18 posts categorized "★悲しき犯罪者系"

July 15, 2007

「変態村」

[DVD映画]★★★☆☆

予告編がかなり不気味で気になっており鑑賞。
たしかシネマライズでの単館上映だったかな。
人里離れた森の奥の僻地の村の不気味さと
“加速する孤独な人間の狂気”
愛するひとを想い独り占めしたいという感情が
個人的な妄想だけでなくエスカレートしてゆく異様さが
ただただ痛々しく不気味。

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「変態村」
 原題:CALVAIRE

製作国:ベルギー/フランス/ルクセンブルグ(2004)

監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
脚本:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ/ロマン・プロタ
音楽:ヴァンサン・カエイ

出演:
マルク・ステヴァンス(ローラン・リュカ)
バルテル(ジャッキー・ベロワイエ)
ロベール・オルトン(フィリップ・ナオン)
ほか

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タイトルにインパクトありますが
ちょっと内容とはズレていますな。
変態さんがわんさか登場するわけでもなく
孤独な狂気と純愛が描かれています。

地方を独りで旅するちょっと可愛いミュージシャン
(日本でいうほぼ演歌的な感じ)のマルクは
齢上のおばさま達にモテモテ。
南仏に向かうはずだったのに…車の故障で立ち往生。
とある村のはずれのペンションに泊めてもらうのだが
オーナーのバルテルの様子がどんどんおかしくなってくる…
そして、その村の住人の様子もあきらかに妙。
マルクはどんどんとんでもない状態へと追いつめられてゆく…
彼に未来はあるのだろうか???

最初はまったりと、どんどん加速する狂気とあっけないラストには
思わず『ええ…』(汗)
十字架へ張付けられてのお仕置きや
痛そうなシーンも多いけれど
それを上回る異常な愛情表現のほうが怖いですね。
バーでの村の男のダンスシーンがとにかく不気味。
不協和音のピアノで奏でられる音楽で
村の男達が踊るのはまるでゾンビか案山子のダンス。
目に焼き付いて離れません。

意外にも妙にクォリティが良い部分やこだわりもあったりで
ぐいぐい見せる所はあるけれど
ストーリー的にはいまひとつかな。
愛する女性を失った寂しさ
そして女性不在の村?から起因するのか
描かれているのは孤独な狂気。
村に入る前の町でも老婆や中年女性に迫られていた
親しみやすい中性的な魅力のある
美青年マルクは妙な色気と美声のせいで
こういった人を狂わせる才能を持っていたんでしょう。
僻地の村では、もはや女性として愛されていましたし…

それにしても救いの無い映画でした。
初の長編作との事で、盛り込み過ぎもある。
メイキングを見ると監督の暑苦しい思いが堪能できますね。
村人のドン的なロベールを演じるのは
これまた変態ものを演じるとピカイチのフィリップ・ナオン♪
リハする姿…やっぱり上手いわ…この人。
予告編のほうが本編よりは面白いタイプの作品。

ちなみに…
特典映像の短編『ワンダフル・ラヴ』がおすすめ。
こちらのほうが完成度高くて面白い。
20分という短時間ながら寂しい年増女の狂気を見事に描いています。
目新しさは特に無いけれど、とにかく主人公の女性の目がイッちゃってるし
ケーキ食べてても、肉買っていても、
牛タン料理してても、歩いていても怖い…
作品について楽しそうに熱〜く語るこの監督の
今後の作品にちょっと期待します。


B000H4W91M変態村
ローラン・リュカ ファブリス・ドゥ・ヴェルツ ジャッキー・ベロワイエ
キングレコード 2006-10-04

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July 14, 2007

「ハード キャンディ」

[DVD映画]★★★★☆

童話の持つ残酷さをモチーフに
少女の持つピュアな残酷さと
好感度のある普通の中年男の持つ微妙なイヤラシさを
とことん極端に描いたもはやサスペンス・ホラー。
特に男性は観た後嫌な気分になる事うけあい。
でも…決して良い子と身に覚えのある方は観てはいけません…

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「ハード キャンディ」

製作国:アメリカ(2005)
監督:デヴィッド・スレイド
脚本:ブライアン・ネルソン
音楽:ハリー・エスコット/モリー・ナイマン

出演:
ジェフ(パトリック・ウィルソン)
ヘイリー(エレン・ペイジ)

「ハード キャンディ」オフィシャルサイト

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な…なんて事を!うへ〜いやだ…痛いって…!!
予告編から痛そうだったけど…
想像以上に精神的にも痛〜い物語。
あどけない表情のヘイリーちゃんが、
自分を変に正当化しつつ行う犯罪行為たるや…
何とも言えない嫌〜な雰囲気満点!!!

出会い系サイトで14歳の少女とお友達になろうと思って油断したら
どえらい目に合ってしまう可哀想なカメラマン中年男の物語。
ジェフは端正でインテリ風のカメラマン。
チャットで出会って3週間の女の子ヘイリーとカフェで待ち合わせ
ジェフの自宅へ行くことになるが…
まだまだ幼なさの残るヘイリーちゃんにスクリュードライバー飲まされて
目覚めた時には身体を縛られ身動き取れず自宅に監禁された。
彼の女性遍歴を尋問された挙句に…そう…去勢。

可愛い顔して淡々と“作業”を行うヘイリーちゃん。
これは彼女の好奇心的なお遊びなのか、はてまた復讐なのか
(最初からゲームの要素はないですけどね)
ジェフは犯罪を犯していたのか、はてまたただのロリコンなのか
どっちにしてもヘイリーちゃん…
ちょっとやり過ぎです…ってかできんでしょ…普通!!!
しかも初めて…医学書読みながら…というのがさらに痛いっ!!!

お隣の日本人の奥さん?のおマヌケなセリフや
実際小娘にあそこまで出来るのか???…とか
氷の麻酔やディスポーザーとかロープとか…
あちらこちらに突っ込みどころ満載だけど
とにかく感情移入を許さず、少女が中年男をグリグリと最も嫌な方法で
追いつめてゆくそのシチュエーションたるや!!!!!
泣いてもわめいても不利なのは中年男。
とことん精神的に追いつめてやる…的な
最後の最後まで少女のいや〜な残酷さにはゾッとします。

あの微妙〜なロープの長さ…きっと………
まぁ、悪いのは男も女もどっちもどっち…
ジェフも何のかんの少女との遊びは初めてでは無さそうでしたし。
危ういものには手を出すなという教訓にして欲しいですな。

ところで赤いパーカーを被った赤ずきんちゃん…
悪い狼を見事罠にはめ満足出来たんでしょうか?
あの友人との電話の軽いノリは
そもそも復讐とかではなく
単なる興味本位とかだったりする気も…
いずれにせよ末恐ろしい〜。

B000LPS3PSハードキャンディ デラックス版
パトリック・ウィルソン デイヴィッド・スレイド エレン・ペイジ
ジェネオン エンタテインメント 2007-02-23

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July 08, 2007

「初恋」

[DVD映画]★★★☆☆

あの“三億円事件”の新たなる捉え方が面白い。
あくまでも“実行犯”が女子高生という事で
犯人像には妙に真実味もあったりするのが興味深い。

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「初恋」

制作国:日本(2006)
監督:塙幸成
原作:中原みすず『初恋』(リトル・モア刊)
脚本:塙幸成
音楽:COIL

出演:
みすず(宮崎あおい)
岸(小出恵介)
亮(宮崎将)
ユカ(小嶺麗奈)
タケシ(柄本佑)
テツ(青木崇高)
ヤス(松浦祐也)
バイク屋(藤村俊二)

「初恋」オフィシャルサイト

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あの“三億円事件”の実行犯が実は女子高生だったという
面白い設定の物語だった。
“三億円事件”好きのワタシはちょっとワクワク…
宮崎あおいの体当たり演技に好感が持てるが
声と体型的にちょっと無理が…

