とす。
兄弟を待つ家族ですら、知らず知らずのうちに騙され、利用され、
ひょんな事から“敵扱い”標的になってしまうのだ。
そして、極限状態では、敵や味方、思想や愛国心などは無意味なものとなる。
太極勲章をもらってもそれは同じ事。昨日の味方も明日は敵へと化す。
愛する者の死によって、命がけで信じていたがゆえに怒り復讐に燃えるのだ。
山村での虐殺。そしてゲリラ的な攻撃。戦場への慰問。
所々で「地獄の黙示録」を彷佛させるシーンがあった。何処も同じだ。
同じ言葉を話す人達との戦い、昨日は同志であった者、そして肉親…虚しい限り。

普通に家族と共に平和に暮らす。
それがある日一転し、国のために命を捧げる事を良しとされ、
敵とされる者を殺すことすら良しとされる“戦争”。
この作品ではその悲惨さが、戦場での生々しい痛みが、リアルに描かれている。
家族の待つに家に帰りたかったヨンマン(コン・ヒョンジン)。
どの兵士もそう思っているのに、
目の前の敵=人間を殺さねばその願いすらかなわない。
ジンソクは言う「これが全部、夢だったらいいのに…。
弟が生き残ってくれれば例えに憎まれてもいい、自分は鬼畜にでもなろうという、
兄の異常なまでの自己犠牲の愛情は弟には有難迷惑的でもあり、当然誤解も生じる。
これは家族を第一に考えた兄だからこその愛であろう。
学歴コンプレックスもあったのだろう、これまでも弟のために生きてきた兄。
だが、きっかけは何であれ
“英雄になった”自分に自信を持ち何かが狂い始めた事も確かだ。
元同僚の少年への対応だけは理解し難い部分があった。
だがその栄誉の勲章ですら、あっという間に覆る。
なんて虚しい栄光だろうか。

兄にもらった万年筆が兄弟を繋ぐ。
次に会う時に返してもらうよ…。」機会を作りたかったジンソク。
だが、次は…50年も後の事になるのだった。

ブラザーフッド・オフィシャルサイト
 ↓
http://www.brotherhood-movie.jp/

ブラザーフッド プレミアム・エディション
チャン・ドンゴン カン・ジェギュ ウォンビン イ・ウンジュ

by G-Tools

ブラザーフッド コレクターズBOX (完全予約限定生産)
チャン・ドンゴン カン・ジェギュ ウォンビン イ・ウンジュ

ブラザーフッド オリジナル・サウンドトラック(CCCD)
サントラ BoA

関連書籍
TJムック「ブラザーフッド オフィシャルBOOK」

『ブラザーフッド』シナリオ写真集
カン・ジェギュフィルム

「韓流スターの時代2」ブラザーフッド
~ウォンビン/チャンドンゴン



 

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March 06, 2005

「突入せよ! あさま山荘事件」

[DVD映画]★★★☆☆

『君、ちょっと軽井沢行って指揮してこいや。』
警察庁 長官の後藤田の言葉。
その一言で218時間にも及ぶ『ヘラクレスの選択』をする事になった
当時、警察庁 警備局付警務局監察官の佐々淳行。
まさか連合赤軍との銃撃戦の戦陣に立つことになるなんて…。
数年前にテレビで当時の事も語っておられた初代内閣安全保障室長である佐々さんは、
にこやかで、とても飄々とした人物であった。

1972年2月19日、長野県南軽井沢のあさま山荘に、連合赤軍のメンバー5人が
管理人の妻を人質に取り、立てこもる事件が起きた。
原作、佐々淳行によるノンフィクション「連合赤軍「あさま山荘」事件」を元に、
警察サイドから事件を描き出した作品「突入せよ! あさま山荘事件」である。
監督・脚色は「狗神」「金融腐蝕列島 呪縛」の原田眞人
役所広司演じる佐々監察官と、原田眞人監督の息子である遊人演じる後田巡査の
人間的な演技が心に残った。
妻を人質にとられた山荘の管理人を松尾スズキがこれまた淡々とした深い演技。
更にミュージシャンの宇崎竜堂が警視庁の管理官を、
同事件までの犯人サイドで起きた同志リンチ事件を描いた「光の雨」に出演している、
池内万作がこちらには警視庁の通信技官の役をと、
キャスティングも小技が効きつつ、ここには記載出来ない程の豪華なラインナップだ。