1968年12月10日雨の中での犯行
1975年12月10日の公訴時効の報道はおぼろげだが
1988年12月10日の民事時効を迎えた時には
少しドキドキしたものだ…。

寂しい境遇の高校生のみすずは
幼い頃に母と一緒に出て行った兄の亮に会うため
ジャズクラブに出入りするようになり
そこで出会った岸に恋をした。

時代は学園紛争のまっただ中に突入し
権力に対する為に事件をおこす岸の思惑は
恋する人のために犯行を行うみすずにより成されたと思われたが…

あまりにも純粋でドジながら懸命なみすずの姿。
親に捨てられ兄を頼りそこで出会った初恋の人。
時代もあり感化されるのは17歳という
可能性も沢山あるが、不安定な年齢だからなのかもしれない。
何故だかこのハイティーン時代は誰もが
駄目な世の中を変える事が出来るように思え
行動を起こせる貴重な時代でもあったりする

とはいえ“三億円事件”の実行犯…
成人男性とはあまりにもかけはなれた体格と声。
あまりにも不自然であった…
バイクで雨の中を走るだけでいっぱいいっぱい…
少し無理が有り過ぎたかな。
小さな身体で雨の中自動二輪を扱う困難さだけは
十分伝わってくる…シートを引きずりながら
ヨロヨロ走る姿は印象的であった。

このシートをひっかけたまま走った偽装白バイは事実であり
その不用意かつどこか未熟さを感じる所から
高校生実行犯…というアイデアが生まれたのかもしれない。
時代に流されるメンバーには年代が
Bに出入りする彼らに感情移入は出来なかったが
ねつ造されたのでは…というあのモンタージュ写真や
数多くの遺留品があったにも関わらずの捜査の難行…
事件が国家権力でもみ消された…というのは
妙に真実実もあり興味深いものがある。

おひょいさん演じるバイク屋さんといい
集っていた若者達の行く末には
ちょっと物悲しさもあった。

B000FZENKS初恋 プレミアム・エディション
中原みすず 塙幸成 宮崎あおい
ハピネット・ピクチャーズ 2006-11-24

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初恋 スタンダード・エディション
中原みすず 塙幸成 宮崎あおい
B000IU38I8

初恋
サントラ コイル 岡本定義
B000F9UDK8

初恋
中原 みすず
4898150640

“三億円事件”を描いたドラマ&コミック
■ドラマ 「悪魔のようなあいつ」 - 1 レビュー
■ドラマ 「悪魔のようなあいつ」 - 2 レビュー
■コミック 「悪魔のようなあいつ」 レビュー

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July 04, 2007

「ゆれる」

[DVD映画]★★★★☆

幼い頃より信頼しきっていたものが
お互い一度ゆらいでしまうとやっかいなのかもしれない。
特に異性によってゆらぎは起こりうる…。

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「ゆれる」

製作国:日本(2006)
監督・脚本:西川美和
音楽:カリフラワーズ

早川 猛(オダギリジョー)
早川 稔(香川照之)
早川 勇(伊武雅刀)
早川 修(蟹江敬三)
岡島洋平(新井浩文)
川端智恵子(真木よう子)
検察官(木村祐一)
警部補(ピエール瀧)
裁判官(田口トモロヲ)

「ゆれる」オフィシャル・サイト

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田舎の実家で家業を継ぐ、石橋をたたいても渡れない生真面目な兄と
都会でカメラマンになり、揺れる吊り橋も平気に渡る奔放な弟。
母の葬儀に久しぶりに帰省した弟は
久しぶりに逢った家族や親族の中でも浮きまくり。
父親はちょっとした事ですぐ怒鳴る。
でも兄はいつも優しくそんな弟に接してくれる。
弟もそんな兄が自慢でもあり、大好きなのだった。

だが、実家のガソリンスタンドで
従業員の彼女と兄が仲良くしている所を見かけてから
兄弟の絶対的な信頼関係が崩れてゆく…
彼女は昔から弟に好意があったようで
弟が彼女を誘えば大人の関係にはあっと言う間…
渓谷へのドライブを兄が提案し
3人は吊り橋のかかる川に来た。
子供のようにはしゃぐ兄…
冷静に、ファインダー越しに自然を楽しむ弟…
兄弟の間に挟まれた女がとった行動でとある事件が…

殺人罪に問われる兄を何とか救おうとする弟。
そして父親の兄弟である叔父の弁護士。
だが、優しくて生真面目すぎる兄にもずっと悩みはあったのだ。
真実と虚偽。記憶すらあちらこちらに揺れた結果
弟は何年も自分の虚偽に目を閉じた。

ガソリンスタンドの従業員のおせっかいで
ふと想い出した母親の形見の8ミリフィルムにを観て
彼はやっと目をそらしていた真実に気付く。
女性の存在でゆれた兄弟達は
再び女性の残したものでゆり戻されたのかもしれない。
言葉よりさりげない光景が物語る。

特に田舎で顕著なのだが、
主に長男とその他の兄弟の間には大きな溝があったりする。
長男やそれに準じるものには
生まれながらにして跡継ぎという使命があり
それ以外の子供には親の遺産は入らぬが
その重苦しい期待はかからない。
必然的に跡継ぎになったものは
その一家全体を背負い使命をまっとうすべく
自分を押し殺してしまう傾向にある。
幼い頃より年長者であるがゆえに周りを気遣い
選択の余地無く実家で我慢を重ねてきた兄の苦悩。
それとは真逆に自分の居場所を探さなければならなかった次男。

昔気質の頑固な父の間に入り自分を守ってくれた
兄であり母親的な絶対的な愛情を信じていたゆえに
一度ゆらいだ信頼はなかなか元に戻れない。
兄も一瞬ゆれた心での発言の中で消えた信頼が戻るのを
罪を償いながらじっと待ち続けたのだろう。
オダジョー、新井くん、伊武さん…
そして何といっても香川さんのあの笑顔が印象的。
名優ぞろいで気が抜けない緊張感がある作品だ。


B000KIX658ゆれる
オダギリジョー 西川美和 香川照之
バンダイビジュアル 2007-02-23

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ゆれる オリジナルサウンドトラック
カリフラワーズ
B000FZDMIC

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June 19, 2005

「KOROSHI 殺し」

[DVD映画]★★★★☆

風車の回る風の強い北国。
白くだだっ広い銀世界に、黒い人陰とポイントの赤。
雪景色の中に響く銃声。
暗転。
逃げる男。
2000年カンヌ映画祭監督週間で正式上映された
この「KOROSHI 殺し」は、極めてシンプルな、小林政広ワールドだ。

『とある不器用で平凡な男に、ある日突然起こる、非日常的な事件』
『モノクロームな北国の風景の中で淡々と繰り広げられる犯罪』

これぞ小林政広監督お得意の世界。
いくつもの作品に、ロケ地である北海道の殺風景な世界が広がり、
そこにポツンと自動車だったり、人物だったりが佇むシーンがやたら多い。
厳しい大自然の中で、人間なんてそれほど小さな存在なのかもしれない。
描かれる“事件”のなんと小さな事か…。
最初、前作「海賊版=BOOTLEG FILM」に、ちょっと似ているかな…とも思ったが、
もっと単純明解に洗練され、リアルな感じがした。
人の気配の無い…とはいえ、民家が並ぶ中での銃声。
フランスの脱獄映画ジャック・ベッケルの「」を彷佛させるような、
大きな音を伴う犯罪行為。
強引なシチュエーションに、思わずドキっとしてしまう。


除雪車が走る、雪深いある北国の町での物語。
3ヶ月程前、会社をリストラされたのだが、
妻和子(大塚寧々)に言い出せない男、浜崎(石橋凌)。
彼には海外留学をしている娘までいるのだが、
毎日会社に行くといってはパチンコへ…。
給料は退職金を給料に見せかけて秘密の口座から振り込んでいた。
そのお金も底をついたある日、
閉店したパチンコ店の駐車場で時間を潰す彼の自動車に
突然走って乗り込んできた一人の男、市原(緒形拳)。
浜崎の境遇を何故か知っているその男は、
何と“殺し屋”のスカウトマンだった。

報酬は一人500万! 支給される拳銃を使っての暗殺。
お金に困った浜崎は気が進まないが、断る事も出来ず、
ズルズルと男に指示されたままに、最初の“仕事”をクリアした。
ところが、不安と動揺と同時に、
久々のこの“労働”に妙に興奮してしまったのだ。
車の中で“仕事”の資料と拳銃を受け取る。
“仕事”を行い、雪の中を逃げる。
そしてその興奮の醒めぬまま妻を抱く。
このくり返し。
映画の“殺し屋”気分で“仕事”が楽しく、次々とこなす。

ところが、ある日の依頼が彼の運命を大きく変える事になった。
次のターゲットであり、依頼者は彼の知人!
同じくリストラされた元上司、上條(深水三章)だった。
これはお金に困った上條の自分のかけた保険金を狙った、
本人からの“殺害依頼”であったのだ…。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

近年日々大量に行われているリストラ。
家族を抱え、仕事第一に生きてきたサラリーマンの中年男には極めて厳しい。
まず、無事職に就ける事が大変で、再就職で以前の収入を超える事は難しく、
失業保険も、もらい続けるわけにはゆかぬ。
でも、家族を養わねばならない。ローンの返済もある。
家族にとっては生活レベルを急に下げる事は困難だし、
リストラにあった父親には威厳があるはずも無い。
実際会社という組織は、仕事が出来ない云々よりも、
とにかく人件費を減らしたい一心で、
愛社精神のある人、断れない人物、いわゆる“いい人”ほど、
リストラのターゲットになったりするものなのだが…
懸命に働いた挙げ句のリストラ、家族はその現状を知らず冷たいなものだ。
海外留学している娘は仕送りの追加をシレッと要求してくる始末。
自分と子供の生活が第一で、夫にはクールな妻達。

こんな境遇のごく普通の中年男、平均的な日本人気質の浜崎は、
仕事のある充実感と、スリルのある殺しの快感にハマってしまった。
最初はとまどっていたが、仲介人の市原に
「次の“仕事”は無いですかね?」とねだるまでに。
だが、ある日の依頼は、同じ境遇だった元上司がターゲット。
となると、自分と重ねあわせざるを得ない。
しかも相手は“家族のために”自分の命を犠牲にしようとしているのに、
自分は“家族のために”彼を殺そうとしている…。
事前にそれとなく、上條の家族の様子を聞いてみたが、妻和子の冷たい言葉。
「上條さんの家族はリストラされてから大変だそう。
 もし、あなたがリストラされたら、
 首をくくる覚悟くらいしておいてちょうだい。」
人事でなく、悩める浜崎だった。
そして、元上司への“仕事”の実行の日。
タクシーの運転手である上條の車に乗り込むが、何だか全てがバレバレ。
だが、おかしなもので開き直った人間に「いつでも殺せ」と言われるより、
「殺さないで」と命を請う人間へ銃を向ける事が出来たのだ。
“仕事”だから………でも………こんな思いは、もう沢山。
やっと人間の心をとり戻した浜崎は、ある決意をした。
しかし、こんな人道に反した行いをした男には、もちろん天罰が下る。
人との出会いは一期一会。
それは肉親だろうと、他人だろうと同じなのだ。
冒頭とエンディングで語られる、
『たぶん人生というのは1台の乗り合いバスで、
 長い旅を続けてゆく事なんだろう 』

互いの人生と触れあい、分かち合いながら、それでも進む。


飄々と“仕事”の依頼をする謎の優秀な?スカウトマン、市原が
言葉数が極端に少なく、淡々と無気味に軽妙。
だが、人間臭い一面があるがゆえユーモアさえ感じられる。
そもそも自分が“悪魔のささやき”でそそのかしたくせに、
まっとうな意見を言って本意を確認してみたり、せなんだり…。
このある意味“悪魔”である市原、緒形拳の演技が上手過ぎ、嵌まり過ぎ。
意味有りげな言葉をポツリ、ポツリと、理論整然と彼にささやかれたら…
誰でもつい“仕事”を請けてしまいそうだ。
しかも、謎の言葉「母親に似てきた」とは、まさか???
石橋凌は、かっこ良過ぎるが、平凡なサラリーマンだった悩める男を好演。
小林作品常連である大塚寧々のごく普通の妻の冷淡さが怖い。
冗談めかした「 愛してないわ。」という言葉。

お父さん達! 家族に仕事する姿を見せておこう!
忙しくても家族の求めるサービスをしておこう!!
いつ何時、何が起こるかわからない昨今、
家族のため、自分のために…。

本編は短く86分だが、特典映像は54分とたっぷり。DVD用撮り下ろし満載!
[特典映像]
1.石橋凌と小林政広監督との対談映像(28分)
2.大塚寧々インタビュー映像(12分)
3.緒形拳インタビュー映像(13分)
4.オリジナル予告編(1分)
 

殺し デラックス版
石橋凌 大塚寧々 緒形拳 小林政広
B00006S25F

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[小林政広監督・フィルモグラフィー]

「CLOSING TIME」(1996)
「海賊版=BOOTLEG FILM」(1998)
「KOROSHI」(2000) 
「歩く、人」(2001) 
「女理髪師の恋」(2003) 
「フリック」(2004 ) 
「バッシング」(2005)

「フリック」オフィシャルサイト
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■ 映画「歩く、人」レビュー
■ 映画「フリック」レビュー
 

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June 12, 2005

「フリック 完全版」

[DVD映画]★★★☆☆

また悩める作品を観てしまった…!!!
小林政広監督…どうしてくれます?

今年のカンヌ映画際でちょっと話題になった、
日本人監督としては初の3年連続カンヌ国際映画祭出品を成し遂げ、
今回新作の「バッシング」をコンペティション部門へ出品、
赤絨毯を歩いたが惜しくも受賞を逃した、あの小林政広監督の前作品だ。
今年のあたまに地味に公開していた不思議なサスペンス「フリック」。
案の定、やはり観そびれてしまっていた。
早くもDVDになっていたので、レンタルしようと探したが…やはり無い。
貧乏を売りにしている、監督の製作に貢献すべく?DVDを購入。
昨年「歩く、人」で、少し紹介したこの監督の奇妙な世界に、
またもや翻弄される事になってしまった。
香川照之の奥深い演技、大塚寧々の多彩ぶり、
そして、この春急逝した小林監督の音楽の師匠、高田渡のインパクトある怪演と
エンディングで弾き語る『ブラザー軒』が素晴しい!

最愛の妻(葉月螢)を殺害され、酒におぼれて自宅ひきこもっていた刑事、
村田(香川照之)をある日、同僚の滑川(田辺誠一)が訪れた。
円山町のラブ・ホテルでバラバラにされ殺された女子大生、
楠田美知子(安藤希)の身元確認のため、
彼女の兄(村上連)を東京に連れてくるという任務を説得され、
共に苫小牧に向かう事になった。
被害者美知子の自宅に着いた村田は、足の不自由な兄の様子が気になり、
越権行為知りつつも刑事の血が騒ぐ。
滑川の警察学校時代の先輩であり地元の市警である佐伯(田中隆三)と
及川(松田賢二)による歓迎会。
翌朝、湖のほとりで発見された被害者の兄の死体を自殺と決め込む地元市警。
彼等に不信感を覚えた村田は単独で捜査を開始した。

被害者美知子がよく来ていたというバー。
そこの雇われ店長の美しく謎めいた女性、伸子(大塚寧々)。
謎のヤクザ(本多菊次朗)に襲われる。
下宿の大将(高田渡)との妙な会話。
美知子の友人でアルバイトとしてバーで働く愛(安藤希・ニ役)の衝撃的な証言。
事件が解明出来るかと思えば、一瞬にして覆されるこの町の人間の言葉。
村田は夢と妄想と現実が交錯し、誰も信じられなくなってゆく。
そんな中で妻の事件の記憶すら曖昧に思えてくるのだった。
だが、刑事の本能が村田をつき動かす。
犯人は誰だ?真実とは??