後藤田長官(藤田まこと)の『6つの方針』
1. 人質は必ず救出すること。
2. 射殺すると殉職者になるため、犯人は全員生け捕りせよ。
3. 人質交換の要求には断固応じない。
4. 火気、高性能ライフルの使用は警視庁許可とする。
5. 報道陣とは良好な関係を持て。
6. 警察官に犠牲者を出さないように慎重に。

これにのっとり作戦を遂行しようと佐々監察官は努力すれども、
警視庁と長野県警のつまらない内部対立による指揮系統の崩れ、
事件に対するそれぞれの温度差、騒ぎたてるマスコミ、野次馬など、
問題が起きてばかりで人質の安否すら確認出来ない。そして…雪に閉ざされた山荘。
負傷者だけが日々増え、全く解決せずに一週間がたってしまった。
そして、ある秘策…
鉄の玉で山荘の壁を壊して突入するという奇抜な作戦に出るのだが…。

佐々監察官は言う。
『彼等は銃によって革命が成就すると思っているが、
 彼等は革命の英雄ではなく国民の敵だ。』

そして、10日後の2月28日に突入開始。
壮絶で度肝をぬかれるリアルな再現シーン。更に人の心の動きと温度差が見もの。
それぞれの立場によってこんなにも違うものなのか…。
視聴率89.7%でテレビ中継されたこの事件は、犯人全員逮捕、
人質無事救出、負傷者24名、殉職者2名、民間犠牲者1名を出して終焉。
『6つの方針』は全ては守られなかった。
警察庁の兵頭参事官が吐き捨てた言葉。
『5人のドブねずみに1635名もの警察官が10日間もふりまわされた。』
革命の幻想により、銃を神聖化して権力に向かった若者達。
この事件により彼等の革命も終息へと向かったのだ…。

ちなみに『ヘラクレスの選択』とは…
敢えて困難な道を歩かされる自分の運命を知りながらもそれを選んでしまう事。
佐々氏の数々の経歴からして、どうもそのような選択をしてしまう人らしい。

映画「突入せよ! あさま山荘事件」サイト

http://www.toei.co.jp/asamasansou/

佐々 淳行 Website

http://www.sassaoffice.com/
  
 


突入せよ!「あさま山荘」事件
役所広司 椎名桔平 天海祐希 宇崎竜童

突入せよ!あさま山荘事件簿 突入せよ!「あさま山荘」事件 サントラ 金融腐蝕列島 呪縛 連合赤軍「あさま山荘」事件—実戦「危機管理」 東大落城—安田講堂攻防七十二時間

by G-Tools

原作本
連合赤軍「あさま山荘」事件
佐々 淳行


 
■ 映画「光の雨」のレビュー

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February 25, 2005

「光の雨」映画

D??? 画]★★★★☆

これは重かった…。人間とは何と恐ろしく悲しい生き物なのだろう。
数年前の雨の日、中野の映画館にて観た映画「光の雨」。
原作は立松和平の同名長編小説「光の雨」。
丁度その日は公開のイベントがあった。
 高橋伴明監督のインタビュー
 圧倒される福島泰樹の短歌の朗読と涙
 若い主演俳優の一人、玉井潔役の池内万作の笑顔
映画を観る前から『その時代』の熱さにあてられ気分も高揚する中、
そして上映が始った。
2001年の作品である。

これは、浅間山荘事件の前にあった連合赤軍による同志リンチ事件を描いた
小説「光の雨」を映画化しようとする“現代の人々による映画のメイキング”と
その劇中劇でもある映画「光の雨」のシーンによって、
過去と現在をオーバクロスさせた構成となっている。
自らの体験に苦しみつつ完璧を目指し再現しようとする樽見省吾監督(大杉漣)。
監督の突然の失踪により、新進監督の阿南満也(萩原聖人)で撮影は続行するのだが、
30年前に実在した同年代の若者たちの行動に疑問を感じ、思想を理解できず、
混乱しながらもそれぞれの「役」を演じようとする俳優達と共に映画を仕上げる。
そんな彼らと同様、観客も『彼等』の心の中に入り込んでゆく…。