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冒頭の衝撃的なチェーンソーの音!
逃げまどう女の子の悲鳴!!
そこから、極めてゆる〜く、長〜い第I章が始まる。
バラバラにされた何千ピースものパズルを、
少〜しづつ、ゆっくりと記憶と勘と忍耐力を頼りに
真実に向かって1ピースずつ組み合わせてゆく感じ。
人物を小さく映すひきの画面、無言の会話の無い長回し、
のんびり淡々と、しかも謎が増えてゆく…これで約1.5時間!!!
だが、無口で無表情でぶっきらぼうな村田の
「生まれてから一度も映画を観た事がない」
「生まれてから一度もパンを食べた事がない」
「生まれてから一度も刑事になろうとしか考えた事が無い」
この言葉がとても印象的だった。

第II章、から少しずつテンポが加速し急展開!!!
やはり全てのささいな出来事や言葉にすら緻密に謎が隠されていたのだ。
妄想シーンの前後から浮かびあがる、あまりにも悲しい真実。
そしてまたそれとは違った新たな真実が次々と目の前で展開され、
妄想と現実、どれが本当の真実なのか解らなくなって来る。
リピートされる妻を殺された現場のシーン。
開いた窓から流れる風で鳴る風鈴。
村田の涙を指で拭いてあげる滑川の真意とは…。

そして、エピローグ。
やはり、どど〜んとどんでん返し。
さっきのは何?あの電話は??あの男はあれは誰だ???
やはり、これが真実だったのか????
生きているのか死んでいるのか…
ただ、村田は悲しるぎる現実の後に、
幸福を見つけた…これだけは真実に違い無い。

とはいえ、すっきりとまだ謎を解明出来ずにいる自分に苛立ちながら、
この長い道のりをまた(ちょっと早送りしつつ)観返す事になるんだろうな…。
これぞ緻密なサスペンス映画の醍醐味。

フリック 完全版
香川照之 小林政広 田辺誠一 大塚寧々
B0007MCJFA

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[小林政広監督・フィルモグラフィー]

「CLOSING TIME」(1996)
「海賊版=BOOTLEG FILM」(1998)
「KOROSHI」(2000) 
「歩く、人」(2001) 
「女理髪師の恋」(2003) 
「フリック」(2004 ) 
「バッシング」(2005)

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■ 映画「歩く、人」レビュー
■ 映画「KOROSHI 殺し」レビュー
 

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April 16, 2005

「オールド・ボーイ」

[DVD映画]★★★★☆

こりゃ凄い!
評判どおり。なかなか見応えのある作品だった「オールド・ボーイ」。
チェ・ミンシクの凄みのある演技は絶品!
最近観た韓国映画の中でも傑作のうちの一つだ。

監督・共同脚本は「JSA」のパク・チャヌク
出演は「シュリ」のチェ・ミンシク、「春の日は過ぎゆく」のユ・ジテ
「バタフライ」のカン・ヘジョン
音楽はチョ・ヨンウクのプロデュースで
若くして素晴らしい才能を発揮しているイ・ジス
チェ・スンヨン、シム・ヒョンジュンの3人の作曲家で3人の人物を描き競作。
2004年のカンヌ映画祭でグランプリを受賞。
とにかく前情報無しで観て楽しもう!!

以下結末は書きませんが若干ネタバレ有り。
これから観る方はこの先を読まない事をお勧めします。

冒頭、とある雨の日。
まるで新橋の酔っぱらい状態の極々普通のサラリーマン、
オ・デス(チェ・ミンシク)は、
妻と幼い娘の待つ我家へ娘の誕生日祝いの天使の羽のプレゼントを買い、
電話ボックスで“帰るコール”をしていた所を、
紫の傘を持った男達に誘拐され狭い小部屋に監禁される。

いったい誰が、何の目的で?

何故監禁されているのか不明。
外は見えず場所も分からない。
食事や身の回りは世話される。
ただ…テレビの試聴は可能。

そこでオ・デスは自分が妻殺しの容疑者になっている事を知る。
孤独との戦い。蟻にまみれる妄想。謎のガス。催眠術師の女。
いつしか彼はは自力で脱走すべく鍛え始めるのだ。
そして…15年が過ぎた時…
突然解放された。

お前は誰だ?何故俺を15年も監禁した?

持たされていた携帯電話に謎の男からメッセージがあり、
一軒の寿司屋に入ったオ・デス。
そこにいた美しい手の冷たい女の板前ミド(カン・ヘジョン)と共に、
犯人を探す事になるのだが、これすらも犯人が仕組んだ罠だった…。
妻を殺され15年の自由を奪われた復讐に燃えるオ・デスは、
監禁時に与えられた餃子を作った店を探し食べ歩き、
ついに監禁された場所を突き止めた。
そんな彼等の前に現れた謎の男ウジン(ユ・ジテ)は、
お互いの命を賭けた“ゲーム”を強制。

5日以内に謎を解き明かせ。解き明かせなければお前を殺す。
 解きあかせば…オレが死んでやる。

もはや、オ・デスは監禁した犯人を突き止め復讐するしかないではないか!!!

どうして監禁されたかではなく、どうして解放されたか。
オ・デスの舌は喋り過ぎた。
今までの人生を復習しろ。そして思い出せ。

オールド・ボーイ=卒業生。15年の意味。
情報を集め、無くした記憶をたどり、自らの軌跡をたどり、
思いもかけない事実にたどりついた時、
オ・デスはおぞましい新たな事実を知る事となる…。

“まさかこんな商売が!”“復讐しあう?”
というアイデアがとにかく素晴らしいと思ったら、
1996年から1998年にかけて「漫画アクション」連載されていた漫画、
オールド・ボーイ —ルーズ戦記土屋ガロン・作/嶺岸信明・画が原作。
おそるべし!日本コミック界のパワー!!
そしてこれをパク・チャヌク監督に勧めたのが、
殺人の追憶」のポン・ジュノ監督だというではないか!!!
さすが…サブカル・オタク!やっぱりセンスが良い。

さて映画だが、もちろんこの面白い設定だけではなく、
伏線を含め非常に上手く作られている。
オープニングからエンディングまで細部に凝りまくった濃密な映像。
更に語り口とテンポの良さ。
模索しながら少しずつ掘り進むトンネルが一気に開通した時の衝撃。
重いテーマをちゃめっけでカバーした演出がニクイ。
まず、オ・デスのダメおやじから進化した魅力的なドレッド風ヘア。
自主筋トレとイメージ・トレーニングで強化された怒るオ・デスのファイティング!。
トレードマークのハンマーの差す先、赤いライン。
韓国ではなかなかめずらしいベッド・シーン。
催眠ガスで眠る彼等を切なげにガスマスク着用で眺めるストーカー野郎。
監禁部屋探しの餃子の食べ歩きはなかなかツボだった。
何より必見なのはチェ・ミンシクの役者根性の入った肉体改造と迫力の怪演!!!
そして、激痛・グロテスクシーンが意味深げに多用されている。
“あんな生き物”を生で食べたり、
“こんなもの”をスポンと抜いたり
“まさかのそんなもの”をジョキッとなど…
アタタ…なシーンには要注意!。

傷ついたものに復讐は最高の薬だ。やってみろ。

だが、復讐の先にあるものは明るい未来であるわけが無い。

獣のような自分だが、生きているいる価値があっても良いではないか

舌は災いのもと。だがまさか“あんな理由で…”とは!!
男女の愛。家族の愛。親子の愛。究極の愛。
どこかで歪んでしまった愛情はその歪みが大きい程、
狂おしく、より激しく突き進む。
重い…重すぎる!!!
それでありながら、確認のためにもう一度観たくなる、濃厚な一本。
 
オフィシャル・サイト
 ↓
http://www.oldboy-movie.jp/

オールド・ボーイ プレミアム・エディション
チェ・ミンシク パク・チャヌク ユ・ジテ カン・ヘジョン

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切なく印象的なワルツが良かった!
オールド・ボーイ オリジナル・サウンドトラック(CCCD)
サントラ

原作コミック
オールド・ボーイ —ルーズ戦記
土屋ガロン 嶺岸信明
オールドボーイ—ルーズ戦記 (1) オールドボーイ—ルーズ戦記 (2) オールドボーイ—ルーズ戦記 (3) オールドボーイ—ルーズ戦記 (4) オールドボーイ—ルーズ戦記 (5) オールドボーイ—ルーズ戦記 (6) オールドボーイ—ルーズ戦記 (7) オールドボーイ—ルーズ戦記 (8)

オールド・ボーイオフィシャルブック
メディア出版部

ノベライズ
オールド・ボーイ
大石 圭


 
■コミック「オールド・ボーイ —ルーズ戦記」レビュー
 

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February 07, 2005

「トーク・トゥ・ハー」

[DVD映画]★★★★★

男達の一方的な報われぬ愛と目を閉じた無言の女達の愛。

スペインの奇才「神経衰弱ぎりぎりの女たち
オール・アバウト・マイ・マザー」などのペドロ・アルモドバル監督・脚本による、
二人の昏睡状態の女性とそれぞれを愛する二人の男性を描くヒューマン・ドラマ。
あらゆる要素を含むアルモドバル監督の真骨頂ともいえる「トーク・トゥ・ハー」。
あまりにも美しく繊細な映像と音楽と絶望的な設定に圧倒されながら、
登場人物の織り成す人間模様に心が動かされずにいられない。
2002年度アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した作品。

不思議なダンスの舞台。
盲目の女とそれを助ける男。そして壁に当たっては嘆く同じく盲目の老女…。
そして、この舞台を観ている二人の男。
一人は淡々と周りを観察し、もう一人は感激して泣いている。
この象徴的な場面がこの先にある物語を暗示する。

病室のベッドで植物状態にある少女アリシア(レオノール・ワトリング)は、
この4年間、看護士のベニグノ(ハビエル・カマラ)の妄信的な看護を受けていた。
その完璧なまでの甲斐甲斐しさ。
母親の看護で身に着けたという技術。
爪をとぎ、髪を整え、化粧をし、マッサージし、着替えをさせ、体を洗う…。
その作業をアリシアを愛しく見つめながらも淡々こなす。
そして、今日あった事などを一心に彼女に語り続けるのだ。

一方、劇場で泣いていた男マルコ(ダリオ・グランディネッティ)が恋している
女闘牛士リディア(ロサリオ・フローレス)も、
競技中の事故によって昏睡状態で入院する事になる。
絶望に困惑していたマルコは、ベニグノとの出会いによって、
リディアの看護をするようになり、二人に友情が生まれていく…。

この作品の主人公達は孤独だ。
人間の孤独感が生み出すもの…それは愛情であり、友情であり、同情であり、
そして…
ベニグノの献身的な看護には、ある種の異常さがあった。
彼は言う「人生の中で最も充実した4年間だった」
窓から見ていた憧れの少女とずっと一緒に過ごしている4年間。
一方的な愛だから喧嘩もしない。だから仲が良いのだと…。
マルコは言う「僕はその正反対だ」
そして、マルコは愛しいリディアが昏睡状態になる前にすら、
恋人だと思っていた、彼女の心は彼へは向いていなかった事実を知る。

ベニグノの愛ゆえの行動。
サイレント・フィルム「縮みゆく恋人」に触発されて行った行為。
それによってアリシアは目覚めたのかもしれないが、決して許さる行為では無い。
それが理解出来ないベニグノはもはや狂気の世界の住人に近い。
あくまでも一方的な愛。愛される事を知らないベニグノ。
もう少し相手の立場になれたなら、
実際に愛しあう事が出来たかもしれないのに…。

一見人間は何を考えているか、他人には全く解らない。
正しい、間違いの尺度も人それぞれ。
心に“闇”のある人間は得てしてそれを表に出さない。
心に“病み”のある人間は、自覚が無いがゆえに、
それが優しさや生真面目さにも見える。
心が止まった植物状態の人間でも、生きているのだから何かを感じてはいるはず。
彼等は何がきっかけで目覚めるか解らないし、
そのまま目覚めないのかもしれない。
看護する者の期待と不安、そして焦り…。

夢見るおしゃべりなベニグノのこんなにも深い愛情
         —————でもそれは犯罪と背中合わせ。
現実的で無口なマルコの愛は広い不器用な愛情
         —————報われないけれど未来のある愛。

この映画はまた舞台で終わる。
今度は男達の手によって運ばれる歌う女…。
ラスト・カットでベニグノの愛は意外にも報われたと知る事になる。
内向的でストーカーまがいのマザ・コン男の余りにもセツない恋愛の結末だけれど、
意外と彼にとっては最悪では無かったのかもしれない。
彼がいなければアリシアの未来も無かったのだ。
そして、泣く男マルコにもほんの少しの希望を残した…。
内向的な変態さんの純愛をここまで美しく深く描いた監督はあっぱれ!

とにかくアルモドバル監督のこだわりが細部にまで効いていた。
ドイツの振付家ピナ・バウシュの『カフェ・ミュラー』の舞台
サイレント・フィルム、看護師の手際の良い仕事、昏睡状態の人間の表現 etc……。
あらゆる要素やモチーフは必然性があるがゆえ存在し、
巨大なタペストリーに細密に描かれた絵のように完成されている、そんな作品。
変態アルモドバル監督の完成度の極めて高い傑作に拍手!!!

 

映像特典の監督・キャストのインタビューや
封入特典のムック本はなかなか参考に。
前知識無しで一度目、特典を観て二度目、観る目が変わって楽しめる。

[DVD映像特典]
 本編ディスク
 ●予告編集
 ●フォトギャラリー
 ●スタッフ&キャスト解説
 特典ディスク
 ●メイキング
 ●ペドロ・アルモドバル監督インタビュー
 ●インタビュー (スタッフ&キャスト)
 ●レオノール・ワトリング、来日インタビュー

[封入特典]
 ●豪華ムック本「オール・アバウト“トーク・トゥ・ハー”」

トーク・トゥ・ハー リミテッド・エディション
レオノール・ワトリング ペドロ・アルモドバル ハビエル・カマラ

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トーク・トゥ・ハー スタンダード・エディション
レオノール・ワトリング ペドロ・アルモドバル ハビエル・カマラ

トーク・トゥ・ハー
ペドロ アルモドバル Pedro Almod´ovar 百瀬 しのぶ

トーク・トゥ・ハー オリジナルサウンドトラック
サントラ

トーク・トゥ・ハー
〜イマジネイション コンパイルド・バイ・ペドロ・アルモドバル

映画主題歌
シャーリー・ホーン ジミー・スコット ゴールドフラップ

 
■ 映画「オール・アバウト・マイ・マザー」のレビュー
■ ペドロ・アルモドバル監督の作品紹介はこちら
■ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 来日20周年記念講演
「カフェ・ミュラー」「春の祭典」のレビュー

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January 19, 2005

「悪魔のようなあいつ」 - 2

[DVDドラマ]★★★★☆

最終話の特典映像で脚本の長谷川和彦氏が語っているが、
当時視聴率が11.6%であまり芳しく無かったとは…。
演出・プロデュースの久世光彦氏の意向で
三億円強奪事件の犯行現場の再現シーン”以外は全てスタジオ撮影だったそう。
だから車や電車の中の窓の外が全てバリバリのハメコミだったのか。
三石さんというスタントのチームを担当とした人が、
実際取り調べられた時のエピソードなどを参考に、かなりリアルな再現をし、
犯人でしか知らないようなネタもこのドラマに提供してしまったよう…。
4巻から随時登場するこの回想シーン(ここだけフィルムでロケ撮影)は本当に見事。