『革命共闘』と『赤色パルチザン』の二つの党による
『革命パルチザン』同志リンチ事件。
幼さが残る顔をした、彼等が目指した『革命戦士』とは?
自己批判をし、それを乗り越える『総括』とは??
どうして『総括』の先にあるものが死にしかならないのか???
自分達のリンチで死に追いやった同志に向かって
『総括も出来ずに簡単に死ぬ』と思う『彼等』。
彼等の夢見た平等な社会である社会主義?への『革命』。
その社会主義が崩壊している現在において、激しく虚しさがつのる。

人里離れた山岳アジトの閉鎖された密室空間で、『彼等』による荒唐無稽な
思想と狂気がどんどんエスカレートしてゆく様は目を覆うばかり。
彼等の『総括援助』の名を借りた暴力。
誰にでもあるちょっとした『人間として当たり前の、彼等の言う反革命な部分』を
指摘し、罵倒し、生きて行けない程に追い詰める。
これはもはや、極めて幼稚なただのいじめでしかない。
権力からも、同志達からも、ヤられる前にヤるしかなかっただけなのだ。
今も人々の心の中に、
『その時代』を生きた人にも、
『その時代』には存在していなかった人にも、
同じ心の闇や狂気が見え隠れしているのだ。
武装がもたらす幻想、追い詰められた机上だけの理想論、
外部情報のあまりの無知さと、そこから来る自己の内面でのみの革命。
矛盾から逃れるがための破壊=殺人…。
結局彼等は自分を守るために、他人を傷つけるしかなかったのに過ぎない。

上杉和枝(裕木奈江)と倉重鉄太郎(山本太郎)の
恐しい形相が脳裏にこびりついている。
この二人の演技には圧倒される。革命兵士を演じる時の顔。映画を作る役者の顔。
このギャップが何ともいえない。
中央委員会のこの二人の自己防衛ために何人もの命が失われた。
それでも、『革命』を信じるしかなかった、後には戻れない『彼等』。
せめてもの救いは、ラストシーンの光の雨…。

重々しいムードで上映が終わり、皆無言で席を立った。
想像以上の内容に映画館で売られていた原作を思わず購入してしまう。
読みすすめると、設定は違うのにこの映画のシーンが鮮明に蘇る。
直接的でなく、少しひねって描いてあるのだが、
それ程、衝撃的で印象的な作品であった。
「光の雨」は史実を元にしたフィクション作品である。
歴史の『闇』の部分を観るのは興味深い。
過去の出来事というだけでは片付けられない事実を直視させられ
心苦しいのだが、学ぶ事も大きいのだ。

後になって『 突入せよ!「あさま山荘」事件』を観たのだが、
非常に複雑な気持ちになった。
『彼等』はこの後、浅間山荘へと向かうのだ。

光の雨 特別版(DVD)
光の雨 特別版(DVD)

原作本
光の雨
立松 和平


 
■ 書籍「光の雨」のレビュー
■ 映画「突入せよ!「あさま山荘」事件」のレビュー
 

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December 26, 2004

「スラム砦の伝説」

[DVD映画]★★★★☆

自ら自分を“埋める”美しい青年…。
そして、美しく完璧な構図と意味ありげなモチーフ!!
これは天才監督セルゲイ・パラジャーノフの祖国愛と
その悲しい歴史を語った詩的映像パノラマである「スラム砦の伝説」。

女占い師の予言により、砦を守るため生きたまま砦に埋め込められた
グルジアの“人柱”の伝説をベースに作られた、
セルゲイ・パラジャーノフとドド・アバシッゼの共同監督による
1984年のグルジアの作品。
脚本はヴァッジャ・ギガシヴィリ。
撮影はユーリー・クリメンコ、音楽をジャンスク・カヒッゼ。
ペレストロイカによってパラジャーノフにとって初めての
公式プレミア上映が1985年のモスクワで行われた。