三億円事件”という未解決事件のある種の“愉快犯”の犯行は
ロマンを感じる不思議な痛快感がある。
“街頭三億円インタビュー”でもコメントされているが、
誰も死なせず、警官に扮装した青年が緻密な計画で三億円の強奪に成功した
この犯人は決して憎めない、ヒーロー感すら感じられるところがあるのだ。
三億円という前代未聞の額…当時の金額で三億、現在であれば1ケタ多い額だろうか。
この“強奪した紙幣を使うとバレるので、時効をひっそり待つ
このシチュエーションといい、
時効まであと半年と迫った緊迫ムードといい、
ガッツンガッツン入る主題歌『時の過ぎゆくままに』といい、
上村 一夫の同名原作コミックといい、このコラボ感は見事。
実際は視聴率とドラマというメディアの関係上、
時効の日までドラマが続かなかったという裏話もあるそうなのだが、
それはそれで、こう落とすとは想像つかなかった。

港町、横浜だけを舞台に描かれたこの作品。
良(沢田研二)の帽子とサスペンダーが似合い過ぎる。
野々村(藤竜也)のサングラスの下の目は、いつもその良を想う。
良達の夢は、悲しい結末で幕を降ろすのだが、暗い絶望感は不思議と無い。
それは、良の満足気な顔と、実際にあのロマンは終わっていないという事実。
実際に時効を迎えた日、本当の彼はどうしたのだろう?
そんな平凡な一市民の考える夢とロマンなのかもしれない。
 
では、ざくっとDVD BOXセット-2に納められている6〜9各巻の感想を。

6 第11,12話

三億円はどこに??
白戸の言葉はなんと、そんな事だったとは?
表を作り、容疑者を消して行く良。
ところが意外な人の犯行だった…。
世界地図を広げ夢の島へと模型の船を走らせる野々村。
彼の良への気持ちはどうなるのか?
誕生日を迎え28才になった良は言う。
三億円は青春なんだ。三億円というお金の存在を越えた…
良、あんたは何処へゆくのだ?
女達、ノノだけが良より好きなものがある。
 
7 第13,14話

まさかの事態!
細川俊之演じる、王の手引きをうけるはずが、あんなヤクザ者に邪魔されるとは!。
台風による豪雨で化膿した傷。熱でうなされる良。
あの病気は『発狂』もしくは『記憶喪失』になって死を迎えるなんて!!
天真爛漫のノノの愛がセツない。
更にセツない野々村…。
そして、三億円は…いかん、これは面白すぎる!!
 
8 第15,16話

三億円事件”の展覧会でついに狂ったか?良??
忘れてしまったほうが良かったのか、思い出したほうが良かったのか???
ついに殺人までも犯してしまって…。
細川俊之演じる、王のキャラと一本調子の話し方が無気味でいい。
それにしても野々村と良の過去。それだけの愛情とは思えないが…。
良を愛した者は皆吹不幸になるのか。
篠ひろこ演じる彼女…ひたむきさがセツない。
岸辺一徳デイブ平尾のくどい演技も笑える。
さあ、三億円はどこに?
 
9 最終話

日本を脱出するんだ…。ダメな時は戦争だ!
良は本当に狂ったのか?それとも正気なのか?
“お祭りだ。戦争だよ。”
あまりにも悲しいりんごの歌。
初めて走ったいずみまで…そんなに綺麗さっぱりしていいのか?
ラストシーンで良は笑っている。
三億円の舞う中で満足気に笑う良の顔は、どこか満足気だ。
 
 
悪魔のようなあいつ DVDセット 2
沢田研二 藤竜也


悪魔のようなあいつ DVDセット 1
沢田研二 藤竜也


原作コミック
悪魔のようなあいつ (上)
阿久 悠, 上村 一夫


悪魔のようなあいつ (下)
阿久 悠, 上村 一夫



■ ドラマ「悪魔のようなあいつ-DVDセット-1」のレビューはこちら
■ コミック「悪魔のようなあいつ」のレビューはこちら

上村一夫の作品
■ 上村一夫の作品紹介1はこちら
■ 上村一夫の作品紹介2はこちら
 
沢田研二主演の映画
■ 映画「太陽を盗んだ男」のレビューはこちら

沢田研二復刻盤シリーズ〈CDアルバム〉2005/3月発売!
■沢田研二復刻盤シリーズ

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January 18, 2005

「悪魔のようなあいつ」 - 1

[DVDドラマ]★★★★☆

阿久 悠, 上村 一夫の原作コミックとほぼ同時に進行したという
TVドラマ「悪魔のようなあいつ」がDVD化されている。
1975年6月〜9月にTBSで放送された沢田研二主演のフィクション作品。
全9巻で17話で完結。レンタル屋で見つけて…はまってしまう…。

面白い!!!

結末もだが、設定もストーリーも先日のコミックとは“別モノ”として楽しめる、
ドラマ・主題歌・劇画のコラボものとして、なかなかの秀作!!
そう、あの世紀の未解決事件1968年12月10日に起った“三億円事件”の物語。
しつこいくらいの『時の過ぎゆくままに』が耳に残る。

可門良(沢田研二)は、孤児院の先輩だった元刑事の野々村(藤竜也)の経営する
クラブ「日蝕」で歌手として働いているが彼には秘密があった。
時効まで密かに目立たず過ごしていたのだが、
あと半年という時になって、自分の脳腫瘍に気付いたり、
良に金を要求し脅す元上司の八村(荒木一郎)、
三億円事件”解決に執念を燃やす白戸刑事(若山富三郎)、
良の美しさと影に惹かれる女達…八村の妻史子(安田道代)、妹いずみ(三木聖子
看護婦山川静枝(篠ヒロコ)、元野々村の女の日夏恵い子(那智わたる)etc…
彼等が…彼等自身と良の運命を狂わせていく…。 

思いきり昭和のテレビドラマ感があふれ、
ハード・ボイルド有り、お茶の間ドラマ有り、愛憎有りと
あらゆる娯楽の要素を含んだ異色かつ痛快な部分のある作品。
何より沢田研二の美しく、謎を秘めた男の魅力が絶大だ!
あと○○日とショート・ホープにダーツ矢を投げる良。
三億円事件”これによって墜ちてゆく人々。
良は言う。「三億円は青春なんだ」。
その犯行に気付いていながらも気持ち悪いくらいに優しく良を愛し守る野々村、
ひたすら執念深く良を追う白戸刑事も
彼も良逮捕に別のロマンと夢を見たのだろうか。
一見俗物にしか思えない描かれ方の女性や良の周りの人々には、
あまりにも悲しい物語なのだが、
本当は彼等の背景にも良を愛さずにいられなかった理由があったし、
良なりに利用しつつも彼女達を愛し、悩み、甘えていたのだ(と思う)。
原作コミックには無い、この“人間臭さ”がドラマにはある。
そして、今やビッグなお笑いやGS出身の役者さんが出演しており、
そんなトコロも見所の一つだ。

では、ざくっとDVD BOXセット-1に納められている1〜5各巻の感想を。

1 第1,2話

舞台は横浜。最初から良の病気の症状が…。
毎回頭痛に悩まされる。尾崎紀世彦のキレっぷりがたまらない。
良を見つめる藤竜也の色気、若林富三郎が迫力満点。
ショッポをダーツでカウントダウンする、華奢なジュリー。
こういう犯罪者の役、ポーカーフェイス そして歌の上手さは適役だ。

2 第3,4話

ついに病気が判明。
グリオブラストマ=神経膠芽腫(GLIOBLASTOMA)という脳腫瘍の一種。
死が近いと知り電車内で暴れる良。
そしてあれよあれよと現れた三億円の札束には圧倒される。
懐かしい聖徳太子さんや伊藤博文さんなどが…。
それを、毛布にくるんで隠す場面は見ているこちらがドキドキする。
あらゆる関係が明解になり深みを増す、見応えありの2巻。

3 第5,6話

あの三億円はどこに???
伊東四郎の怪演!オカマっぽいヤっさんが強烈だ。
白戸刑事が去ったと思えば、まさか八っつあんのせいで…。
かなり危険な香りのするこの巻。
尾崎紀代彦のキレ方と、どうしても長過ぎるもみあげが気になる。
ここにきて、やっとコミックのような人物紹介有り。
どろどろしていてハマってます。
ついに殺意を露にする良…。ああ!気になる!!

4 第7,8話

おお! 三億円強奪の手口がこんなに細かに…
何度も車乗りかえたり、キャデラックとかチューブとか
とんでもないトコロに移したり、隠したりと大変だ。
下準備…衣裳や拳銃バイクなども…なるほど。今ならバレバレだろうが…
伊藤四郎ヤっちゃんの手下に岸辺一徳がこれまた妙演。
それにしても野々村さん。良に何を求めているのか?????
二人で服のままプールで泳ぎ、笑い合うシーンが印象的。
愛情がハンパでない。この二人の関係って?

街頭三億円インタビュー”が、レトロで面白い。
当時は当たり前なんだが、髪の色がみんな黒い。

5 第9,10話

白戸さ〜ん。妹誘拐してまで…。ホントに凄い執念!
腹巻き姿も板について…。
故、浦辺粂子さんが八村モータースで白戸さん相手にいい味出している。
篠ヒロコさん…看護婦の彼女の背中の綺麗さ!
ゆるい展開と思っていたら、何てことだ!!!
三億円はどこ?え?不法侵入の白戸さん!!!!
 
 
悪魔のようなあいつ DVDセット 1
沢田研二 藤竜也


悪魔のようなあいつ DVDセット 2
沢田研二 藤竜也


原作コミック
悪魔のようなあいつ (上)
阿久 悠, 上村 一夫


悪魔のようなあいつ (下)
阿久 悠, 上村 一夫


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沢田研二復刻盤シリーズ〈CDアルバム〉2005/3月発売!
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December 14, 2004

「クリミナル・ラヴァーズ」

[DVD映画]★★★★☆

先日の「海をみる」に続き
フランソワ・オゾン監督の「クリミナル・ラヴァーズ」を。
このDVDには長篇「クリミナル・ラヴァーズ」と共に
短編「アクション、ヴェリテ」が収録されている。
この2作品には若さゆえの性への欲望、そしてタブーの領域へと切り込み、
それらを挑発しているようで、実はクギを刺している気がするのは気のせいだろうか?
世の中には、夢や妄想だけでは済まない、目を背けてはいけない事もあるのだと…。
そんな少し青く痛々しい香りのする2作品。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「クリミナル・ラヴァーズ」[作品別評価]★★★★☆

“ 犯罪よ急げ。俺が虚無へと落ちるために。”
この詩の一節が印象的だった。

殺人を犯した17歳のカップルの逃避行を森の中で起こる
ある種の寓話的な幻想世界を描いたサスペンス・ドラマ。
監督・脚本は今、個人的マイ・ブームのフランソワ・オゾン。
この作品は彼の95分の長篇第2作目。1999年のフランス映画。

リュック(ジェレミー・レニエ)とアリス(ナターシャ・レニエ)。
この17歳の若い高校生カップルは
同級生のサイード(サリム・ケシュシュ)を計画的に殺してしまう。
そして、二人は遺体を捨てるために車で森へ…。
遺体を埋めたものの、森で迷ってしまった二人。
船で一夜を明かした翌日、彼等は森の中で一軒の小屋を見つけ、
小屋の主人が留守の間に食料を盗もうとしていたところへ
熊のような男の主人(ミキ・マノイロヴィチ)がライフルを片手に戻って来た!
そうして、二人は地下室に閉じ込められる。
食事も与えられずに、掘り起こされたサイードの死体と共に…。

アリスの日記。アリスの嘘。アリスの欲望。アリスの衝動。
17歳で書かれたランボーの詩。
これまでの彼等の時間が、地下室に閉じ込められた日々とこれらが交錯し、
次第に事実が明らかになってゆくのだ。
少し先に大人になり“欲望に忠実に先を急ぐ”アリスと
殺人を犯したのだが、未だ純粋な少年の心を持つ“無垢な?童貞”リュック。
彼等の殺人に至る経緯。これではあんまりではないか!

アリスの日記を読む小屋の主人はリュックを地下室から出し、
首輪につなぎ、身の回りの“あらゆる”世話にこき使う。
そしてリュックにだけ食料…しとめたウサギを与えて言う。
「食え。よく食って太れ」
自分達を食べるのなら、アリスにも食事をというリュックに、
「女はカサカサした骨と皮だけのほうが好きだ。
 反対に男は丸々としているほうがいい」
と、この主人も相当怪人。
その主人に“飼いならされる”リュック。

片足の無いザイードの死体。
リュックを利用しようとするアリス。
絶望感と緊迫感は高まるばかり…。
まるで怖い童話の幻想を見ているかのような、森の中での非現実的な日々。
森に迷いこんだヘンゼルとグレーテルならぬ
人生の袋小路にまで迷いこんでしまったアリスとリュック。
だが、二人はサイードを殺したことにより、
どんどん墜ちている事だけは確かなのだ…。

脱出するチャンスが訪れた二人に、
自由で幸せな瞬間は長く続くはずもない。
犯した過ちは必ず自分に返ってくる。
所々に登場し、彼等を傍観する野生動物達とウサギ、そして白い鳥。
本能のままに生きる野生動物は狩られ、
純粋無垢なる鳥は空へと解放されたのだろうか?

この作品は青少年の犯罪の推進する作品ではない。
むしろそれを戒める寓話なのだ。
と、少し思った。

尚、俳優陣もなかなかの人選であった。
天使が見た夢」のナターシャ・レニエ
イゴールの約束」でデビューしたジェレミー・レニエ
アンダーグラウンド」主演のミキ・マノイロヴィチ

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「アクション、ヴェリテ」[作品別評価]★★★★☆

フランソワ・オゾン監督による1994年のなんと4分の短編である。

二人の少年と二人の少女が
指名されて受けた命令を“実行する=アクション”か“正直に告白する=ベリテ”か
どちらかを選んで行わなければいけないという、ゲームで遊んでいる。
修学旅行や合宿などで子供の頃遊ぶようなあのような…。
男女関係に興味が出てくるお年頃。
ネタは、もちろん…“キスした?”だの“異性と寝た?”だのといった事。

単純なゲームゆえに次の“命令”は何か?彼等の幼い表情に
こちらもついドキドキしてしまう。
そして…
何となく4人の関係や性格を気付かせたところで、
このたあいのないゲームにすら、
きっちり衝撃的なオチをつけるあたりはさすが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

クリミナル・ラヴァーズ
フランソワ・オゾン
クリミナル・ラヴァーズ
 
 
DVD BOX「海をみる」「クリミナル・ラヴァーズ」「ホームドラマ」「焼け石に水」
及び短編のオゾン監督の初期全9作品を収録。
フランソワ・オゾン DVD-BOX
フランソワ・オゾン


■ 映画「海をみる」のレビュー
■ 映画「ホームドラマ」のレビュー
■ 映画「焼け石に水」のレビュー
■ 映画「まぼろし」のレビュー
■ 映画「8人の女たち」のレビュー
■ 映画「スイミングプール」のレビュー

フランソワ・オゾンの作品紹介とレビューの一覧
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November 29, 2004

「太陽を盗んだ男」

[DVD映画]★★★★★

沢田研二がマッド・サイエンティストな犯罪者を、
それを追う刑事を菅原文太が演じるサスペンス・アクション「太陽を盗んだ男」。
中学の物理教師がなんと、アパートの自室で「原爆」を製造・完成させ、
政府への脅迫がエスカレートしてゆくという衝撃的な物語。
脚本は「ザ・ヤクザ」のレナード・シュレーダーと
青春の殺人者」の長谷川和彦の共同執筆、
監督は長谷川和彦、助監督には相米慎二という、制作陣も豪華な1979年の作品。