中世グルジア。皇帝は祖国を護る砦の建設が盛んに行っていた。
だがトビリシの南門のスラム砦だけは、
何度建造してもすぐに崩れてしまうのだった…。

奴隷であった青年、ドゥルミシハンには、ヴァルドーという美しい恋人がいた。
しかし、奴隷から解放されると公爵に騙されたことを知り、
ドゥルミシハンは全て、恋人さえもを捨てて、放浪の旅へ。
そこで彼は隊商を率いるオスマン・アガ=ザリカシヴィリと出会う。
彼の現在に至るまでの過去と罪、その懴悔を聞かされ、
オスマン・アガの隊に加わり片腕となるドゥルミシハン。
そして、自分も改宗し結婚して子供をもうけた。

恋人に捨てられたヴァルドーは嘆き哀しみ、ドゥルミシハンを追い求め、
ついにある老女の占い師のもとへ。
そこで、ドゥルミシハンの現在を知り、世を捨て老占い師の跡を継いだのであった。
そこへあろうことか、ドゥルミシハンの妻が、
生まれる子供の性別を占いにやって来る。
動揺を押えながらも、ヴァルドーは男子であると予言した。
これが、ズラプである。

時がたち、スラム砦再建のために、皇帝はヴァルドーに占いを依頼。
占いの結果は“背が高く青い眼の美しい若者の人柱を砦の壁に埋めろ”というもの。
ズラプはまさにこの条件に一致していたのだ…。


とにかく音声に2つの言葉が重なり聴き取りづらい!!
初めて知ったのだが、ロシアでは通例として民族共和国映画を劇場公開するさい、
役者のセリフ(地方言語)にロシア語をボイス・オーバーし、
映像解説をかぶせるのだ。
更に、字幕も読む事になるのだから、入り込むのに多少の時間を要する。
だが、一度入り込むと…何とセツなくも残酷な物語なのだろう!

中世のグルジアの身分差別と多民族ゆえの宗教問題。
エキゾチックな隊商、きらめくイスラム文化。
サフランの美しい黄色、ざくろの鮮烈な赤、グルジアの地方文化。
綱渡りの芸人、港での手旗信号、海を表す青い布。
そして…寒々しい砦。
祖国のために運命を受け入れ自らを“埋める”青い目の美しい若者。
それを悲しげに見つめる白馬、母の嘆きとそれを讃える兵士達。
悲しい運命に翻弄される者達の物語と
パラジャーノフの美しい詩的・絵画的な世界が見事に融合され、
まるで、この伝説のパノラマ絵巻を観ているようだ。

日本でも橋などをかけるさいに行っていた“人柱”。
なんと悲しい風習なのか…。

[映像特典]
・貴重なセルゲイ・パラジャーノフ夫人のインタビュー(約27分)
・主演女優:ヴェリコ・アンジャパリッゼのドキュメントフィルム(約9分)
・グルジア遺産 ドキュメントフィルム(約6分)
・スタッフ・キャストのフィルモグラフィ
・トレーラー「アシク・ケリブ」「ざんげ」「ヴェリー地区のメロディー」
・フォトアルバム

なんと今度はパラジャーノフ夫人のトーク!!!
恋愛ストーリーや夫としてのパラジャーノフ。
そして、投獄へのウラ話について、これまたロングに語ってくれます。
ブレジネフ書記長がパラジャーノフの事を知らなかったので、
就任時に恩赦というのも知らなかった…。
想像以上にエキセントリックで生涯大勢の人を魅了し、
多くの人々に囲まれ生きた芸術家パラジャーノフ、
の未知なる部分を知る事が出来た。

実は観るのに時間がかかったが、満足出来るDVDである。
先日の「アシク・ケリブ」といい、ロシア映画評議会〈RUSCICO〉さすが!!

 
スラム砦の伝説(デジタル完全復元盤)
スラム砦の伝説(デジタル完全復元盤)

書籍

セルゲイ・パラジャーノフ
パトリック カザルス Patrick Cazals 永田 靖 永田 共子

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