中学の物理教師・城戸誠(沢田研二)は、原子爆弾を自分で作ろうとしていた。
原子力発電所からプルトニウムを強奪する下見のため
生徒たちと原発見学へ行くのだが、そこでバスジャックにあう。
負傷しながら生徒たちを助けて犯人を逮捕した山下満州男警部(菅原文太)と
城戸は事件解決の貢献者として表賞された。
ここから城戸の“夢?”と“執着”は現実となり加速し始める。

アパートの自室で原爆を製造を開始。
冷蔵庫で冷却、オーブンで過熱など、なんとも危険な作業を
自宅のキッチンで行っているのである。
ラジオのDJトークに鼻歌まじりで原爆製造、
野球観戦に熱中して薬剤の過熱のしすぎに気付かないなど、
観ているだけでドキドキする。
原爆製造作業で疲れたこの教師がうたた寝していても
誰も気付かないくらい存在は薄い。
ところが、さすがマッド・サイエンティスト。
見事、手作り原爆を完成させてしまった。

手始めに『野球中継を最後まで放映しろ』と政府を脅迫し、なんと成功。
次の要求は麻薬で入国許可の下りない
『ローリングストーンズ日本公演の開催』
要求はエスカレートし、更にサラ金から借りた金を返すため
『現金5億円の要求』へ…。
なんとも個人的なしょぼい要求が多いのであるが、
原爆を爆破されては困るので政府も無視は出来ない。
そしてこれらの連絡相手は…あの山下警部なのだ。

ラジオの人気DJに池上季実子、プロデューサーに風間杜夫、
交番の警官に水谷豊、サラ金の男はスリムだった西田敏行、小松方正…と、
カルトな内容の割に非常に豪華なキャスト、
ストーリーも運がいいんだか悪いんだか、2転3転ありで、
アクション満載の娯楽大作となっている。
沢田研二演じる城戸が魅力的な犯罪者なのでDJの姉さんもメロメロになるわ、
山下刑事ですらなかなか彼の本性に気付かない。
コスプレ………女装、変装がまた似合い過ぎなのだ。さすがジュリー。
放射能の副作用に悩みながらも、逆に怖いもん無しと突き進む城戸。
原爆抱えての山下警部とのカーチェイスや対決はかなりの迫力。

最後の最後までハラハラする見応え十分な作品だ。

太陽を盗んだ男
太陽を盗んだ男


太陽を盗んだ男
サントラ

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November 26, 2004

「愛してる、愛してない・・・」

[DVD映画]★★☆☆☆

純愛行為とストーキング行為は極めて紙一重である。
現実と空想の境がなくなり、愛する男性の一家を不幸に陥れてしまう女性を、
視点を分けて描いたサスペンスストーリー。
監督は新進気鋭の若手レティシア・コロンバニ。
主人公は「アメリ」のオドレイ・トトゥがこれまた可愛く無気味に演じている。
共演は「トリコロール 赤の愛」のサミュエル・ビアン
「視線のエロス」のイザベル・カレ。
2002年フランスの作品「愛してる、愛してない…」。

美術学校に通う優秀な生徒アンジェリク(オドレイ・トトゥ)は、
心臓外科医のロイック(サミュエル・ビアン)が恋人。
ロイックには弁護士で妊娠中の妻ラシェル(イザベル・カレ)がいるが、
離婚は時間の問題だと思っている。
だって、彼はあの日、1本のバラをくれて、
パーティ会場のトイレで愛を語ってくれたのだから…。
だから毎日彼の診察室へバラを1本送るのだ。

アンジェリクはベビーシッター先の留守をまかされ、
ロイックの隣に住むことになった。
そして、妻と仲むつまじく寄り添うロイックを見て、ラシェルを憎み始める。
「どうして私達の邪魔をするの?あの女は?」
日に日に様子がおかしくなるアンジェリクを、
彼女に恋する若く美しい男友達のデイビッド(クレマン・シボニー)が心配するが、
アンジェリクの心は素敵なロイックへと一途に突き進むのだ。
「憎い邪魔ものは排除せねばならない」
そして、ついに事件は起きてしまった…。

この一連のストーリーを、今度は恋される側のロイックから描き直しているのが後半。
たしかにロイックは1本のバラをあげた。パーティ会場のトイレで5分間だけ話した。
だが、彼女に会ったのはその数回だけ。

純愛からストーキング、そして犯罪へと
自分を正当化し、行動をセーブ出来なくなるアンジェリク。
どんどんお仕置き?してゆく様は「シリアル・ママ」のようで恐ろしい。
しかも、本人には悪気が全くないだけに、始末に負えない。
デイビッドがいくら説得しても都合の良いようにしか解釈しない、
彼女はもはや妄想の住人なのだ。
アンジェリクの想いになかなか気付かないロイックの鈍さも
行動をエスカレートさせる原因となってはいるが、
ロイックとしてはごく普通に振舞っているだけなのである。

自分の行動を時々チェックしないと、
とんでもない人物に、とんでもない誤解を受けているかも…。
実際にこんな話、ありそうだから怖い。
誰にでも優しいモテモテくん、モテモテさんは注意しよう!

「アメリ」はフリーの変態同志の純愛だったので、
本人も周囲も結果的にハッピーになれたが、
このアンジェリクは周りを巻き込みどんどん不幸にしてしまう。
でも、彼女の心の中の世界では、まだあの妄想の中で幸せなのだ。
この自閉的な感情をオドレイ・トトゥはキュートで純粋なあの目で演じる。
もう、キャスティング出来過ぎ!
オープニングのラブリーさが、最後には怖い。

愛してる、愛してない・・・
愛してる、愛してない…

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November 06, 2004

「愛のコリーダ 完全ノーカット版」

[DVD映画]★★★★☆

昭和11年に起きた“阿部定事件"を題材にしたある意味究極のラブストーリー。
1976年制作でセックス表現が日本では十分に撮影出来ず、
脚本・監督の大島渚が、フランスのアナトール・ドーマンの協力を得て、
撮影は日本で行ない、フランスで編集し完成された。
1976年カンヌ国際映画祭で芸術作品として熱狂的な賛辞を受けながら、
過激な性愛描写から日本国内では大幅カットされた問題作。
これは2000年にやっと完全ノーカット版で
「愛のコリーダ2000」として公開された作品、「愛のコリーダ 完全ノーカット版」。
当時映画館へ観に行ったが、完全にのまれてしまい、言葉も出ずだった…。

昭和11年2月1日、東京中野の料亭「吉田屋」に
阿部定〈あべ さだ〉(松田英子)という
妙な色気のある女中が住み込みでやってきた。
定は吉田屋の主人吉蔵(藤竜也)に一目惚れしてしまい、
吉蔵も、水商売の歳月を重ねてきた定の小粋な色気に魅了され…
二人は夜更けの応接間や、早朝の離れ座敷などで密会を重ねていのだった。
ついにこの事が吉蔵の妻に知れてしまい、二人は駆け落ち。
最初は火遊びのつもりだった吉蔵も定の情熱に引きずられ、
果てしない愛欲の日々に浸り込んでゆき…

愛をひとりじめにするべく、
男性器を切り取るという猟奇的な"阿部定事件"を題材にしただけあり、
これはそりゃ当時の日本では大変な問題にもなると。
とにかく定役の松田英子の眼。
不思議な魅惑的な眼とタトゥ?が印象的。
フライヤーやパッケージにもなった包丁を口にくわえている図は怖いのなんの…。
ただ、背後にある『とにかく攻撃的で情熱的な愛』『普通に愛しても実らぬ愛』
『どこか悲しく死の影があるエロティシズム』そして…『究極